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朗読のための古典怪談

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江戸・明治時代の古典怪談を、朗読用に現代語訳して書いたテキストです。どうぞお楽しみ下さい。
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2023年9月の記事一覧

龍、石の中に潜む事

龍、石の中に潜む事

『耳嚢』根岸鎮衛 文化十一年(1814)
からの現代語訳です。
声に出して読む語りテキストとして
書きました。
どうぞお楽しみください。

原題「石中蟄龍の事」

近江の国に
石亭(せきてい)という人が居る
裕福な農家の主で
本名は木内重暁(きのうちしげさと)
という
この人は名石
すなわち由緒ある石や美しい石を好み
これらを沢山集めていた

石亭は「雲根志」(うんこんし)
という本を書いている

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9/14のclubhouse配信にて朗読した神奈川県の伝説です。精進が池にまつわる龍伝説を「龍を殺す」と題して、オリジナルでテキストを書き下ろして朗読しました。8分25秒です。どうぞお楽しみください。

石子詰

石子詰

(角川日本の伝説47鳥取の伝説より)

天正八年 すなわち1580年六月のこと
羽柴秀吉は織田信長の命を受けて
西に軍勢を動かした
そして吉川経家が守る鳥取城を囲んだ
秀吉は兵糧を絶ち
昼夜問わず鉄砲を打ち込んだ
城内の人々は極限に追い込まれた
飢餓に苦しむ人々は 
敵方に助けを求めた
だが悉く味方の鉄砲で撃ち殺された
その屍の肉が奪い合いになったという

このような地獄が四か月続いた
ついに城は

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耳切れ団都

耳切れ団都

(原題「小宰相の局、幽霊のこと」)
『宿直草』延宝五年(1677)

これは
我が家に出入りしている座頭が
語ってくれたものである
この座頭は目が見えぬが琵琶の
弾き語りを生業としているのである

(座頭の語り)

私の師匠は
摂州尼ヶ崎の人で
星山勾当といいます
私はこの方から
平曲つまり平家物語を伝授されました

平曲の中でも
要とされる第九巻に
『小宰相の局』という件りがあります
小宰相の局

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