娘の小学校入学をきっかけにハンドメイドの楽しさを知る
■小学校の入学説明会で絶句
(失敗した…!)
受験して入学させた娘の小学校の入学説明会のとき、私は心の中で叫んだ。
入学説明会で渡された資料に、体操服袋、くつ袋、移動教室用袋、防災頭巾用袋など、8種類の袋を準備せよと書かれていた。そこまではよくある話だ。
だが、普通の学校と違っていたのは、袋のそれぞれの寸法が細かく指定され、かつキャラものはNGだと明記されていたことだった。つまり、こんなピンポイントな商品は市販されていないため、自分で作らなければならないということを意味していた。
保守的で母親の出番が多い小学校であるとお受験用の塾で聞いていたが、まさかここまでだったとは…!
私は、入学前の時点で、小学校選びを激しく後悔した。
■わたしとミシン
袋のサイズや種類の多さからして手縫いではとても無理そうだったため、ミシンを使用する必要があった。
ミシンを使ったのは、小学校の家庭科の授業が最後、30年以上前の遠い記憶だ。
当時のミシンの思い出を振り返ってみると、すぐに下糸が絡まり、縫っている時間よりも下糸の絡まりを解消したり調整したりする時間の方がずっと長かった。
あえて下品な言葉を使わせてもらうなら「ミシンなんてクソ…!」というのが正直な印象だった。
しかし、背に腹は代えられないため、有名メーカーの一番シンプルなタイプのミシンを購入した。
ミシンの使い方や巾着・バッグの作り方はyoutubeで公開されている動画を参考にした。慣れない作業に四苦八苦しながら作業を進めている途中で、利き手を骨折するという不運が重なったこともあり、文字通り泣きながら作った。
幸い、かつて家庭科の授業で使っていたミシンと違い、自動で糸の張り具合を調整してくれる機能があり、下糸が絡まることはほとんどなかった。30年という月日のうちにミシンが進歩していたことに感謝した。
なんとか3月半ばに必要な学用品袋をすべて作り終え、入学式の日を迎えることができた。
■自分で作ることの意味
入学後、同級生のママたちに話を聞いてみると、学用品の袋を自分の母や義理の母に作ってもらった、業者にお金を払って作ってもらった…という話がゴロゴロでてきた。
(私の努力は無駄だったのか?)
と思ったが、それは違うとすぐにわかった。毎年小学校で行われるバザーで、手芸品を出品しなければならないことがわかったからである。
風の噂で、バザーで出品する手芸品を作ってくれる業者がいると聞き、心が揺らいだ。
だが、せっかくミシンを買って技術を身に着けたのだから、バザーに出品するものも自分で作ろうと奮い立ち、仕事の合間をぬってせっせと作った。
やはりできるようになれば楽しいものである。何より、既製品とは違い、自分だけのオリジナルのデザインのものを生み出せることがうれしかった。
次第に、自身のオタク趣味も相まって、大好きなアニメであるTIGER&BUNNYの公式グッズをリメイクして着物の帯を作ったり、TIGER&BUNNYの世界観をイメージしたポーチや和装小物を自作したりするようになった。
娘の入学前は、ミシンを使ってハンドメイドなんてしようとも思わなかったのに、4年後の今はハンドメイドが生きがいの一つになっているのだから驚きだ。
しかも、私のもう一つの趣味である着物用の小物を自作したりリメイクしたりすることで表現の幅が広がり、既製品を着るだけよりも楽しいという、うれしい誤算もあった。
■もしも違う小学校に入学させていたら
もしも娘を違う小学校に入学させていたら、ミシンを買うことはおろか、ハンドメイドを楽しむことを知らないままでいたと思う。大損である。
肝心の娘自身も、のんびりとした校風が合っているようで毎日楽しそうに学校に通っているようだ。学校から帰るとお友達との楽しい出来事を聞かせてくれるので親としてもホッとしている。
完全に結果オーライではあるが、親子ともに幸せな学校選びをしたのだと今なら胸を張って言える。