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【写真記】釧路・春採太郎を探せ!(2023/07/05)

6月の大潮の日にだけ海岸沿いを歩いて見に行けるという、通称『春採(はるとり)太郎』。
春採太郎とは何ぞや?!

「釧路のいいところを、もっと知ってもらいたい」
亡き父がガイドしていたという、年に1〜2度くらいしかチャンスがない超レアな『春採太郎』ウォークを、Aさんが案内してくれました。

草をかき分け、いざ出陣!

朝9時、Aさんと娘さんと『春採湖ネイチャーセンター』で合流。Aさんのクルマに便乗させていただいて興津(おこつ)海岸へ移動。

駐車場というよりも、よそ者のわたしには「ここ、停めていいの?」という空き地?にクルマを停めて、長靴に履き替え、いざ春採太郎ウォークのスタートです。

海食崖の断崖。波打ち際を歩いて行きます。

Aさんの記憶もおぼろげながら、「1時間もは歩かなかった」とのこと。
写真を撮りながら足場の悪い海岸沿いを歩くから、あらかじめ干潮の時間を調べて、その1時間前にスタートしようと話し合っていました。
この日の干潮は10:36。
時間は十分あります。

写真:左=長方形の銃眼

旧日本軍戦跡「興津海岸トーチカ」(岩礁掘抜き型)。

トーチカとは、 ロシア語で「点」の意で、「долговременная огневая точка(直訳で「長期的な火点」)」から最後の部分をとったもの。
(トーチカ - Wikipediaより)

コンクリート造りの、銃火器などを備え敵の攻撃から兵士たちが身を隠すための防御陣地です。

遠浅の海岸

昆布がた〜〜〜くさん!!!
昆布漁の船も出ていましたが、この周辺は遠浅の岩礁のため採りに来ないようです。

かと言って陸路で来て、手作業で重〜い昆布を担いで戻るのは割に合わないのでしょうね。

岩にはフジツボやカキ?がびっしり

砂浜のようになっているところもありますが、多くは岩礁です。

しましま模様がカッコいい

侵食で取り残された岩がそびえ立つ。

どこまで行くのかな〜

岩の上を歩いたほうがいいような気もするけど、いざ登るとそうでもない、なかなかハード。

岩壁を伝いながら

娘さんは長靴を忘れてきてしまったけど、「海水に浸かっても平気だもん!」

長靴必須とは聞いていましたが、むしろ胴長が要る状況です。
以前Aさんが訪れたときは6月の大潮だったので、この日よりもずっと波が引いていたそうです。

こもちこんぶ〜〜〜♡

何のタマゴか分からないけど、昆布にびっしり産み付けられてました!

滑床な岩場も

ちょっと歩くと、こんな滑らかな岩場が広がったり。

けっこう滑りやすい

カヤックなど、海からでも来れそうだけどな〜って素人目には思うけど、かなりの遠浅だから難しそう。
(写真:左=白波が立ってるのは岩にぶつかってるから)

命名:一の滝

通称『春採大滝』。帰りに見た時は3倍くらいの水量でした。上流では雨が降っていたのかも?とか思っていたら、ネットで調べたら違いました。

これは、太平洋炭鉱の坑内水を通気斜坑からポンプアップで排出されてる坑内水による人工の川(滝)なのだそうです。
黄土色の部分は、坑内水に含まれている物質が層をなしたものでした。

謎の藻

満潮時には、ここまで海水が上がってくるんですね。

何気なく撮ってた

「おぉ〜、断層がカッコいいな」と撮っていたこの写真。
まさか、これがアレだとは。

昆布で足の踏み場がない

今回の行軍は、とにかく昆布との戦い。
最初は「昆布を踏むなんて」と罪悪感があったけど、もう邪魔でしかない。
人間の身勝手さよ。

命名:二の滝

勝手に命名した「一の滝」と比べると、ポタポタと滴る程度の「二の滝」。
木製の電柱らしきものが建ってた! その先には柵らしきものも。

ここも一の滝(春採大滝)と同じく坑内水。この辺り一帯は太平洋炭鉱の所有地だそうで、谷あいには興津のズリ山があり崩れないように土留めされているそうです。

きれいな横縞

この横縞は、どんな地球の歴史が生み出したのだろう。

とってもすばしっこい

岩盤ばかりではありません。
泥岩にはアマツバメの巣がありました!

こんぶ沼

またしても昆布〜〜〜
ヌルヌル滑る! からまる!! 足を取られる!!!

真昆布かなぁ

「昆布天国」と見るか、「昆布地獄」と見るか…

わたしはピッタリフィットなバードウォッチング長靴を履いていたんですけど、意外と深い場所もあったりして水が入っちゃいました。
さらに、滑って体勢を崩した拍子にざぶっとスマホを落としてしまいました!
すぐに拾い上げ事なきを得たからよかったけど、焦った!!

ここ、どこ?

