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2021年保育のNewsベスト7
どうも、しろやぎ保育書房です。
(動画解説はこちらhttps://youtu.be/8jNDKPubSTo)
今日は2021年ももうすぐ終わりということで、2021年の振り返り、今年話題になった保育のニュースを厳選してお届けしたいと思います。
現在のわたしたちが置かれている状況を時短で把握し、より保育者としてパワーアップしていただければな、と思います。それでは参りましょう。
保育のニュースベスト7その1
7月、中央教育審議会「初等中等教育分科会」が「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」を設置
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これは、5月25日に当時の萩生田文部科学大臣が「幼児教育スタートプラン」という構想を発表したことにはじまります。
この「幼児教育スタートプラン」というのは、
全ての5歳児に「生活学習の基盤を保障すること」また、保幼小連携で「一人一人の発達の把握」や「早期支援」等を柱にした計画のことです。
「質の高い幼児教育」というのは、その後の人生に大きな影響を与えます。
また日本の将来的な経済成長に欠かせません。なので幼児教育に投資することは、必要不可欠なことなんです。
この幼児教育に投資する、という考え方は世界的なトレンドです。
1997年イギリスで当時のブレア首相がおこなった教育政策が大成功。
これを見たヨーロッパの国々がこぞって幼児教育に投資を始めています。
日本でも2018年の3法令改定の背景にこうした世界的なトレンドがある、と言うことは以前お話ししました。詳しくはこちら「汐見稔幸さん、紳士心身要領が語る保育の未来」https://youtu.be/lvD4wwmtrLQ
この幼児教育スタートプランの実現に向けて、調査や研究、議論をしてもらう目的で設置されたのが「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」です。
委員には、東京大学名誉教授の秋田喜代美さん、白梅学園大学名誉教授の無藤隆さん。それから、多くの研究者や小学校関係者、保育施設の園長などがいます。まさに錚々たる顔ぶれ。
よし、こんなにすごい人たちが考えてくれるなら大丈夫!かと思いきや、そう簡単には進まなそうです。
5月の萩生田元文部科学大臣の発表に、
「5歳の1年間は、小学校に上がる前段階として、同じ学びをしていただくことが これからの義務教育に必要じゃないか」という発言がありました。
これを聞いた記者達は「5歳児教育プログラム」と報道。
そして全ての5歳児に対して、一律の教育が行われる可能性があるのでは?と憶測を読んでいます。
さらに専門家からも懸念の声が上がっています。
東京大学名誉教授の汐見稔幸さんは「まあ、こう言っては失礼ですが、現場のこと、特に幼児教育のことをよくわかっていない場合の典型的な説明の仕方だなあ(東洋経済オンライン10月16日)」と感じたそうです。
そして「萩生田さんの言う「同じ学び」というものをどう解釈するかで、議論はすったもんだしそうだ」と言います。
萩生田さんには「この時期にこれを学ぶ」と言ったカリキュラム像があったのかもしれません。しかしそれは「一斉カリキュラム」の考え方。
しかし本来、幼児期に求められるのは「経験カリキュラム」です。これは一人一人のそれぞれ違った経験を大切にするというカリキュラムです。それぞれ子どもの様子を見て、明日はこれをやってみようか、と考えます。
一斉カリキュラムで同じことを教えても、全ての子どもに同じように定着するものではありません。それぞれ異なる子ども達の育ちを支えてきた今までの幼児教育のスタイルが、ここにきて変化を求められてしまうのでしょうか。
果たしてこの「架け橋特別委員会」の議論が、義務教育の前倒しになってしまうのか、5歳児一斉教育になるのか。
それとも一人一人の経験カリキュラムをベースにした幼児教育の質の向上につながるものになるのか。
現在の文部科学大臣は文部化学に関する行政経験が浅く、畑違いとも言われる末松信介さん。どうなることやら。議論の行く末を見守りたいところです。
保育のニュースベスト7その2
5月、「教員等による児童生徒 性暴力等 防止法」が成立。わいせつ教員の免許再取得が厳格化
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「過去のわいせつ行為を理由に教員の免許再交付を拒めるようにする「児童生徒 性暴力防止法」が5月28日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した」ということです。
今までは、児童へのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けても、3年経てば再び取得できてしまいました。
しかし、これからは各都道府県の教育委員会が、過去の懲戒免職や、現在の更生の状況を見極めて、拒否することができるようになりました。
