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読書メモ:会社はあなたを育ててくれない

昔はキャリアというと会社が考え、社員はお仕着せの研修を受けるだけでした。私の若いころなんていうと、研修からすでに男女差があって、「なんで英語研修を受けられるのが男性ばっかりなんだ?」って状況もありました。
ところが今、キャリアは自分で考え、研修も自分で選ばないといけない時代です。そんな現代の若手向けに、行動を促す本です。


古屋星斗さんとは


著者の古屋星斗さんについては、以前トークセッションの記事を読んで、内容が面白くてリアルタイムで聞けなかったことが悔やまれるーと思っていたのでした。

古屋氏は一橋大学大学院終了後、経済産業省に入省。
現在はリクルートワークス研究所の研究所員として、若手育成、若手のキャリア形成研究を専門とされ、本書のほかにも「ゆるい職場」「なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか」などの著書があります。

キャリア形成研究者の著作ということで裏付けもきっちりしています。キャリアコンサルタント的には面白く、自己啓発本にしては若干理屈っぽい気もしますが、とはいえ古屋氏の提案はとても面白くて現実的なので、一読してほしいです。

選択の回数が増えている


古屋氏によると、昔に比べて現代ではお仕着せが少なくなっている分、「自分で選択しないといけない回数が増えている」とのこと。

転職するか
副業するか
結婚するか、共働きか
子供を持つか
育児分担は、育休をとるか(もちろんパパも)
家事分担はどうするか
介護はどうするか

昔であれば「男女の役割分担でしょ」と、考えもせず悩みもせず割り振られていたものも、今はゼロベースで考え、選択し、行動しなくてはいけない時代なのです。

選択できる立場であるためには、スキル・専門性・知識の獲得が必要です。
それらをまた自分で選択し、活用し、サバイブしていく。
それこそが、現代における「新しい安定志向」であるとしています。

なにものか VS ありのまま


「なにものかに早くなりたい」「自分が良いと思ったものを大事にしたい」という矛盾する2つの気持ちについては、前述のトークセッションでも語られていて、興味をひかれた分野でした。

昔はワークライフバランスなんて言葉もなかったので、働いているなら「ありのままでいたい」なんて、ありえませんでした。
外資ではあったかな。有給休暇を取りやすい、残業のない外資。古き良き外資はそんな頃もありましたね。
今は日本の会社で働いていても、法的に守られ、ライフ強めのワークライフバランスを選択できてしまうんですよね。

「なにものか」というのは、「この職種で一人前になりたい」「大きな成功体験を得たい」「専門家になりたい」といったものです。
「まずは石の上にも三年」というように、その仕事で最初の独り立ちができるレベルというイメージでしょうか。

ただ、いまは昔に比べて労働時間が減っているし残業もさせられない。
そうなると、三年石の上にいるだけでは「なにものか」にもなれないというジレンマも起きているんですね。

トークセッションでもおっしゃってましたが、古屋氏は「最低必要努力量」は確かにあるとのこと。「社会で専門家と認められるための投資量」ですね。

働き方改革のおかげで労働時間は劇的に減って、そのぶん生産性は上がっていると言えますが、若手としてはその分、目的をもって行動していかないと、その投資量を賄えないということになります。
そのためにこの方法をとってみてはどうか?というのがこの本になります。

スモールステップアクション


古屋氏が行った、20代の若手社会人の仕事やキャリアについての調査によると、「初期のキャリアデザインにおけるキャリア展望(自己の将来のキャリアに対する展望・肯定感の高さ)」を高めるものに下記のような関連が認められるとのこと。

  • 情報の発信・収集には効果が得られない。

  • 行動においては一部の要素にプラスの関係

  • 特に小さな行動(スモールステップ)にプラスの関係

  • 個人属性(年齢・性別・初職企業規模)には関係ない

つまり、「個人の属性がどうであろうとも、新卒で入った会社や職種が何であろうとも、過去のスモールステップが現時点のキャリアに大きな影響を与えている」ということです。

ここでいうスモールステップというのは、職務経歴書書やSNSで「こんなことをやりましたー!」と書けるような大きなことではなく、その前の助走のような小さな行動、誰でもいつでもできる軽易な行動にこそ実は大きな効果があった、ということなのです。
ちなみに、古屋氏の整理したスモールステップは下記のようなものです。

自分のやりたいことをアウトプットしてみる
自分の挑戦したいこと、思っていることをSNS、知人・友人に開示する。いろいろなきっかけを生み出す。周囲を巻き込む。

背中を押してもらい、パワーをもらう
不特定多数からもらうたくさんの「いいね」ではなく、よく自分を知る人から背中を押してもらう。(不安を振り切るエネルギーを受け取る)

目的をもって探ってみる
目的を持った時に単なる情報は自分にとって意味のある「情報」になる。土地勘のある分野でこそ、情報の海が生きてくる。

試しにやってみる
今すぐできることを厭わずやってみる。小さく試してみて、自分に向いているかどうか確認してみる。その回数を増やす。

体験を自分のものにする
実施したスモールステップに意味づけする。結果として言葉にまとめることで次のワンステップに繋げる。

シニアも読みこみました


このスモールステップまででやっとこの本の半分までしか紹介できていません。後半もとても有益で面白いので、ぜひみなさん買いましょう。

上述のようにこの本は若手に向けて書かれていますが、トークセッションでの感想でも書いたように、ミドルシニアにとっても興味深い提案であふれているわけです。

このトークセッションは20代~30代の若者向けではあるんですが、言われていることはミドルシニア向けに提唱されていることとほぼ変わらないなと感じました。

ミドルシニアも同じ時代を生きているわけで、先人たちは老後は引退一筋であったところ、今は数多くのルートの中から選択していかなくてはいけない。

トークセッション「キャリアに悩む若手はなにをすればいいのか」を読んで(SHIZ)

何回も書いてるんですけど、定年は2回目の卒業、定年後について考えるのは2回目の就活だと私は思っています。
ですから、持ち札は1回目とだいぶ違うとはいえ、マインドとしては若手向けの著書であっても学ぶ部分が多いと思うわけです。

たとえば・・・

定年後についてSNSに発信し、いいねを得ていくだけではキャリアの不安感を払しょくすることはできない。
やりたいことを発信、知人・友人に開示して、いろいろなきっかけを生み出すことはプラス。よく言われる弱いつながり。

・・・というようにシニア向けに読み替えるだけでも、強く頷けると思えませんか。

若者もシニアも、試しにやってみよう


でも恐ろしいですね。

もし書くこと自体が私のやりたいことであれば、こうして読書メモを発信していくことで、わたしは自分のキャリアに肯定感を持っていけるけど、ただこれが「いいね」を望むだけの行動であれば、それはキャリアに対する肯定感の高さには関係しないと。
もちろん、承認欲求は肯定されるだろうけども。

ということで、意味づけは大切。
目的をもって行動することも大切。

なんですけどこの本では、まず構えることなく、小さく種をまくように、思いついたことを何でもやってみることが奨励されているように思います。
「行動する」ということにおいて、若手もシニアも関係ないですもんね。

今の環境で得られるリソースを使って、小さくアクションを続ける。
先人の話を聞きに行く。

わたしも、まずはこういった小さな行動から始めてみようと思います。

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SHIZ@老後は遊ぶ金欲しさに働く
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