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[本・レビュー]株式投資の未来


パッシブ型のインデックス・ファンドへの長期・分散・積立投資は理に適っている。
しかし、資産形成にはもっとよい方法が存在する。


著者のジェレミー・シーゲル氏のプロフィールです。
ペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授(金融学)。コロンビア大学卒業、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士取得。金融市場に詳しく、CNN、CNBCなどでコメンテーターとしてたびたび登場。ウォール・ストリート・ジャーナル、バロンズ、フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムニスト。JPモルガンでの教育研修トレーニングを担当。

本書はおススメです。投資家だけでなく、株式会社を運営されている経営者もこの本から得るところは多いと考えます。高齢化社会における労働人口減少問題や、企業の財務会計事情など、日本の政治家にも参考にしてもらいところも山盛りです。何より、他ではあまり見かけない情報が盛りだくさんです。しかも「眉唾」ではなく、科学的根拠を持って説明されています。

投資における考え方も、まさに「目から鱗」の連続でした。

前回までにご紹介したチャールズ・エリス氏、バートン・マルキール氏と「パッシブ型のインデックス・ファンドに長期・分散・積立投資を行うのがベスト」との結論が続きました。

これに対して、シーゲル氏のコンセプトは
"インデックス運用は、これからもまずまずのリターンをもたらすだろう。だが財産を築くには、もっといい方法がある。"
とした上で

"インデックス運用を株式投資のコアにするべきとの考えに変わりはない。その場合、前章で述べたとおり、世界の市場に連動させることが大切だ。だが今回、S&P 500の採用銘柄を追跡し、業界別パフォーマンスを比べ、IPO、配当など長期的に調査した結果、こう考えるようになった。インデックス・ポートフォリオに、本書で紹介した補完戦略を組み合わせれば、さらに高いリターンを狙うことができる"

補完戦略として、『「D-I-V」指針』なるものが打ち出されています。

配当(Dividend):個別銘柄の選択にあたっては、持続可能なペースでキャッシュフローを生成し、それを配当として株主に還元する銘柄を選ぶ。
国際(International):世界のトレンドを意識する。このままいけば、世界経済の均衡が崩れ、中心は、米国、欧州、日本から、中国、インドをはじめ途上国世界へとシフトする。
バリュエーション(Valuation):成長見通しに対してバリュエーションが適正な株を買い続ける。IPOや人気銘柄は避ける。個別銘柄であれ業界であれ、市場の大勢が「絶対に買い」とみているうちは、買わない。

シーゲル氏は、S&P500の当初の採用銘柄をひとつずつ追跡し、その後のパフォーマンスを調査されています。その結果驚きの事実が判明します。

"S&P500の当初採用銘柄のリターンは、更新を繰り返す実際のS&P500のリターンを上回り、しかも、リスクが低い"

"S&P500の当初採用企業の運用成績は、平均すると、その後半世紀の間に採用された1000社近い新興企業の運用成績を上回っている。"

S&P500指数が形成されたのは1957年といいます。50年以上が経過し、社会情勢や国勢情勢も大きく変わるなか、1957年から続く老舗企業に投資を継続した方が、更新を繰り返すS&P 500銘柄に投資するよりリターンがよいというのです。

これは一体どうしてでしょうか。

"新興企業は、収益や売上はいうまでもなく、時価総額でみてすら、古い企業を上回るペースで成長する。だが投資家が、その株式に対価を支払いすぎるなら、まともなリターンは期待できない。株価が高くなれば、配当利回りが低くなり、配当利回りが低くなれば、再投資を通じて増えていくはずの保有株が、なかなか増えないからだ。"

"ポートフォリオの更新は、市場平均を上回るリターンを達成する上で、必要ではない。それどころか、S&P 500などの人気の高い株価指数は、新たに銘柄を採用することで、株価の急騰を招き、将来の運用成績を押し下げるケースが多い"

この事実をもって、シーゲル氏は「成長の罠」と呼んでいます。

"株式投資の長期的リターンは、企業の増益率そのものではなく、実際の増益率が投資家の期待に対してどうだったかで決まる。"

因みに運用成績ランキング首位はフィリップ・モリスです。

"成長の罠は、同様に、国単位でも確認できる。過去10年間、世界のどの国より高い成長率を達成した国が、投資家にもたらしたリターンは、どの国より低かった。つまり中国は、1990年代の世界経済の原動力ではあったが、株価が過大評価されすぎ、後に急落して、投資家の期待を手痛く裏切った"

"黄金銘柄をみつけて、際立ったリターンを手にしたいなら、投資家の期待以上に成長する銘柄をみつけることを目標にすればいい。期待度を測る最良の指標は、株価収益率(PER)だろう。PERが高いとき、投資家は平均を上回る増益を期待している。PERが低いとき、平均を下回る増益しか期待されていない"

"黄金銘柄に支払う対価は、PERで20倍から30倍までが妥当"