これに伴って、国は児童への性犯罪で免許失効した人の名前や、処分理由を登録するデータベースを整えることになりました。
さらに、このデータベースに適切にアクセスできる「日本版DBS」を作ろうという議論も進んでいます。
DBSというのはイギリスに既にあるシステムで、
例えば採用の担当者が、就職希望者の過去の犯罪歴を知りたい、と思った時に、申請してその人の過去の犯罪履歴を知ることができるものです。
採用する前に、あらかじめどんな犯罪歴があるかを知ることができ、自分の職場で同じような犯罪が起こることを未然に防ぐことが可能になります。
「このイギリス版DBSを日本でも作ろう。日本版DBSだ!」と言って、議論が重ねられているんですね。
この「児童生徒 性暴力 防止法」の成立に伴い、わいせつ行為を行った保育士の免許再登録期間の延長も議論されています。
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「保育士による子どもへの性暴力を防ぐため、厚生労働省が法改正の検討に入った。性犯罪で禁錮以上の刑を受けた場合、保育園などで働けない期間を現行の2年から最長10年に延ばす方向だ」とのこと
これまでは、子どもへのわいせつ行為で処分を受けた保育士でも、2年経つと再登録することが可能だったんですね。
それを最長10年は保育士として働けないようにしよう。という法案を厚生労働省がまとめた、と言う内容です。来年国会に提出されるようです。
もし興味があればこちらも過去の動画をご覧ください。「男性保育士にまつわる、性差別&性的虐待」https://youtu.be/yBcpqKLL3VQ
平成15~令和2年にわいせつ行為で登録を取り消された保育士は男性61人、女性3人の計64人。しかしこれは氷山の一角との指摘もあります。
子どもの時に受けた性被害は、一生を通してその人を苦しめると言われます。
しろやぎ的には、子どもへの性犯罪が厳罰化されていく方向には賛成です。
法律の面からも、そして現場の面からも、子ども達を真剣に守り抜きたいと感じます。
保育のニュースベスト7その3
7月、バスに9時間放置、園児が死亡
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本当に、非常に痛ましいニュースです。
「福岡県中間市中間2の私立双葉保育園で、駐車中の送迎バス内に1人でいた園児がぐったりしているのを園職員が発見した。園児の意識はなく、搬送先の病院で約1時間半後に死亡が確認」こういった事件が起きました。
保育関係者、この記事を見てくださっている方々の中にも、怒り、憤り、悲しみを感じた方も多かったのではないかと思います。私もこの事件のこと聞くたびに、悲しみと怒りの入り混じったような、非常に複雑な気持ちに駆られます。
事件の細かな経緯については割愛しますが、
園長が運転する時に同乗者がいなかったこと、それが常態化していたこと。降車後の車内の確認が不十分だったこと。職員同士の連携ができていなかったこと。子どもの出席確認が雑だったこと、などなど。
複数の過失が重なりました。
しかし、結局は保育園の危機管理意識の低さが原因で、一人の尊い命が失われたんだと感じます。防ぐことができた事故なのに!と言う悔しさが拭えません。
この事件は、保育業界以外の人々からの注目も浴びて、ネットでもさまざまな議論が行われました。
中でも人員不足、保育士不足について改めて主張する方も多かったです。
そもそも、なぜ園長が運転していたり、同乗者がいなかったのか。というところで、採用募集しても人員が見つからなかったことが報道されています。
この報道を受け「保育施設の人員配置を強化すべきだ」という意見が上がりましたが、これには懸念する声も上がりました。
早朝から夜まで子どもを預かる保育施設では、配置基準を満たしていても、全ての時間で十分な体制を取るのは困難という園も多いです。
加えて新型コロナウイルスの感染拡大により、園内の消毒や園児の健康管理など保育士の負担は増している。その上に、さらにのしかかる、保育士採用の難しさ。
こうなると、保育士の賃金アップや処遇の改善。業務の効率化。そして業界全体の見直しにまで議論が広がっていきそうです。
簡単ではありません。しかし、この議論はもっと真剣に進めていくべきものであると感じます。
この事件後、行政は特別監査を実施し、園長らの責任の明確化や登園時の出欠確認のルールの見直しなどを求めました。
そして運営法人は園長と理事長の退任を含んだ改善策を県に提出したようです。
しかし、11月には「保育園を運営する社会福祉法人「新星会」は22日、同園の保育士らが園児を虐待していたとして県と市が行った改善勧告に対する報告書を提出」という報道。
こうなるともう、運営母体の管理能力が欠如しているのでは、と感じます。
少し毒を吐きますが、こう言った子どもに虐待を行う保育園や運営法人は、どんな理由があっても許されるものではありません。すぐにでも業界から出て行ってもらいたい、と強く願います。
保育のニュースベスト7その4
8月、現行の「幼稚園教諭免許更新制」の廃止案が示される
