枝豆の匂いがしたから 【小説】
地面に倒れてなお空をめざすユリ、
耳の裏に響く蝉のこえ、
青いキャンバスに重なった雲の油絵。
静かにうなる扇風機、
不規則に揺れる洗濯機。
枝豆のにおい
「今日はそうめんかな」
湯気の立つ、円柱型の銅鍋を見つめる。
夏の終わり、もしくは晩夏の初め。
聴き慣れない平成のポップスが遠くで流れてる。
数ヶ月前に会ったきれいな女の子のことを思い出した。
華奢なんていう豪華な文字では足りないほど、細くて、か弱くて、それでいて狡猾そうなひと。
記憶のうわずみをすくい取って持ち去