綺羅星の如きオリジナルカクテルに酔う『セベク』(全国バー行脚⑱福岡)
前回の鹿児島から南が続きます。福岡は年に一度行くかどうかの土地。2023年には高校バスケの大会を見に飯塚市に行き、今年24年は仕事で博多に行きました。
観光客らしく中洲の屋台で食べ、そこからほど近くの路地にあるバー『SEBEK(セベク)』に入店です。
■「瑞花」「ディープスモーク」
セベクはカウンター6席に4〜6人掛けのボックス1つ。アンティークな飾り付けが良い雰囲気で、一つひとつの小物が個性的です。
カウンター席に座った瞬間、良い店だなーと思いました。なんなんでしょうね、この感覚。不思議なアンテナ。外れることはあまりありません。
オーナーバーテンダーは女性のOさん。21年のサントリーカクテルアワード受賞者です。アワードカクテルはこちら。ネーミングは「瑞花(ズイカ)」。ジンベースで抹茶のリキュールや蜂蜜を使っています。表面に乗せている花のようなデザインは、大豆のソイシート。なんとも鮮やか。甘く、優しく、爽やかな味わいでした。
他にもたくさんのオリジナルカクテルがあって面白い。その中から迷いつつ選び、一発で気に入ってしまったのが「ディープスモーク」です。アイラウイスキーのキルホーマンに、カンパリとコーヒーを使用。どんな味なのかしらと、わくわくして飲むと、苦味と甘味のコントラストが素晴らしい。見た目も赤味がかった黒が綺麗です。
ちなみに、使われているこの氷、六角形なのがわかるでしょうか。聞くとOさん「蜂への愛ゆえに」とのこと。蜂の巣の六角形なんですね。なんと日本ミツバチを家で育てているそうです。
メニューブックには、その日本ミツバチの蜜蝋を使ったカクテルもありました。紹介しきれませんが、とにかくさまざまなオリジナルカクテルがあるのがセベクの特徴。ここでしか出会えないカクテルを飲むことで、お店を思い出して欲しいとのことです。
こじんまりとした空間に広がるカクテルの渦は、綺羅星のように無限大。時間を忘れてその渦に飲まれる夜ー。セベクはそんなバーでした。
■博多の代表的バー『オスカー』
さて、実は博多に泊まる際によく伺うバーがあります。私の感覚では、博多で一番有名なんじゃないでしょうか。赤坂駅の近く、ビルの6階にある『Oscar(オスカー)』です。
カウンター10席くらい、テーブルは4人掛けが3卓、6人掛け1卓。カウンター席に座って上を見上げると天井が高くて気持ちが良い。バックバーに奪われがちな視線を一度は上に上げてみましょう。
オーナーバーテンダーのNさんは、バー業界の大物のお一人。とても物腰柔らかです。バー行脚⑭で書いた『シェイク』のKさんと共に、ハードシェイクで有名なバーテンダーUさんの系譜を継ぐ方です。
お店の名前を冠したオリジナルカクテル、言わば「オスカーシリーズ」がNo.7まであります。ただし、No.1とNo.3は、メインの材料が終売のため、事実上、幻のカクテルになっているとのこと。
今回、No.2とNo.4をいだだきました。写真はNo.4。ウォッカに、アプリコットやパンペルムーゼなどを使っています。
そうそう、美味しくて水割りをおかわりしてしまったこちらのウイスキー「コンパスボックス」も上げておきます。ボトラーズですね。ずっと飲める奴です。
福岡のオーセンティックバーと言えばオスカー。間違いのない選択肢だと思います。
■気分が上がる『屋台バーえびちゃん』
もう一軒、どうしても触れたいのが『屋台BARえびちゃん』です。文字通り、屋台のバー。中洲ではなく天神エリアの端の方に出しています。屋台です。でも完全なバーです。
伺った際、接客しているのは男性と女性一名ずつのおふたりでした。女性の方は、完全にオーセンティックバーの正装です。
おやっと思ったのは、氷なしハイボールを出していたこと。店内の張り紙に「銀座ロックフィッシュスタイル」と書いてあります。
ちょうど先ほども触れた、バー行脚⑭で書いたロックフィッシュさんのことですね。何か繋がりがあるのでしょう。詳しくお聞きできませんでしたが、ついつい注文してしまいました。そして屋台らしく、つまみにおでんです。たまらん。
ほかに、エスプレッソを使ったカクテルを堪能。周りを見ると、豪勢なフルーツカクテルも飲まれています。
繰り返しますが、ここは屋台。でも出すお酒は本格派のバー。気分を盛り上げてくれる、博多でぜひ行きたいバーです。(了)