釈然としないものがある。【お題:助手席の異世界転生#毎週ショートショートnote】
助手席に座る者には、運転者が眠くならないように会話をしたり、目的地をナビゲートしたりする役割がある。
しかし、お隣は全く喋らない。というか喋れない。むしろ、たまに鳴く。その代わりというかナビゲーションは完璧にこなす。
僕は、渡り鳥を助手席に乗せて北に向かっている。
この異世界では、空飛ぶクルマの技術革新が飛躍的に進んでおり、航続距離が段違いに長い。何かの偶然でその便利さを知った渡り鳥たちは、自分で飛ぶのを辞めて空飛ぶクルマに乗るようになった。
ちゃんと料金は払ってくれる。彼らは自分の羽毛を織り込んだダウンジャケット等をリターンにして、クラウドファンディングでお金を集めている。
今、「楽だわー。」と鳴いた。これだけは鳴き声の意味が分かるようになった。
目的地に着き、渡り鳥が助手席のドアを開けて湖へ入っていく姿がTVカメラに収められている。夕方のニュースで放送されるようだが、この世界の人々は何を思うのだろうか。
了(410文字)
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サムネイルは「ぱくたそ」さんのフリー素材を使わせていただきました。