結局行動力がモノを言う
『北欧こじらせ日記』をご存じだろうか。
フィンランドで寿司職人をめざす人のコミックエッセイ。
私はSNSでなんとなく目にしたことがあった気がするこの本を手に取った。
なんせ「フィンランドで寿司職人」なんてパンチのある言葉、印象的すぎるだろ。
その時私は完全に気分が落ち込む期間に突入していた。この先何をやっても上手くいかないと思っていたし、そう思ってだらだら何も行動できないでいる自分にも嫌悪感があった。
完全にパワーが失われていた。
しかし時間だけはあるもので、「楽しめることを見つけましょう」との助言もあって、なにか本を読んでみようと思って本屋に立ち寄った。
本は好きなので小説でも読もうと思ったがそういえばまだ読み切れてない小説が家にあるしな…と小説コーナーを一瞥してぐるりと店内を回ってみた。
そこで出会ったのが『北欧こじらせ日記』。
「フィンランドで寿司職人」という言葉とかわいらしいイラストに惹かれ気づいたら購入していた。
あっという間に読んでしまった。パワーがないときでもコミックエッセイはとても読みやすい。
そして急にパワーが沸いてきた。
なにかしたい。
なにかわからないけど、なにかすることが今後を変える気がする。
でも、もしかしたらそんなに焦らなくてもいいかもしれない。
ゆっくりでも、いずれなにかが見つかるかもしれない。
そんな漠然とした希望が芽生えた。
そもそも私がなぜ今後の人生うまくいかないと思い込んでいるのか、全く冷静じゃない状況で努めて冷静になって考えてみると、「世の中は悪意に満ちあふれている」と思っていることが原因なのではないかと思った。とはいえ別に人間関係で何かあったとか上司からパワハラを受けていたとかいじめられたとかそういうことはなかった。じゃあどうしてこの考えに至ったのかというと多分ネットの見過ぎ。私はネットが好き、というか暇さえあればネットサーフィン、SNS、という生活を送っている。まあこの原因も考えれば「暇」ということなのかもしれない。とにかく、わかっていたとしてもネットは本当か嘘かわからない情報に溢れているわけで、そんな中で私は悪い情報の方ばかりに目が行ってしまうのだ。悪い情報ばかりを信じて世の中を疑い、勝手に不安になっている。世の中いい人なんていなくて、悪意が基盤にある。そう信じていた。だから何か行動を起こそうとしても先にネットで調べては悪いことばかり信じて結局行動に移せず、そんな自分が嫌でまた暇になってネットサーフィンしてやってみようと思うことを見つけては調べて深掘りして自信なくして行動できず……このくりかえし。
『北欧こじらせ日記』は作者であるチカさん本人の実際にあった物語。
幼少期からフィンランドに興味を持ち、大学で初めてフィンランドへ旅行に。そこから北欧にドはまりし、いつかフィンランドに住みたいと思いながらも就職、転職、転勤、様々な事があり、フィンランドに住むために寿司職人を目指す。といったお話。ざっくりいうとこんな感じなのだが、私はこのお話の中のチカさんの小さな行動力の積み重ねが結果的に「フィンランドで寿司職人」という夢を見つけ叶えたことに繋がるのだと感じ感動した。
とにかくチカさんは行動力が段違い。
なんでもやってみようと思い立ったらすぐに行動に移すし、自ら色んな人と出会う努力をしている。いや、努力というか性なのかもしれない。
そういう人が夢を見つけて夢を叶えるのか…と。
でも、正直チカさんはめちゃくちゃ難しいことを血のにじむような努力でやってのけたというタイプではない。一つ一つ好奇心に任せて動いてたら夢を見つけて、もちろんそれに対して目標を見つけたら努力する。しかしそれも楽しみながら。
夢を持つ人って強いな。
でもだから、もしかしたら私も同じようになれるのかもしれない、とそう思わせてくれたのだ。
チカさんと今の私の違いは行動力。
しかし行動力は才能ではないと思う。興味を持ったものに対して素直に心の赴くままにやりたいことをやれば良いだけ。準備も大事だけど、過剰な準備が「恐れ」に変わらないうちに。
私でもやろうと思えばできそう。
私は「もう25だし…」と思うことが最近多かった。でもチカさんを見て少し変わった。チカさんも寿司職人になるまでは遠回りをした。でもそれは無駄なことではなかったし、なによりチカさんは自分の一見遠回りだとも思えるような人生でも自分で肯定し、着実に前に進んでいる。なによりも自分が自分の一番の味方であることが彼女の強みだと思う。
人生は夢を持ったら強い。
夢を見つけるのも目標を叶えるのも全ては小さな好奇心から生まれる行動力からなのかもしれない。行動力は才能じゃない。
チカさんは作中とてもいい人達との出会いがあったが、実際はそんなに上手くいくものじゃない。チカさんだってそうだったかもしれない。それでも、行動することで出会う人の分母を増やすことは大事だ。
きっと世の中はそんなに悪意に満ちているわけじゃない。
そう信じるために、行動を。
ほっこりするエピソードとイラストから
強い女性に勇気をもらった。