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朗読のための古典怪談

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江戸・明治時代の古典怪談を、朗読用に現代語訳して書いたテキストです。どうぞお楽しみ下さい。
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2023年10月の記事一覧

のっぺらぼうの頭の上の口

のっぺらぼうの頭の上の口

『奇異雑談集(きいぞうたんしゅう)』 
(原題:人の表に目鼻なくして、口頂の上にありて、ものをくふ事)

私は若いころ、丹後の国の府中に住んでいたことがある。
丹後国は、京の都からは遥か北にある。
ある時、摂津の国の僧侶が私の家に来た。
この僧は九世戸(くせのと)参詣のために丹後に来たが、私の家に数日間逗留した。
これは、その時に語ってくれた話である。

「同郷に一人の僧がいる。
日本の六十六カ国

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