私なりの「20代で得た知見」
大学3年生の時に猛烈に読んでいた本がある。
その本がFさん著の「20代で得た知見」だ。
当時の私は大失恋中で、何を見ても何を聴いてもぽろぽろと涙が出るような繊細ガールであった。
今思うとそんなに泣くような相手じゃなかったぞ、泣いているあんたも大概なことしているぞ、とツッコミどころ満載なのだが、その時の私にとっては最重要案件で24時間打ちひしがれた恋愛のことで頭がいっぱいだった。
そんな時に支えてくれたのが、「20代で得た知見」だった。
まだ20代も始まったばかり。そんな私にとってこの本は衝撃的で、頭をがんっと殴られるような、そんな内容だった。
小説でもなく、エッセイでもない。日記でもないけど名言集でもない。Fさん独特の語り口で語られる知見は、確実に私の心を支えてくれた。
失恋した心を慰めてもらいに、遠くに離れた友人の家に行く道中の新幹線でも読んでは泣き、寝る前部屋を暗くしてほとんど文字が見えないだろ、って位の暗さでも読んでは泣き...
おそらく私の涙の全部を知っているんじゃないかって位、とにかくこの本と一緒に過ごしていた。
時は経ち、久しぶりにその本を開く。
読んで、「ああ、私はもうこの本がなくても大丈夫になったんだな」と感じた。
それほど自分は大人になったんだな、と思った。
私が得た20代の知見は、「必要でなくなったものに、過去の思い出が詰まっている」ということなのかもしれない。