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朗読のための古典怪談

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江戸・明治時代の古典怪談を、朗読用に現代語訳して書いたテキストです。どうぞお楽しみ下さい。
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2023年6月の記事一覧

きくの祟り

きくの祟り

「諸国百物語」より
(原題:熊本主理が下女きくが亡魂の事

むかし、熊本主理という侍がいた。
この男は至って酷薄で、人遣いが極めて悪かった。
いわゆる無道心者、人の道にかなう心を持たぬ者であった。

この男が城勤めをしていたある日、飯粒の中に光る物を見つけた。
小さな針だった。
主理は大いに怒り、下女の菊という娘を呼びつけた。
そして、
「誰に頼まれてこのようなことをした。
ありのままに云え。

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