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本日は皆さま、ご来場ありがとうございました。 「千静のうた絵巻 vol.3 ゆきおんな」いかがでしたでしょうか。 今回は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の「雪女」をベースに 雪女の恋を描いてみました。 秋田の子守唄 1曲目は秋田県に伝わる子守唄。 ハーンの「雪女」は巳之吉との間に10人の子どもをもうけます。 約束を破った巳之吉を殺そうとした雪女はしかし 子どもたちのために思いとどまります。 それでも、雪女は子どもたちと別れなければなりません。 雪女はきっと、残していった
雪女の話をある友人としたとき 彼は思いがけないことを言いました。 雪女が出て行ったあとの 巳之吉の物語が知りたい それまで考えたことのない視点だなと思いました。 私は無意識のうちに雪女の視点から ずっと物語を見ていたようです。 なるほど 巳之吉の物語とは。 今回の“うた絵巻”では そこまでたどりつくことができませんでしたが、 これからの創作のためのメモとして。 松浪流火曜会 千静のうた絵巻 vol.3 -ゆきおんな- 小泉八雲「雪女」をベースに 雪女の恋を唄と三味線
謡曲「雪鬼」については以前触れましたが、 それ以外にも古典芸能に出てくる雪女がいます。 近松門左衛門作の「雪女五枚羽子板」。 雪の中で殺された女が雪女となって現れ 恋人を助け、恨みを晴らします。 幽霊の雪女ですが、 ただ怖ろしい幽霊ではなく、正義の側に立って 悪人たちの企みを防ぐ、守り神のようです。 死んでなお恋人のために尽くす雪女は やはりどこか悲しい存在です。 松浪流火曜会 千静のうた絵巻 vol.3 -ゆきおんな- 小泉八雲「雪女」をベースに 雪女の恋を唄と三味線
谷口仙花「雪女」 北斎季親「雪女」 上村松園「雪女」 朝倉摂/絵「ゆきおんな」 佐竹美保/絵「ゆきおんな」 伊勢英子/絵「雪女」 私は伊勢英子の絵が好きですねぇ。 子ども向けの絵本とは言い難いですが… 松浪流火曜会 千静のうた絵巻 vol.3 -ゆきおんな-
雪女、というと 北国、雪国のイメージだが 小泉八雲の「雪女」の舞台は武蔵国、 今の東京、埼玉、神奈川あたりである。 そして、この「雪女」の話を素材にしたと考えられる”民話”が 白馬岳(長野・富山)に伝わっている。 (『雪女 百年の伝承』参照) もっと北のほうには雪女はいないのか、というと 岩手県の『遠野物語』に雪女が出てくる。 この雪女は、小正月の夜に子どもたちを連れて行ってしまう。 これまでとはまた違うタイプの雪女であるが、 雪女は子どもと関わりのある存在である。 遠野物
「〇〇してはいけない」という約束を破ってしまう昔話で 有名なもののひとつに「鶴の恩返し」があります。 機を織っているところを見ない、という約束を破って 中をのぞくと、いつか助けた鶴が自分の羽を抜いて織っていた。 正体を見られた鶴は空へ飛び去って行く。 この昔話をもとに書かれたのが 木下順二の戯曲『夕鶴』である。 つうの織物が京で高く売れたことで 悪い奴らが近づいてきて、与ひょうも変わってしまう。 経済至上主義への批判が込められた作品になっている。 團伊玖磨によってオペラ化
さて、今日は少し違うアプローチを。 「雪女」の話の中で印象に残るのは 巳之吉がはじめて雪女に出会ったとき、 命は助けてやるが、このことは誰にも話してはならない と約束させる場面。 そして、物語の最後で巳之吉は約束を破ってしまう。 昔話にはこのような「〇〇してはならない」という約束が 多く登場する。そして、その約束はほとんどが破られてしまう。 「鶴の恩返し」も「浦島太郎」もそうである。 約束をかわすのは、人間と異界のものである。 約束が破られると、異界とのつながり、接点は