ところで、どこまで行くのでしょうか?
「おかしいなぁ、こんなに歩いたかな?」

この時点で10時。出発してから1時間が経とうとしていました。

亀裂一直線

「これじゃないですか?!」
「いや〜、こんな感じじゃなかったけどなぁ」

海藻と岩盤と

干潮時刻が近づき、歩きやすくはなったけど帰りの時間を考慮すると、そろそろ引き返したほうがよさそう。

これも珍しい

「おぉっ、これは?!」
「なんか違うなぁ〜〜〜」

増える昆布ちゃん

岩壁に、びっしりと昆布の赤ちゃん。だよね?
次回は大きめのリュックにビニール袋を持ってこようかな〜(昆布の持ち帰りは密漁です)

V字の亀裂と

「これもスゴイじゃないですか?!」
「でも春採太郎は、もっと大きかった」
どんな姿なんだ、春採太郎!!!

もう引き返さなければいけないという時間帯。
ここに来て、今まで暗黙の了解のごとく避けていた「ネットで調べる」という技?を使う。

グーグルマップに載ってる、っていうね。

「…あれっ、通り過ぎてる!」
やっぱり?!

引き返しま〜〜〜す

いつの間にか通り過ぎていたのは、きっと、ここまで歩いて来てほしかったからなんだよね。
って思うことにする。

もっと足が早かったら、その先までも行けたのになぁ。
今度は濡れてもいいような装備で、スマホとカメラも完全防水で来れば躊躇なくずんずん歩けるな。

かっこよ

帰りの目線も、また違っていいものです。

まるで作り物のよう

はい! こちらが春採太郎です!!
行きに何となく「カッコいいな」と撮っていた、あの場所でした。
こんな地層は滅多に見られるものじゃない、どころじゃなかった。

釧路市の天然記念物および文化財に指定されている、国内最大級の砂岩脈。
約3800万年前の地殻変動で海底の地層の亀裂に砂が流入して固まり、隆起によって高さ約20m、幅4m以上のほぼ垂直な砂岩脈が露頭した、日本でも有数の「ここでしか見られない」くらい貴重なものでした。

釧路市の東部、興津海岸の海蝕崖には旧釧路炭田の挟炭層である(古第三系)始新統雄別層の、おもに砂岩・シルト岩・礫岩互層からなる河川成層がほぼ水平に露出している(長浜、1961)。
その中に、厚さ4m以上のほぼ垂直な砂岩脈が存在する。
この砂岩脈は、永渕(1952)によって初めて記載され『春採太郎』という愛称が付けられている。

北海道地質百選 0010:「春採太郎」

後日、『釧路市立博物館』に聞きに行ったのですが、まだ全然と言っていいくらい調査が行われていなくて、正確なことは解っていないそうです。
釧路にこれだけのものがある、というのを周知させたい思いはあるのだけれど、立地的にも一般の方をやすやすと案内できるものではないし、今後の課題の一つです、とおっしゃってました。

ガイドツアーをするにしてもガイドさんの人数に限りがあるし、現在はどうしても釧路湿原の方が人気というか知名度が段違いなので、なかなかこちらに人員を割けないという事情もあります。

蛇足ですが、近くに日本で唯一の坑内掘炭鉱があり海底下から石炭を生産しているのですが、その坑道内からも見ることができるそうです!
しかし、こちらも簡単に坑道見学させてもらえるというものではないのが残念ではありますが、今後に期待します。

岩礁に白波が

干潮時刻を過ぎた頃、海岸に白波が目立ち始めました。
潮位が上がって波が高くなってきたら危険なので、急いで退却。

横から見た一の滝、水量が増えてる。

道のりの8割は岩場で昆布沼でした。
ちなみに、もっとも潮が引く6月の大潮の日に来れば、まだ昆布天国(地獄)にはなっていないそうです。1ヶ月ちょっとで成長する昆布、恐るべし。

地層4きょうだい

オマケ:今回、見つけた地層の亀裂がこちら。
左上が「春採太郎」、となると順番に右上=春採次郎、左下=三郎、右下=四郎?。なんでオトコ名前なのかという気もしますが。

大きさ比較

さらにオマケの記念撮影写真♪
ここは、とても一人で来るようなところじゃないから案内していただいて良かったです。

もし、見に行きたいと思われたら6月の大潮の干潮時刻前後、もちろん天候のいい日を選んで、複数人で行ってください。
最低でも長靴&濡れてもいいような服装で。足元は岩礁なので裸足は厳禁です。波が高かったら干潮時間であっても中止してくださいね。

GoogleMAPはこちら


『春採太郎 見学会』は釧路市民対象の見学会なので、ネットで募集されることはないそうです。
さらに主催していた『釧路の魅力を創る会』が解散してしまったため、今後の開催予定はありません。

もしかしたら、こちらで募集があるかもですが不確定なので、気になる方はフォローしてみてください↓
釧路市民活動センターわっと公式フェイスブックはこちら


「釧路海底炭鉱見学会」も近年は開催されていないようですが、ひょこっと開催するかも知れないので定期的にチェックしてみてください。
釧路コールマイン株式会社(KCM)

炭鉱に興味のある方は、こちらもどうぞ
旧太平洋炭礦 炭鉱展示館


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