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皆さんにとっては、負担減につながる朗報ではないでしょうか。
「文部科学省は8月23日の中央教育審議会の小委員会で、小中高校などの教員免許の期限を10年とし講習の受講を義務付ける「教員免許更新制」を廃止する審議まとめ案を示した」とのことです。
当時の前大臣萩生田さんが早ければ2023年度から廃止する方針を示しました。
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さらに11月19日に「末松文部科学大臣は、2022年度の早い時期に廃止し、23年度から新しい研修制度を始める考えを明らかにした」そうです。1年前倒しです。
そもそも幼稚園免許更新制というのは、2009年第1次安倍政権が法改正し、教員の資質確保を目的に教員免許更新制度が導入されました。
現場で働いているだけではダメだ。最新の知識を仕入れアップデートを続けないと!こう考えてのことでしょう。確かにこの考えには共感できる部分もあります。
しかし、更新ための要件がなかなか苦しかった。
10年ごとに大学などで30時間以上の講習を受けること、さらに研修にかかる費用も高額です。さらに保育者によっては、キャリアアップ研修ものしかかり、毎年かなりの時間を研修に奪われていたわけです。
それも、このテーマの研修を受けなさい。という全く保育者の主体性が尊重されない押し付け研修。もしくは「いいなと思う研修はすぐに埋まってしまい、いきたい研修に行けない」などなど
これでは、一体何のための研修だ!研修の負担が重すぎる!こう言った声がかなり上がっていました。私の身近の保育者からも「なんでこんなことさせられてるんだ?」という声を多く聞いていました。でも、きっと全国的に声があがってたんですね。
この保育者、教育者の声が届いたのか、今年ようやく制度の見直しが行われました。
今のところ、まだ制度の廃止日は未定ですがが、22年度末に期限を迎える教員は、更新が不要となる可能性が高いとのことです。
あと少しの辛抱ですね。
こんなことを言っていますが、私は研修制度自体を否定するつもりはありません。
しかし、普段から負担の多い保育者や教師にとって、どんな研修形体がふさわしいのか。どうすればより良い学びにつながるのか。
是非とも、保育者に負担が少なく、なおかつ主体的に学べるような制度が整えられていくことを望みます。
外部研修を意義あるものに変える、と言う動画もあります「外部研修を保育に生かす3つのポイント」https://youtu.be/NgRy-hOV_Pg
保育のニュースベスト7その5
9月、コロナ、各所でクラスター、休園相次ぐ
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昨年から続くコロナ禍の影響で、今年も多くの感染者が発生しました。
8月9月には第5波が日本全国を襲い、8月26日には1日の感染者が25000人を超えました。
9月2日のNHKnewswebによると、「新型コロナウイルスに子どもや職員が感染し、全面休園となった保育所などは、2日の時点で15の都道府県の185か所に上り、先週に続いて過去最多を更新」厚生労働省のまとめでわかりました。
これまで、子ども達を預かるために、マスクをして働き、消毒殺菌を徹底し、給食は対面を避け、プライペートでは友達や家族との会食も避けていたのではないかと思います。
それでも、そんな園の努力だけでは、どうしてもウイルスの脅威からは逃れることができませんでした。これはもう誰にもどうすることもできないことでした。
私の周りでも、保護者の方が感染したり、濃厚接触したり、兄弟の学校の中でクラスターが発生したり、と様々な方面からくるコロナの脅威に、フラフラになりながら対応に迫られた先生方を見てきました。
このような状況で、誰かと接触することすら怖い状況の中で、それでも子ども達の保育をしてくださった先生方に感謝の念しかありません。
ありがとうございます。
皆さんのおかげで、たくさんのお父さんお母さんの仕事が守られました。
皆さんのおかげで、こんな状況でも子ども達が笑って過ごすことができました。
私から言うのも変ですが、日本中の人が皆さんに感謝していると信じています。
保育テックサービスを提供する千株式会社では、保育施設に通う親を対象に保育士に関するアンケートを行ったようです。任意項目として保護者から保育士への感謝の声を募集したところ、回答者284人のうち195人が「感謝の声」を投稿、保育士へ感謝の気持ちを届けました。
よければリンクを貼っておきますので興味のある方はご覧ください。
https://note.com/hoikutech_sen/n/n6a32cd75ffed
コロナ禍で感謝を実感した保護者から、保育者の方々への感謝の気持ちがたくさん紹介されています。
保育のニュースベスト7その6
11月、保育士給与9000円上げの方針固まる
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11月になり、岸田新首相がこのような方針を固めたことがニュースで流れました
