トークセッション「キャリアに悩む若手はなにをすればいいのか」を読んで
人事図書館と一般社団法人プロティアン・キャリア協会のコラボイベントというのがありまして、リクルートワークス研究所 主任研究員の古屋星斗氏を招いて表題のテーマで語られています。
「プロティアン」は読んだだけで講座を受けたこともない私ですが、このトークセッションは内容が面白くて何回も何回も読みこんでおります。プロティアン・キャリア協会さん、有益なイベントありがとうございます。
古屋星斗氏とは
失礼ながら、古屋氏については存じ上げませんでした。
おそらくは、これまで私がミドルシニアのキャリアについての記事や書籍を中心に見てきたので、若手を中心に見ている古屋氏の記事に触れることが無かったんだろうなと思います。
2011年一橋大学大学院社会学研究科 総合社会科学専攻修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。
2017年より現職。労働市場分析、未来予測、若手育成、キャリア形成研究を専門とする。
選択の時代の最低必要努力量
古屋氏によると「選択の回数が増える世の中になっている」とのこと。
就職、転職、出世といったキャリアに関することだけではなく、結婚するか否か、結婚後働き続けるか否か、子供を持つか否か、親の介護をどうするか、男女で役割が分かれていた時代なら半分だけ考えればよかったのに、現在は男女問わず考えないといけない。
判断のタイミング、選択のタイミングが多く、そして早くなっているために、キャリアにおいては「コスパ」が重要視されざるを得ないわけです。
ただ、この選択の時代には、「ゆるい職場」は相性が悪いとのこと。
専門性を高めるのには「最低必要努力量」、いわゆる「1万時間の法則」が効くんだけれども、ゆるい職場ではそれが得づらいということなんですね。
最低必要努力量とはキャリアや仕事において成果を上げるために一定以上の時間や労力を投入する必要があるという理論で、金井壽宏氏が著書で紹介しています。
1万時間とは言わずとも、ある程度「精神的コスト」「経済的コスト」「時間的コスト」を投入しないとモノにならないという考え方ですね。
古屋氏は、まずこういったコストを投入してある程度の「何者か」になり、その後両立できる場合には「ありのままであること」が徐々にできていくものではないかと言っています。
「すごく良かった」と思う経験は、8割が偶然
このイベントで心に刺さったのはこの部分です。
キャリア自律になればなるほど、人はめちゃくちゃ良い経験を「ムダだ」と切り捨てるんですよね。
（中略）だって、当然誰でも回り道したくないわけですから。
ですが、（中略） 「すごく良かった」と思う経験って、すごい偶然だったりするわけですよね。
よく考えてみたら、私がキャリアコンサルタント講座に通い始めたのも上司に勧められたからだったわ・・・。人事としてはCompensation&Benefitをメインにしてきたのに、今ではキャリア関連が面白くてたまらない。
また、ファイナンシャルプランナー試験も、同僚が受けるっていうから私もトライしてみようとはじめて、AFPになって、キャリアコンサルタントと合体させて社内研修をはじめてる・・・。
5年前には見ていなかった景色です。うーん、実感。
これはいわゆるクルンボルツの「計画的偶発性理論/Planned Happenstance Theory」ですね。キャリコン、この理論好きですよね。
古屋氏は、計画的に偶発性を生み出すためにポートフォリオ作成をお勧めされているんですね。つまりいろいろやる。
本業のキャリアをひとつのポートフォリオとして、たとえば本業で勉強会を主催するという2つめのポートフォリオ。別のコミュニティで勉強会に来る、それを月1回やるとかで、もう3つ目のポートフォリオになります。
自分の100％のなかで、どのポートフォリオにどのくらいのエネルギーや時間を割くか、ということを考えながら、それぞれの出会いをかけ合わせていくことで「偶発性」を起こしていくしかないんじゃないか、とのこと。
そう、いろいろやるんです。
ミドルシニアも同じなんですけど
このトークセッションは20代～30代の若者向けではあるんですが、言われていることはミドルシニア向けに提唱されていることとほぼ変わらないなと感じました。
ミドルシニアも同じ時代を生きているわけで、先人たちは老後は引退一筋であったところ、今は数多くのルートの中から選択していかなくてはいけない。
しかも、これまで培ってきた専門性をいったんどっこいしょと降ろさざるを得ない局面もあり、かつ新しいものを吸収していかなくてはならない。
若者よりも分が悪いのは、残りの時間がない。アタマが固い。
だけど若者に勝るのは、「石の上にも三年」、根性で乗り越えなきゃって思っていることかも。
そして、越境学習。
「自分をアウェイと感じる場に置いて学ぶ」という石山恒貴先生のお勧めのように、あたらしいコミュニティでいちから関係性を築き貢献していくこと、モザイク的にそれらを構築していくことで生まれる偶発性。
定年が第二の新卒だなあって思っていたのはこういうことだったんだなあと、トークセッションを何回も読み返してしみじみ思っていたのでした。
いままでミドルシニア向けの記事や書籍ばかり読んできましたけど、たまにこうして若手向けのものも読んでみるのも面白いな。
そして古屋氏の理論や言葉は面白いので、今後も追いかけていこうと思ったのでした。
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