【往復書簡企画】俺を形作る音楽〜往復書簡〜
前略
貴方は今、どんな音楽に耳を傾けているだろうか。
今日は、少し私のことを君に聞いてもらいたくて、筆をとっている。多分に面白みもないこともあろうが、どうか聞いてもらいたい。
私は、今この年齢に至るまで、さまざまな音楽と巡り合ってきた。しかし、その中でも私を形作るものとして外せない音楽がある。
SPITZというバンドを知っているだろうか。
もし君がこのバンドを知らないのなら、ぜひ一度だけでも耳にしてみてほしい。また、よく見知っているというのならば、ぜひ私とその音楽について語り合う時間を作ってほしいのだ。
さて、ここからは長い話になると思う。だから、今日の手紙ではそのほんの一部の状態で君に送りつけることを容赦してほしい。
君に早く伝えたくて矢も盾もたまらないのだ。
SPITZが、初めて世に現れたデビューアルバム。その名も『スピッツ』というアルバムがある。
実は、私がSPITZと出会ったのは、彼らがすでに6枚目のアルバム『ハチミツ』をリリースしてしばらく後。当時は、CDのレンタルが主流で、私もレンタルショップから借りてきては、カセットテープやMDにダビングをしていたものだ。
ところが、その時分このファーストアルバムは、私のいくレンタルショップにおいておらず、しばらく恋焦がれる存在であった。
その後とあるきっかけで、やっと手に入れて聞くことができたときの喜びといったらなかったのだが、残念ながら、面に傷がついていて、音飛びがあるようなそんな出会いだった。
それでもやっと、聞くことのできたこのアルバム。12の曲が収められている。
デビューシングルである「ヒバリのこころ」セカンドである「夏の魔物」など、名曲が収められているのだが、中でもたった一曲だけを君に紹介しておこうと思う。
うめぼし
うめぼしたべたい
うめぼしたべたい僕は今すぐ君に会いたい
とっても寂しい
とっても寂しい僕は今すぐ君に会いたい
私は、この楽曲に衝撃を受けた。6枚目から聴き始めている私にとって、このアルバムはまだ荒削りなスピッツを知ることができる楽曲なのだが、これほどまでに切々とうめぼしを歌いあげるバンドがあっただろうか。
これこそが、スピッツの唯一無二の存在感を示す楽曲として、1st.で必ず聞いてほしい曲である。
ちなみに、後に、これもまた私の敬愛してやまない奥田民生が、この「うめぼし」をカバーしている。民生の声質で聞く「うめぼし」はマサムネのそれとは、同じ楽曲でありながら、全く印象が異なる。
マサムネの梅干しがほんのり甘みを感じさせるハチミツ梅だとすれば、民生のそれは、ガツンと塩味の効いた感じであろうか。聴き比べてみるのも一興である。
長々と、私の1人語りにお付き合いありがとう。君とスピッツの楽曲について語り合える日が来ることを期待し、筆を置きたいと思う。
草々
令和2年12月1日 白
【追記】
お手紙を返信くださった方々