断末魔に除夜の鐘【お題:十二月#シロクマ文芸部】
十二月は、わが国では「師走(しはす)」と呼ばれてきた。語源については平安時代にはすでに分からなくなっていたそうだが、ひとつの説がある。
春夏秋冬と季節が巡り、四季が果てる月であることから四極(しはつ)月。「しはつ」が「しはす」と移り変わり、「師走」というのは当て字という説である。
いつの時代まで遡ればよいか不明だが、その昔、いよいよ年を跨ごうとする今際の際、四季の断末魔の叫びが響き渡っていたそうだ。それは得も言われぬ怖ろしさで、狂い死ぬ者もおり、人心を大いに乱していた。
このままでは安寧な新年を迎え入れることができないと、全国に鐘楼が建てられて鐘が撞かれるようになった。四季の鎮魂と断末魔の叫びを掻き消すためである。その数、百八つ。
了
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サムネイルは「ぱくたそ」さんのフリー素材を使わせていただきました。
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