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珈琲に詩を3g

溺れるサナカ

じわじわと身体から水分が抜けていく、熱を通しても水に溶けていく深海魚みたい。
この世は巨大な鍋の中に存在してると思わせる。
ペットボトルの結露が指を伝い、コンクリートに小さな足跡を残した。
さては、この地球も深海魚の中だったりして。
どうでもいいことが溶けていく最中、それが大事ななにかに見える。
喉は乾いているが、溺れそうになる。


白昼夢のなかで言える

陽の射し込むリビングでトーストを焼いている。
近所からは、改装工事の木材を打ち付ける音が響いてる。それが、私生活のリズムになっていく。
珈琲に詩を3g、甘くなるどころか、むしろ苦味を主張する材料になる。
食後、睡魔に頭が浮遊感に溺れる。
好きな人に殴られる夢を見た。
馬乗りになって何度も殴られる、それが心地よかった、夢の中なのに、生きてると感じた。
彼女からもらう痛みが好きだ。
ずっと、こんな瞬間を知っていたように思う。
香りも、好意も、思い出も、いつかの痛みの材料になりえる。
愛は痛い。
夢みたいな昼の寝起きに、みた夢といつか暴力的に返り咲く愛を伝える。


コップの底

赤い糸、というよりは点滴で繋がれている。
あなたがいないと生きていけない、なんてことを思った。
虚しさは、なにを足しても虚しいままだ。
奥底の分からぬ暗闇を満たそうと、あの手この手を尽くすも、依然として闇は闇のまま、深いままだ。
黒い劇薬を包んでいた皮膜が、酸に溶ける。
傷口から黒い血を流している。
羽化に失敗したサナギのようだ。
あなたが皮なら、わたしは穢れた溶液だ。
歳を重ね姿かたちが変わっても、あなたの中で眠れば、いつかの懐かしい形に戻れるような気がしている。


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