ピラミッドメソッド
どうもしろやぎ保育書房です(動画解説はこちら)
21世紀型保育の代表的なものがプロジェクトアプローチと言われています。
このプロジェクトアプローチ、西欧諸国を中心に、取り組みが進んでいます。
有名なものは、イタリアのレッジョ・エミリア、ドイツのイエナプラン、
スウェーデンのEdu-Care。そして、オランダのピラミッドメソッド。
今日はこの中の、オランダ「ピラミッドメソッド」について、
簡単にご紹介していきたいと思います
このピラミッドメソッドは、1994年にCito(シト)と呼ばれる、オランダ王立教育機関のジェフ・フォン・カルク博士、という方が開発しました。
このCitoというのは、オランダで最も権威のある教育評価機関です。
1986年にオランダ政府によって設立、1999年には民営化されました。
現在では子どもたちの「学力テスト」を行う、ヨーロッパ最大の組織となっています。
このCitoがオランダの幼児教育の根幹に、この「ピラミッドメソッド」を採用しました。現在、このピラミッドメソッドはオランダ全土の教育現場で取り入れられ、ドイツ、アメリカ、日本などで広く普及してきました。
このピラミッドメソッドは、プロジェクト型の幼児教育とよばれています。
プロジェクト型の幼児教育というのは、「プロジェクトアプローチ」を主軸においた幼児教育のことです。
そしてこの、プロジェクトアプローチというものは、子どもが「受動的に知識や人間関係を学ぶ」というものではなく、「積極的に自ら探索し学ぼうとする意欲を育てる」というプログラムになっています。
自分たちでテーマを決めて、そのテーマをチームで深める。
現在の保育で言うところの、「子どもの主体性」や「協同性」の育ちを支えるプログラムになっています。
そもそもこの「プロジェクト型の教育」は、
ジョン・デユーイの「経験学習」「問題解決学習」を具体化した
キルパトリックという人が「プロジェクトメソッド」として提唱しました。
ちょうど100年くらい前のことです。
そこから、更に後世の人々が研究を重ね、様々な理論や教育法を統合し、レッジョ・エミリアに代表される様々なプロジェクトアプローチが誕生します。
ピラミッドメソッドでは、プロジェクト型幼児教育に、最新の脳研究、またピアジェやヴィゴツキーといった多様な発達心理学の理論を統合して、カリキュラムが構築されました。
つまり、ただ子どもたちに毎日好きなテーマを追い続けさせる、というのではなく、脳研究や発達心理学の統合による「理論的な裏付け」によって、より最適化された保育が行われるということです。
2020年ユニセフが行っている子どもの幸福度調査。
このなかで精神的幸福度を測る「生活満足度」ですが、日本は先進国38カ国中37位でした。
一方、オランダはというと、なんと1位なんですね。
オランダは世界で一番子どもが幸福だと感じる国、なんです。
もちろん、家庭の環境、労働環境、経済環境、そして福祉の環境などなど、色々と違うこともあるけど、それでも、教育が子どもの幸福の一因を担っているのは確かだと思います。
では、具体的にピラミッドメソッドってどんなものなのか見ていきたいと思います。
ピラミッドメソッドでは、普段の保育活動の中に特定のカリキュラムが導入される形で展開されます。
日本で行われている一般的な保育に似た時間があり、そこにプロジェクトの時間が差し込まれる、というイメージです。
だいたい10時ぐらいまでが、自由遊びの時間です。
担任は子どもたちの遊んでいる様子を見て、子どもたちが何に興味を持っているか、子どもの間で話されている会話などから、プロジェクトのテーマを導き出します。
この時、導き出すテーマはピラミッドメソッドが提唱する「8つの発達領域」に関連付けることが重要です。この8つの発達領域というのは、先程言った、脳研究や発達心理学などの理論から考え出されています。
そして10時からはサークルタイムと呼ばれる話し合いの時間があります。ここでは部屋の中心に円を描くように椅子を並べて子どもたちが座ります。
そこでは、朝、今日は何をして遊び、どんな遊びが準備されているか。1日のプログラムを話します。
プロジェクトの活動をする日は、テーマにちなんだお話や遊びを展開します。
サークルタイムで保育者と話し合いがすむと、遊びのコーナーに分かれてプロジェクト活動がスタート、といった流れです。
プロジェクト活動は、毎月1つのテーマを4週間。そのテーマを深める活動をします。
それぞれ、
1週目はテーマの具体的説明、
2週目は見本を見せる、体験させる
3週目は理解を広げる
4週目は理解を深める
といった学びの流れを構築します。そして、4週目にはProjectDay
というものがあり、4週で学んだことの包括的なまとめが行われます。
プロジェクトで学んだことを言語化、抽象化、作品化させる一日です。
お店屋さんごっこ。ファッションショー、劇、などなど、様々な形のアウトプットの機会が設けられます。
例えば「虫」というテーマで行くとすれば、
1週目は身近な虫に関心を広げるため、いろんな虫を探して観察する。
2週目は虫を飼育したり餌を与えたり。
3週目は体験したことを話し合う。自分の知ってること調べたことをみんなと共有する。そして4週目はProjectDay。自分だけの虫を作品として作る。といったかんじです。
こういった活動を1年通して行い、12ヶ月で12のテーマに取り組みます。
さらにテーマは、3歳から5歳の3年間繰り返すことによって、理解を広げ、深めていきます。テーマを通して、学びは単純なものから複雑なものへ、具体的なものから抽象的なものへと発展していきます。
このピラミッドメソッドを支えるのは保育環境です。
ピラミッドメソッドでは、遊びと学びの保育環境が、充分に整えられた保育室というのを大切にします。よりよい環境構成ができると、子どもたちはより多くを習得できる、と考えられているからです。
ピラミッドメソッドでは、遊びのコーナーを保育室に作ります。
一見すると、よくあるコーナー保育ですが、
そこには、プロジェクトのテーマに沿った遊びが用意されていていること。
ただモノが置いてあるのではなく、子どもがそれらに意味を見いだせること。
それぞれの遊びのコーナーが有機的に関係し合うこと。が大切にされています。
環境構成に置いて、面白いな、と思うのは、保育室にプランニングボードが設置されていることです。
これは部屋にある全ての遊びを写真で表示したもので、子どもたちはこのプランニングボードを見て自分のしたいことを決め、名札を貼ってから遊び始めます。まさしく、主体性の尊重。自己決定の尊重です。
さらに、遊んだあとは、自分で選んだ遊びの評価を自分で検証できるシステムもついています。
「これは、こうしたほうが良かった」「自分のやったことの、こことここがうまく言った」みたいな評価を自分自身で行います。保育者がその評価を見てアドバイスをすることもありますが、それよりも、自分で選び、自分で評価するということを大切にしています。
このような遊びの自己選択、遊びの自己検証を通して、オランダ流の子どもの主体性を育んでいるように思います。
はい、ということで今日はピラミッドメソッドについて紹介してまいりました。
最近は、アクティブラーニングだ。プロジェクトアプローチだ。と、こういったことが言われていますが、このような各国の取り組みからも、何か自分たちの園の保育を考えるきっかけがあるかもしれません。
今日の動画が、何かの参考になったら嬉しいです。
今日の参考文献はこちら
『小学校との連携 プロジェクト幼児教育法』ジェフ・フォン・カルク、辻井正共編著です。
ありがとうございました!
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