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#66 別れると言えなくなること

昨日、推しの炎上を嘆き、推しを貶める推しの元彼を非難したわたしが、これからキケンな日記を書こうとしている。
確かあの日記の中でわたしは、別れた人のプライバシーを広く世に晒す正当性はないとか、正義を語っていた気がする。

そんなわたしが今ここで不特定多数の読者様に晒そうとしているのが、元夫のネタである。

そう、今日はよほどのよほど書くことがないのだ。
せめて悪意ある印象操作にならないように、事実だけを客観的にお伝えしたい…とは思う。

実はわたしの元夫は昨日まで二週間ほど日本にいた。

で、おかしなことに元夫は、母とわたしが住んでいる埼玉のアパート(3DK)に滞在していたのだ。
さらにおかしなことに、なんとなく居心地が悪いわたしは、山へ行ったり四十にして漫喫に泊まったりプチ家出をして、ほぼわたしの母と元夫が一緒に暮らしていたのである。

まあ、このことは説明すると長くなるので割愛しよう。
カッコつけて今風に言うと、シェアハウス、とでも思ってもらえればよいだろう。
舞台は都内のデザイナーズマンションでなく、埼玉のボロアパートであるが。

で、だ。
わたしのプチ家出により元夫とわたしはほとんど顔を合わせず、会話をしなかったのだが、彼は去り際、わたしに二つのプレゼントを残してくれたのである。

🚪コンコン…

元夫がわたしの部屋のドアをノックして「今日(中国へ)帰る」と話しかけてきた時、わたしは何か嫌な予感がした。

その予感は的中し、
元夫「ベランダにアレあるから、食べて」
というのだ。

それが、コレである。

元夫は大変なケチ節約家で、一度食べてもまた生えてくるものは捨てることなく栽培するのだ。

まあ、ベランダで育ててるのが変なハッパとかじゃないだけよしとしよう…。

しかし、実はわたし、この豆苗が好きではないのである。母も。
それを元夫になかなか言えずにいるのは、我々がもう夫婦ではないからだろう。

積極的に自分の趣味嗜好を相手に伝えようとするのは、きっと、相手に自分のことをよく知ってもらいたいからで、その人と一緒に過ごす時間をさらに快適にするためでもある。
逆に、我々のように一緒に食事をする機会がない関係(住まいはシェアするが、食事は基本別)、たまにしか会わない関係なら、相手に自分の好きなものや嫌いなものを事細かく伝える必要はないのだ。
というか、長く会話すること自体に違和感がある。
いや、それ言うならまず、別れたのに家にやって来ることに違和感ありだが🙄

わたし「わ、わかった…」

断ると微妙な雰囲気になりそうなので、素直に彼が栽培した豆苗を受け取った。
味濃いめで炒めて食べるか…。

それから2時間後。
また元夫がわたしの部屋のドアを叩いた。

元夫「あのさ、もう行くけど、冷蔵庫に大根のつま置いといたから、食べといて」
わたし「え…」

実は、毎度毎度、元夫お決まりの置き土産がこれなのだ。
なぜなら元夫は夜に一人で刺身を食べたあと、残りのつまを翌日、いや、翌々日、翌翌々日でも構わず、味噌汁のような色をした味のないオリジナル健康スープに入れて食べるのだ。

しめ鯖が乗っかってたのとか、衛生的に大丈夫なんかいな…🙄

とにかく彼からすると「もったいない」らしい。

わたし「う、うん…」

角が立たないようにわたしはそう答えた。
本当はこれまで一度も元夫が残していったつまを食べたことはないのだが、去りゆく人に対して「(置き土産を)要らない」と言うのはなんだか酷だ。

…いや、わたしは今日ついにわかったぞ。
元夫とは、親しくする必要はないが、娘ベビ子のこともあるし、わざわざ険悪な関係にはなりたくないのだ。
なんなら、ベビ子の抜け落ちた歯のインプラント代とか、半額出してほしいのだ。

そして我々は法律に縛られない脆い関係だから、強く出たり、機嫌を損ねることをすれば、絶縁もあり得る。
ゆえに、わたしは彼に気を遣っているのである。

そんなわけで、
今日も伝えたいことを、何ひとつ言えなかった…。

一番言いたいのは、
それ「大根のつま」じゃなくて「刺身のつま」だよってことなんだけどね…。

🙄

おわり

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