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朗読のための古典怪談

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江戸・明治時代の古典怪談を、朗読用に現代語訳して書いたテキストです。どうぞお楽しみ下さい。
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#朗読

疫神(えきじん)

疫神(えきじん)

~1862年に出版された随筆集『宮川舎漫筆』(みやがわのやまんぴつ)からのお話です。
疫病神と出会った二つの事例を紹介しています。
なるべく優しい現代語に訳してみました~

時は、嘉永元年。
西暦でいえば1848年。
あの四隻の黒船が、浦賀にあらわれた事件の五年前にあった話である。

この年、夏から秋にかけて疫病が大いにはやったが、一つの不思議な話がある。
名前は忘れてしまったが、浅草あたりに住む

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江戸時代、人びとの生活に潜んでいた疫病神たち。1862年に出版された『宮川舎漫筆』からのお話です。語り用に平易な言葉で作成したテキストを、オリジナルBGMに乗せて朗読。6分31秒の美しく妖しい古典怪談の世界をどうぞ。

芥川龍之介が学生時代に編んでいた古典怪談集『俶図志異』に収められているお話です。これは、芥川の創作ではありません。両親や友人から聞いた、あるいは図書館で調べた古い怪談の数々を芥川はノートに書き連ね、怪談集としていました。この朗読では、語り用に平易な言葉で作成したテキストを、オリジナルBGMに乗せてお届けします。12分56秒の、美しく妖しい古典怪談の世界をどうぞ。

艶書の執心、鬼となりしこと

艶書の執心、鬼となりしこと

伊賀の国の喰代(ほうじろ)という所には、六十も寺が建っていた。

一休禅師が修行でこの地を通った時、日が暮れたので宿を借りようとあちこちの寺を回ったが、人ひとりもいなかった。
一休は不思議に思い、残りの寺もすべて行ってみると、ある寺に美しい少年がひとり居た。
その寺の、召使いだった。

一休が一夜の宿を乞うと、少年は
「お易いことではございますが、この寺には夜な夜な化け物がやって来て、人をとり殺し

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