福山で心安らいだ『ROHTA BAR』(全国バー行脚⑧広島)
広島県は福山市。初めて訪れた土地でやや長尺の仕事を終え、取材先との懇談も終了。さて、ひとりの時間となりました。この日はやけに疲れていたし、苛立ちも少々。そんな私が「福山に来てよかった!」と思えたのは、『ROHTA BAR(ロータバー)』のおかげです。
■通いたくなる『ロータバー』
広島市には何度か行っていますが、福山は2020年に一度きり。店名の書かれたマットから上へと伸びる階段を行きます。地下へ潜るバーもいいですが、登る一歩にも気持ちが高まりますね。
店内、長くて幅のあるカウンターが伸びた、非常に美しいオーセンティックバーでした。バーテンダーのYさんは朗らかで、入店してすぐ「これは当たりだ。いい店だ」と確信。ジントニックを飲んでいる間に気分が落ち着きます。空気感は「柔らかくて優しい」。バックバーを見ていても、お酒を飲んでいても、会話をしていても気持ちがいいのです。
私の文章力では表現するのが難しいのですが、なんというか、遠くで流れている川を、ベランダから、ぼーっと眺めているような緩やかさ。それがロータバー。近くにあったら通いたいです。
そんな気分でぼんやりバックバーを見ていると、一本のボトルが目に留まりました。どこかで見た名前が入っています。出してもらうと「鴻」の一字。前回「バー行脚⑦」で書いた徳島のバー「鴻(こうの)」と同じ文字でした。
聞くと、鴻さんの20周年記念ボトルとのこと。ロータバーをオープンする際に、鴻のバーテンダーKさんに手伝いに来てもらったそうです。良いバー同士、繋がりがあるものですね。
すっかり愉快な気持ちになり、翌日はYさんに勧められたハッサクゼリーを買って帰りました。
■『あき乃』『バトラー』『シャトレーヌ』
福山ではこの前日の夜、『あき乃 城見別邸』にも行きました。築60年の古民家を改築した町家風バーで、靴を脱いで入店します。聞くと、あき乃グループとして、コンセプトの違うバーを福山で4店舗展開しているということでした。
町家バーといえば京都ですが、広島で味わうのも乙なもの。店内から中庭が見えて落ち着きます。雰囲気よし。「モルトの三種セット」などを展開していましたので、いただきました。
看板メニューとも言える「クレミアカクテル」は、残念ながら材料切れでこの日は飲めず。デザートカクテルはほとんど飲まない私ですが、次の機会があれば飲んでみたいですね。
また、やや街外れに佇む、照明暗めで小ぶりのバー『バトラー』もお勧めです。店の造りも、お酒の味も非常に「実直」なイメージ。バーテンダーさんも寡黙で、宿泊したホテル「ニューキャッスル」の地下にある『シャトレーヌ』のお話好きなバーテンダーHさんとは対称的でした。私はどっちも好きです。気分次第で使い分けもできそうで、「福山よいじゃないの」と思った出張でした。
■広島市、夫婦で切り盛り『カンティーク』
せっかくなので、広島市内のバーについても一軒。2018年に、バーテンダーの全国大会の見学で広島を訪れた際に入った『カンティーク』です。
店内、足元が見えないくらいに照明を落としています。カウンター7席とふたり掛けのテーブルがひとつ。ご夫婦で店を切り盛りしていて、ご婦人は着物でした。両者とも親しみやすく、出してくれたフルーツが目の覚めるような美味しさ。
なぜここでフルーツを使ったカクテルを頼まなかったのか…後悔してます。隠れた名店でしょう(隠れてないかもしれませんけど)。
広島市内にも、絶対良きバーがたくさんあるよなあ、いいなあ、もっと行きたいなあと思いながら、終わります。(了)