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(創作)神社に間借りの甘味処~こーんすぅぷ

「すいません、僕、餡子が駄目なんで…」
床几にあおむけになったまま、青年は言った。

ここは、大坂(おおざか)の中腹にある、戦国時代以前から続く神社の中にある甘味処。
名前は「のぼる」
オス猫を退けて、一番にてっぺんまで木を駆け上がることから、勇ましい名前をもらったメス猫にちなむ。

「すいません、ちょっと休ませてもらえませんか?」
体を支えてくれている友人の言葉が終わらないうちに、青年はぐにゃりと床几の上にくず折れた。

「なんやねん、せっかく出してくれはったのにー」
青年が横たわる床几の隅に腰をかけ、水うちわで友を扇ぎながら、元気な方の青年はおはぎを口に放り込む。
参拝や散歩のついでにちょいと頬張れるよう、「のぼる」のおはぎは小さめに作ってある。
「せやかて、子供のころから苦手やねんもん…」
曲げた腕で額を押さえながら、床几の上の青年が力なく言い返す。
「それに今は、おはぎやのーても入らんわ…」
倒れた青年はどうやら熱中症のようだったが、横になっていて少し回復したようだった。顔から異常な赤みが消えている。
「けど、そんなん言うて、お前、昨日からなんも食うてへんやんけ。
暑さプラス、腹減ってんねんて。」
なんか食わんとー、ムリやー。 
食わんと死ぬぞー、今食うたら逆に死ぬわ!

本当にこの町の人間というのは、具合が悪くてもなんだかやりとりが漫才じみている、とほくそ笑む。
たっぷり実がついているものの、お客様用には出さなかったトウモロコシの先っぽと根元が目に入る。そうだ!

芯から包丁で身をこそげ、ミキサーで細かく粉砕する。
シイタケの戻し汁を火にかけて、トウモロコシのペーストを加え、
沸騰しないように気を付けて、木杓子で混ぜながら馴染んだところで塩一つまみ。最後に吉野葛でとろみをつけたら、夏バテ青年も食べられるトウモロコシのすりながしの完成!

「おばちゃん、めっちゃ美味しいです!」
顔色の戻った青年が声を上げる。水うちわの青年が切り返す。
「おねーちゃんや!」
いや、申し訳ない、おばちゃんでいいです・・・
ほんまにもう、この町の子ぉらは面白い。面白いなぁ。

本日、特別メニュー、こーんすぅぷがございます。
参拝、お散歩の折にお寄りいただきまして、是非ご賞味くださいませ。



タイトルには、yomingさんの”ぷくりいぬ”のイラストをお借りしました!ありがとうございます♪







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