タイという国について
わりと最近までタイに赴任していた。昔はタイが好きで旅行で何回も渡航したし、比較的長期間にわたり住んでいたこともあった。昔住んでいたのは20年以上も前のことである。その頃と比べてタイは大きく変わった。タイ人はこの変化を「発展」と捉えているかもしれないが、個人的には「つまらない国」になってしまったと感じる。なぜか?
減り続ける屋台
第一に屋台がなくなり、ショッピングセンターに入るチェーン店やフードコートが増えた。屋台こそタイの食事の象徴。チェーン店やフードコートはどれも同じ味、同じ雰囲気。2、3日通えば飽きてしまう。
コミュニケーションロス
第二にスマホが普及しコミュニケーションが減った、笑顔が減った。タイの良さは、知らない人たちが互いに挨拶をかわし、馬鹿な掛け合い漫才をし、時には小競り合いをするなど人間味があるところである。そして旅行者も何となくこの輪の中に入ることが出来た。今はどうだろうか。店ではお決まりの説明に作り笑顔。ショッピングモールでは値切り交渉もない。
便利になってしまった
第三に便利になりすぎた、昔は赤バスや青いエアコンバスしかなく渋滞は当たり前、あきらめて歩いたり道草をすると思いがけない発見があったりした。今はどうだろうか。電車が発達し移動時間は短縮され、渋滞は少し緩和された。しかし家と目的地の往復だけになってしまった。
外国人が増えすぎた
最近バンコクではどこへ行っても人、人、人である。しかも外国人ばかり。昔からカオサンなど一部の地域には欧米式のバーやカフェが軒を連ねており、若かりし頃は外国へ来た感があった。それでも良かった。今はそれに加え欧米式のマリファナショップが増え一層欧米っぽくなった。そしてそれを目当てに来タイする欧米人も増えた(外国に来て自国と同じような雰囲気を楽しむ彼らはアレなのではないかと思ってしまう)。歳をとった今は人混みと欧米文化についてはお腹が一杯なのである。
文化と発展のジレンマ
このようにふと我に返るとタイでの生活は日本の生活と変わらなくなりつつある。タイは観光に力を入れているが、観光客は統一化された世界を楽しみたいのではない。タイらしさを楽しみたいのだ。外国の資本が入るとろくなことが無い。タイは植民地支配を逃れた国。しかし実質的には外国に大きく影響され、(少なくとも外国人にとっては)つまらない国になりつつある。タイ政府も文化と発展のジレンマを感じていることだろう。タイの文化に重きを置き、本質的に「足るを知る」政策を進めて欲しいものである。