作家・谷崎潤一郎は地歌や上方舞を愛し、 作品の中にもしばしば登場します。 中でも愛した曲が地歌「ゆき」で、 『細雪』には主人公の四姉妹のひとり、妙子が 「ゆき」を舞う場面が出てきます。 「雪」という随筆の中で谷崎は、 地歌「ゆき」の主人公である女性について いろいろと想像をめぐらせています。 年齢はどのくらいか、どんな顔立ちか、 着ている着物の色は、生地は、 どんな部屋にいるのか、部屋の調度は、匂いは、等々 考え始めたらいくらでも想像が広がっていく、 一本の音楽映画だって作
「うた絵巻」では毎回、ジャンルを越えて色んな唄を並べていますが、 やはり松浪流の会と銘打っておりますので メイン曲は地歌から選ぶことにしています。 vol.1では古道成寺、vol.2は菊の露、 そして今回は地歌の名曲「ゆき」です。 かつて芸妓だったソセキ(リセキ)という女性が今は尼となって 昔の恋を思い出す歌です。 恋しい人の心が離れて辛くてたまらなかった夜のことを思い、 けれど今はもう執着から解き放たれている、と歌っています。 雪女も男に裏切られたけれど 子どもたちを思
中島みゆき 夜会「ウィンター・ガーデン」は 中谷宇吉郎の「雪は天からの手紙」という言葉に インスピレーションを得て作られたそう。 雪の結晶の研究で知られる物理学者によるエッセイ集。 物理なんて本当に縁がないんだけど… いろいろ調べていくうちに 芋づる式に広がっていくのが面白いんですよね。 松浪流火曜会 千静のうた絵巻 vol.3 -ゆきおんな- 小泉八雲「雪女」をベースに 雪女の恋を唄と三味線で綴ります。 2023年12月19日(火) 開場:14時 開演:14時半
唄で物語を綴るという「うた絵巻」の構想が生まれたのには、 中島みゆきさんの「夜会」シリーズの影響があるような気がします。 夜会vol.11&12「ウィンター・ガーデン」は 詩の朗読と歌から成る異色の作品です。 夜会シリーズでは唯一、DVD化されなかった作品ですが、 一部は「夜会の軌跡 1989-2002」に収録されています。 これが12/8から劇場公開されているというので 偶然のタイミングにちょっと驚いています。 湿原に建つ一軒の家に引っ越してきた女。 その家には犬が住み
今回の「うた絵巻」制作にあたって いろいろ読んだ中でいちばん面白かったのがこちら。 富安陽子作の絵本「あたし ゆきおんな」。 富安陽子といえば、何を読んでもハズレのない作家さんですが、 こちらも間違いない。 雪女といえば、成熟した女性、 透けるように色が白くて、ほっそりとして美しい、 そんなイメージだけれど、 この絵本の雪女はもっと活発なイメージである。 生まれてきた喜び、生きていることを謳歌して 雪の野山を駆け回る少女のようなところがある。 そんな雪女が時折見せる寂しさ
美しくも怖ろしい雪女。 その極北にあるのが、百鬼ゆめひな「六花」ではないかと 個人的には思っている。 twitterで写真を見かけて一目惚れしてしまった「百鬼ゆめひな」さん。 2018年京都公演で「六花」を観ることができた。 美しくて、ぞっとするほど怖ろしくて、でも切ない。 すばらしい雪女だった。 百鬼ゆめひなさんは、等身大の人形をひとりで遣う。 のみならず、自身も黒衣にとどまらずに演技者となり まるで舞台上に二人のヒトがいるかのようなパフォーマンスを見せる。 どちらが人
人を凍らせたり あるいは自分がとけてしまったり おそろしかったり やさしかったり 雪女もさまざま。 時代小説から現代まで 雪女にまつわるアンソロジー。 各話に出てくる雪女たちの共通点は 情念の強さかもしれません。 美しくも怖ろしい雪女は人を魅了してやまない存在なのでしょう。 松浪流火曜会 千静のうた絵巻 vol.3 -ゆきおんな- 小泉八雲「雪女」をベースに 雪女の恋を唄と三味線で綴ります。 2023年12月19日(火) 開場:14時 開演:14時半 会場:道頓堀