🇨🇳#32 浙江省・紹興　魯迅の郷里に「吶喊」する

今日わたしはこの上なく落ち込んでいる。
なぜなら、推していた金魚のゆきちゃんが突然、虹の橋を渡ってしまったから。
わたしは好きな俳優やアイドルこそいないが、YouTubeチャンネル「えみこのおうち」のゆきちゃんという白い金魚をひそかに推していたのだ。
ゆきちゃんは松かさ病という完治が難しい病と戦いながら、愛くるしい姿をみんなに振り撒いていたのに…なのに…（号泣）。

紹興の古い街並み

そしてわたしが今いる浙江省・紹興は、曇天模様ときどき雨。
聞いている曲はビートルズの「Now and then」。
もちろん今日もひとり旅である。
もう、心のうちには感傷しかない。

友人・サアヤへのお土産に15年ものの紹興酒を購入

意外に美味しかった紹興酒ラテ

こんな時は、酒を飲もう。
わたしは思った。
でも、医者には胃腸炎だからと、百薬の長であるはずの「酒」を禁止されていた気がする。

仕方なくわたしは紹興名物の「黄酒ラテ（紹興酒ラテ）」なるものを飲むことにした。
予想に反して味はうまかったが、酒としてみれば子ども騙した。
金魚のユキちゃんを失った悲しみは、アルコール度数　0.3%程度ではごまかされやしない。

で、やって来たのが魯迅の故居。

わたしは、小説家・魯迅が大好きだ。
魯迅の小説は（そもそも本数が多くないので）世に出ているものはほとんど読んでいる。

また、随筆に関しては、中国語版を持っていて、読んでいるフリをして、棚に飾って格好つけているだけである。
ボロいアパートの本棚を誰に見せる訳でもないが、わたしは時たま外文書や哲学書を飾ってみては、頭がいい風の雰囲気を醸し出したくなるのだ。
そしてそれらが開かれることは、三年に一度もない。

95年版『吶喊（とっかん）』表紙

『吶喊（とっかん）』。
ガンダムのコウ・ウラキのセリフ（吶喊します）ではない。
魯迅の作品で、おそらく最も有名な短編集のタイトルである。
（吶喊は、大声で叫ぶ/突撃するの意味）

1985年版の『狂人日記』挿絵版画

『吶喊』の一番はじめに収録されている『狂人日記』。
もう何度読んだかわからない、大好きな作品だ。
精神疾患を抱えた主人公の視点を借りて、暗に中国の古い社会制度、儒教倫理に疑問を呈しているというのが通説だが、そういうのは置いといて、とにかく文章が鋭い。痺れる。

モデルとして、身近に魯迅の従兄弟がいるとしても、こういった精神状態の人の心算をここまでリアルに描くのは容易ではない。
読むたびに「あーやられた」と思う。

作家・魯迅がデビューするまで

魯迅の寝室

👶浙江省・紹興で元金持ちの家の子として出生。

🏥仙台医学学校（現・東北大医学部）で医学を学ぶも、自国民の思想改革を目指して文学の道へ転向。

📘仲間と同人誌「新生」を出そうとするも、資金が足りなかったり、協力者に恵まれず、頓挫する。
→あっさり文学の道諦める
（わたしも、幕張メッセで四コマ漫画を売って三冊くらいしか売れなかった黒歴史があるので、気持ちはわかるよ…）

✒️もう書くのやめた…と、北京でくさくさしていた三十代の終わりに、仲間たちから「才能あるんだから、また書いてよ」と言われて小説を書いてみる。
→大ブレイク

ちなみに、自伝的小説『吶喊　自序』によると、魯迅は友人の金心異（銭玄同）から執筆の話を持ちかけられた時、まだ自分の筆の力に懐疑的だったのか、こんなことを言っている。

「例えば、窓一つない、破れない鉄の部屋があって、その中で熟睡している大勢の人たちは死の悲哀を感じることもなく、眠りのうちにやがて窒息死してしまうとしよう。今君が大声を出してこの中の数人が起きたとしても、その人たちは、ただ苦しんで、不幸にもまもなく窒息死してしまうのだ。君は彼らに対して申し訳ないとは思わないのかい」

それに対して銭玄同は、「だけど、数人でも目を覚ましたのなら、君は、その鉄の部屋を破る希望が絶対にないとは言えんじゃないか」と返したのである。

この一言で魯迅の心がどれだけ動いたかはわからないが、銭玄同、グッジョブである。
君なくして小説家の「魯迅」はいないだろう。

魯迅の小説の主人公の名前にちなんだレストラン「孔乙己」

魯迅が小さい頃食べていたというお菓子

紹興酒入り小籠包

ということで、魯迅の郷里・紹興をゆっくり観光したわたし、
この一年、生命エネルギーが著しく低下したのを実感していたが、心のうちにじわりと、「吶喊」＝熱くなりたいなあ…と思ったのであった。

今はその衝動の形が、また小説を書いてみることなのか、最近彼氏のまさおとうまくいってない娘のベビ子を突如仙台に訪ねることなのか、一体どんな「吶喊」になるのかは分からないけど…。

そう、近年燃え尽き気味のわたしはもう一度だけ、「吶喊」したいのだ！

魯迅は中国でも大人気

そんなことを思って眠りについた昨夜、ひどい悪夢の末に「ベビ子‼️」と夜中に吶喊して、別室で眠る友人・サアヤをビビらせたのである。

どうやら、（詳細は伏せるが）ベビ子を泣かせたまさおにわたしが吶喊する日は近いようだ。
もう日本帰るからな…待ってろよ…まさお…。

END…

ということで、ついにチベットを除いた32省級都市をコンプリート✅

チベットは、日本に帰ってから来月中国の三連休で行くことにしました。

来週末には一旦日本に戻り、東京グルメ情報等ゆるりと書いていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします🙇‍♀️📝

白丸みそこ🐼
ﾍﾟｺﾘ

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