これまで投資の本を色々読んできましたが、配当やPERの値には個人的にはこだわってきませんでした。

配当は減配すると株価が大きく下落する可能性がある上に、経営状況によっては無配になることもあります。「配当や優待はあくまでおまけ、メインはキャピタルゲイン」とする本も数多くみられます。配当が継続されるかは重要なところです。日産自動車は長らく高配当の企業として知られていましたが、業績悪化に伴い、大きく減配となってしまいました。今後の経営次第では倒産も起こり得ます。

但し、長期的に「積立・分散」投資を行うのであれば、配当が継続される企業からは安定したリターンが望める上に、配当金を再投資することで「複利」の効果も望めます。

またPERにしても15倍が目安で、それより低ければ割安、それより高ければ割高。ただし、成長が期待され人気の企業ではPERが割高でももっと株価が上がる可能性があると理解していました。

今でも、この理解はあながち間違ってはいないと思います。但し長期に保有するとなると、PERが割高の株価はいつか必ず下がってくることが予想されます。長期・積立の投資を行う場合には、やはりPERの値が低い銘柄に注目するのがよさそうです。

本書の情報を元に、日本企業の銘柄として注目するとすればJT、ツムラ、国際石油開発帝石あたりでしょうか。個人的には禁煙推進派なので、JTへの投資は抵抗感があります。アクティブの投資を続け、資金にある程度余裕が出る場合には、ツムラ、国際石油開発帝石あたりに「長期・積立」投資を行ってみようかと考えています。国際石油開発帝石は現在、大きく値を下げていますが、配当率はそれなりであり、倒産さえしなければ、安値で仕込んでおけば、それなりのリターンが期待できると思われます。

とりあえずは、へそくりを利用した個別銘柄、iDeCoを利用したインデックスタイプの投資信託への投資を継続してみようと思います。

iDeCoは本書を読み終えた時点(4カ月程前)では承認まちで、それまでeMAXIS slim国内株式(TOPIX) 40%、eMAXIS slim米国株式(S&P500)60%の設定にしていましたが、本書を読んでSBI・全世界株式インデックス・ファンド80%、EXE-iグローバル中小型株式ファンド20%に変更しました。


また、『21世紀の資本』、世界史・地理関連の本を数冊読んだことで、やはり全世界型株式のインデックスファンドへの長期・分散・積立投資は戦略的に理に適っているという認識を強めました。


最近、Appleやテスラを中心としたアメリカ企業の株価が上昇し、NYダウやNASDAQも堅調な上昇をみせていますが、GAFAもいつまでも安泰とは限りません。現在はAppleやマイクロソフトが最大手ですが、かつてパソコンといえばIBMやHPが想起されました。


歴史をみても、インドやアラブ諸国が世界の中心だった期間は決して短いとはいえません。対してアメリカの歴史はここ数百年です。


ここ三カ月でSBI全世界は3.8%、EXE-iグローバル中小は3.4%のリターンとなっています。但し、かなりの変動を認めます。1日で1~2%近く動くこともあります。


NISA枠で、ニッセイ外国株式にも投資をしていますが、こちらはここ1カ月の運用で6.84%のリターンをもたらしています。数年SBI全世界+EXE-iグローバル中小と、ニッセイ外国株式を比較し、明らかに一方のリターンの方がよさそうであれば、統一を検討しようと思います。


 テレビや雑誌で、人気の投信ランキングなどを見ることがありますが、そのほとんどはアクティブ型です。
 また、アナウンサーや司会者、場合によっては証券会社の担当者が「リスクを最小化し、プロによる運営によって、リターンを最大化する」的な発言をしているのを耳にしますが、ここには大きな矛盾を認めます。
 投資の世界でいう「リスク」とは価格の変動幅をいいます。つまり「リスク」が少ないということは「負ける(金額が下がる)確率を減らす」ことではなく、「金額が大きく減る可能性が少ない」と同時に「金額が大きく増える可能性も少ない」ということになります。「金額が大きく変わる」可能性が低いのであれば、そもそも「大きく儲ける」ことは期待しにくくなります。


 ここは発言している人が「理解した上で意図的にだまそうとしている」のか、そもそも「言葉の矛盾に気づいていない」のかは分かりませんが、いずれにしても「パッシブな投資よりもアクティブな投資の方が100%儲かる」と断定している人や本には出合ったことがありません(もちろん100%でなければ、アクティブな運用で大きく儲けられる可能性があるとする人や本は多くお見かけします。実際、幸いにも私の個別銘柄のTOTAL RETURNは現在35%程度(運用期間はちょうど1年)ですが、今後大きく負け越す可能性も十分に存在はするものの、他人にまかせる気には全くなりません)。


 個別銘柄については、2020年7月以降アカツキ一択です(その前まではJIAとリンクバルでした。現在アカツキは動きがとぼしく、テクニカルな指標等を考慮するとZホールディングに魅力を感じますが、ファンダメンタル等も踏まえてまだアカツキ押しです)。個別銘柄は四季報発売毎に、個人的なものさしで全銘柄をチェックし、銘柄の変更を行っています。9月にまた2020年4集秋号が発売されるので、その後に変更等を検討する予定です。

毎度のことながら、投資は自己責任でお願い致します。

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