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深淵の奥底に隠されていたもの

我々は何を解き放ってしまったのか。

発言者の手から解き放たれたものは何か。
それは未知の闇に隠れた力、科学ではありえない可能性。

現在の科学体系では説明がつかないが、否定もされないもの。
これを「未科学」と呼ぶことにしよう。
未科学は、証明できない。
論理体系として科学で扱える範疇を超えている。
もしくは、観測不可能だから理論の範疇を超えない。
少なくとも発言者が解き放ったのはこの未科学の範疇にあるものだ。

盲目的な追求の果てに、発言者はその力を解き放った。
それは希望の灯火、それとも破壊の風か。
それは可能性の光、それとも崩れる塔か。

発言者は苦しんでいたはずだ。
周囲には資料や未完成の装置が散乱し、しかし聞こえるのは夜の静寂。
そして、やけに速い自らの心臓の音。
早く成果を出さなければならないという圧力。
認めてもらいたいという自己顕示欲。

そんな時、暗闇に微かな光を見つける。
予測不可能な暗闇の中、科学の論理を超えたところ。
発言者は何を見つけたのだろうか。
微かな煌めき。
しかし、みたことのない色をしている。
目的達成のために目を閉じる。
ただでさえ速い心臓は、より加速していく。
安全を顧みず、未知の領域へ一歩を踏み出す。

見えない力に魅了され、目的のために手段を選ばなかった。
その代償は何か。
何を得たのか。
何を失ったのか。
それさえきっと、未だわからず。
これから何を得て、何を失うのかさえ、予想がつかない。
ただ確実にわかるのは、もう後戻りはできないということだけ。
それ以外は何も説明できない。
今の科学では説明がつかない。

説明不可能は何もわかっていないと同義だ。
誰かが他の誰かに伝えて、しっかり伝わった時に突っ込まれない。
これは説明可能。
疑問が残り、それに対して専門家でも答えられないなら説明不可能。
全ての科学にそういう部分は残るだろう。
であれば、その部分に関しては未科学だ。

説明不可能なものは予測不可能だ。
予測不可能なものを解き放つのは危険だ。
しかし、説明不可能なものでも科学は前に進めることもある。
一体どこに折り合いをつけられる場所がある?

我々は何を解き放ってしまったのか。我々は失敗したのか?

鏡のような水面に石を一つ投げ込んだ科学者

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