「政府は19日に決定する経済対策で、保育士や介護職員、看護師らの収入引き上げを行う方針を固めた。(中略)収入の引き上げ幅は、保育士や介護職員については、月額で3%程度とする方向」とのこと。この月額3%アップが、保育士給与の9000円アップになると言うことです。
そもそも、厚生労働省の統計では、2020年保育士の平均月収は30万2000円。これは全産業の平均月収35万2000円よりもかなり下回っています。
9000円アップはこのことに配慮した賃金引き上げとは言われていますが、それでも、まだ全産業の平均月収には4万円ほどの差があります。
え?9000円だけ?と驚いた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
私自身も、なんと言うか中途半端な感じがしました。気持ち程度の賃金アップが、果たして保育士の処遇改善につながるのかな?という気持ちです。
先程触れましたが、このコロナ禍で働く親と、子ども達の健全な育ちを支えたのは保育者です。第5波で休園が相次ぐ中、それでもできる限りのことをして多くの人を支えたのは現場の先生方です。国として、保育者をもっともっと大事にする気持ちが必要ではないでしょうか。
一方で、保育士の賃金だけをあげれば処遇が改善される訳でもありません。
保育者の退職理由の第1位が「人間関係」です。
それも主に園長との人間関係と言われます。
株式会社明日香が行った実態調査では、3人に1人の保育士が「園長との関係性が良好ではない」と答えました。さらに80%の保育者が園長との関係性が仕事の満足度に影響する。ストレスにつながると回答しました。
しろやぎ的には、賃金アップも必要ですが、保育者のメンタルをサポートする制度、組織があっても良いのでは考えています。
ドイツのミュンヘンでは学校局という組織があり、保育者のカウンセリングを行っています。園から出て相談できる。話を聞いてくれる第3者がいる。それだけで保育者にとって精神的な負担は軽減されます。
今は多くの私立園が自分たちの園の中で職員の育成や、メンタルケアに取り組んでいますが、個々の施設で、園長個人がケアに取り組むのには限界がきているように思います。
賃金アップだけじゃなく、メンタルを支えるシステムを考えていくことも保育者全体の処遇改善に繋がっていくのではないでしょうか
保育のニュースベスト7その7
11月子ども庁設置へ基本法策定
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最後はこちらです。
「政府の子ども政策の推進に関する有識者会議は29日午前、「こども基本法(仮称)」の制定や人員・財源確保を求める報告書を岸田首相に手渡した。政府は報告書を踏まえ、子どもに関する諸施策の司令塔となる「こども庁」の2023年度創設に向けた基本方針を策定し、来年の通常国会に設置法案を提出する方針」とのことです。
元々は、菅義偉前首相が創設を表明した「こども庁」ですが、岸田首相になっても引き継がれ、議論が進められています。
子ども庁が一体何をするところかと言うと主に、縦割り行政の一元化です。
保育園は厚労省、幼稚園小学校は文科省、子育て支援対策は内閣府、と言ったように、子どもに関することも多くの省庁に分かれています。
これを「こども庁」が縦割りを解消し、制度作りを効率的に進めることが可能になります。主に子どもの発達支援、虐待DVの対策などが推進できると考えられています。
政府は、来年の通常国会に関連法案の提出を目指すといっていますが、こども庁の創設でどんな効果を目指すのか、その全体像がはっきり見えていません。
例えば、こども庁が示す「こども」の範囲、年齢はどれくらいか、どういった少子化対策を含めるのか。また、保育園は厚生労働省から移す一方、幼稚園は文科省に残す方針、といったように、各省庁の足並みも揃っているようには見えません。
今のところ、具体的にどんなことを行う、というのはまだはっきりと見えていませんが、それでも子ども達のためになる制度を効率よく作っていく。
そのためのベースとしての「こども庁」そして「こども基本法」を作ろうとしている、と考えると良いのではないでしょうか。
今後の議論の進捗に注意が必要ですね。
まとめ
今日は2021年保育のニュースベスト7をお送りいたしました。
時代の流れにおいて、例えば、どうしようもないな、自分には何もできないしなぁ。とフタをするのは簡単です。しかし、ニュースを改めて知ることで、自分はどう感じるか、何を思ったか、自分はどうするべきか、と考えることは、自分の保育観を育てること。保護者を理解すること。子ども達の未来を考えることに繋がります。
今日の内容で、皆さんにとって何か一つ気になったニュースがあれば、それについて考えてみたり、休憩時間中に同僚と意見交換してみるのも良いかと思います。
今日の動画で、何か一つでも意見交換のネタを紹介できていたら嬉しいです。
もうすぐ激動の2021年が終わります。
いやいや、その前に、クリスマスがありますね〜。みなさん。家族と大切な人と、素晴らしい時間をお過ごしくださいね。
今日は以上になります。どうもありがとうございました!