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詩誌「光」三上 りょう

DOLCEⅡ 

「星のかけら」

メイプルの誘惑のせるパンケーキ 一人の棘を溶かす三日月 

短めの手紙のようなキスをして 星のかけらは誰かのものに 

誰を待つ椅子になりたい?手を振ったあとも余韻の恋を待ちたい 

あの人の街に似ている 改札を抜けてまっすぐ まっすぐなとこ 

純水のぶどうのなかに隠された「今、会いたい」をみつけたら好き 

雨の昼のための本棚を作れば明日あなたの来るワンルーム 

キスだけでよかった 今朝を裏切って日曜の言うことはきかない 


「潮騒 」

あんにゅいな雨のない日は読みかけの短編集に置く花栞 

観覧車 上手く撮れずに手渡したフィルムで君が描く 群青 

あの頃の彼と同(おんな)じ君を詠む歳だけだって言えない秘密 

遠くまで思い馳せたら少しだけ時計戻してみたい潮騒 

あの波に誘われそうになったけど寄せては返らぬ平日のこと 

真昼間に蝶を放した合図かもしれないテラスまで届く風 


「DOLCEⅡ」

「産みたい」を「会いたい」にして送る嘘 これも愛だと君は知らない 

博多には博多の空気 ミルクティー好きなことだけ持って歩いて 

四つ角でみつかる予定 大人なら すれ違いたい恋もあるから 

懐かしの鉄板ナポリタンのある喫茶だからと誘ってみたい 

心配をくれるあなたは蜜のひと割れたグラスを拾う手のひら 

夜更かしのレモネードまだ君が好き乾いたままの横縞のシャツ 

朝焼けも待てないくらい会いたくて もう少しだけ猫になりたい


「森のキッチン」

黒糖の紅茶の夜が過ぎていく どんな○にもあなたがいない 

行きずりの森と思えば白妙の蝶々になって結ばれる夜 

あの夜を煮詰めておいたラズベリージャムは叶わぬ森のキッチン 

再会はドライフラワーの花束 ほんのり甘い ほんのり苦い


三上りょう mikamiryo
短歌作家。
福岡市在住、大分県生まれ。
好きなものは猫と紅茶と格闘技。
福岡発の短歌ブランド、蝶のあしあと代表。


恋の歌を中心とした作歌スタイルを「嬢舌短歌リズム」と名付け、創作。
こだわりの紙を使った短歌本や手作りの紙雑貨を発表。
朗読ライブや作品展など短歌にまつわるイベントの企画もおこなっている。

https://www.chounoashiato.com/



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