【二次創作】文秀と灘【新暗行御史】
(2008年9月5日、個人サイトより再掲)
煙草
口元を、長い指がかすめた。
くわえたばかりの煙草が、唇から離れていく。
「おまえ……」
「最後の一本、部下に取られちまったんですよ」
文句を言おうとして、その横顔に目を走らせたとたん、なにも言えなくなった。
息絶える仲間に、最後の一服を。戦場ではよくある光景だ。
今、眼前に広がる凄惨な景色の中にも、うんざりするくらい転がっているだろう。
「……………」
煙草をゆくらせる灘は、さまざまな感情を押し殺して苦笑を浮かべている。
文