ぶらぶら
認知症の母の背中側に立ち
母の両脇の下に私の腕を入れて
身体を支えて歩かせようとすると
歩くのが面倒なのか
時々母は軽く足を浮かせて
ぶらぶらさせて
体重を預けてくることがあった
小さな子供の
お茶目な悪戯のようで
微笑ましく思えて
クスッとなっていたが
小柄な母が
足腰も弱って
認知症も段々と進んでいって
自然と
私が母の面倒を見る
保護者の立場になって
少しずつ
親も自分と同じように
一人の人間として
悩みや苦しみがあったであろうことを
自然と慮るようになっていった
親のことが鬱陶しくなり
あまり話もしないまま
長い間過ごしていたが
親子の関係が逆転するような
介護を経験することがなかったら
それまで家族の事には
あまり目を向けてこなかった自分には
こんな思いが湧くことは
なかったかもしれない