【シン・ウルトラマン】それは強く応えてくれるのだ【ネタバレ感想】
ウルトラマンをよく知らない人間が、シン・ウルトラマンを観た感想をまとまりもなくただダラダラと書き連ねてます。
前日譚はこちら。
先日、ようやくシン・ウルトラマンを観てきた。
私が観たいと言い出すとは思わなかったらしい夫は予期せぬ2回目の機会にいつもよりテンションが高めだった。今から映画を観に行くというのに、映画の内容を言いそうになっていたり、わざわざM八七を流してみたりと行動が可愛かった。惚気だ。
それはさておき、ウルトラマンを観にきたのに初っ端ゴジラの映像が流れた瞬間は戸惑った。
いや、ゴメスがゴジラをいじって作られたという話があることは夫から聞いていたのだが、そこまでやるのかという戸惑いだった。きっと初代ウルトラマンから追いかけている人にとっては興奮するところなんだろうけれど。
その後に続く「禍特対」結成までのあらすじの様な「禍威獣」紹介を眺めながら、物語の中のこととはいえ、よく対応して倒したものだなあと何故か感心してしまった。特撮ならではのスーツ(着ぐるみ?)ではなくフルCGだったのがそう思わせたのかもしれない。
しかしあれだけの肉塊と化した禍威獣、どうやって処理をしたのだろう……食べたりしたのかな?めちゃくちゃ筋っぽそうだし皮を剥ぐのも大変そうだけれど……そもそも美味しいのか?
それから冒頭で主人公含む禍特対のメンバーが紹介されたが、あまりにも一人ひとりの紹介が早すぎて名前がわからないまま進んでしまったのが悲しかった。文字を読ませてくれ。
とりあえず主人公の名前は神永だというのは夫から聞いていたし、そもそも斎藤工が演じているということも知っていたので他は観ながら覚えていけばいいかと切り替えた。
しかしこの神永、最初から行動がおかしい。
避難が遅れた子どもを見つけたのはすごいことだし、それを救助しに行くことは素晴らしいことだけど、一人で行くか、普通……
周りに自衛隊員何人もいるじゃないか。4人ほど付いてきて貰えば良かったのに。まあ、最後まで観たら自衛隊員も神永にとって「守るべき人間」だったのかなとは思うけれども。
そういえば禍特対の他メンバー、神永が行ってくると言った時に反対するどころかよろしく〜!って感じだったけど、あれってやっぱり神永が普段からこういう行動とる人物だったということなんだろうか。それとも個人行動を取りやすい様にそういう人間を演じてきたとか?考えれば考えるほど神永という人物像が定まらなくなってくる。
神永の人間性はともかく、その行動で救助対象の子どもは助かっているし、外星人1号もといウルトラマンの気を引くことができたのだから結果オーライである。
神永は死んだ(?)けれど。
ウルトラマンのボコボコフェイス、タイプAって言うんですね。初代ウルトラマン撮影時まだ特撮技術が確立していなくて、スーツを作るのも手探りな上でああなったと(夫が力説してた)。努力がそのままCGでも反映されてるってオタクが好きなやつ……ウルトラマン知らない私も好きだ。
ウルトラマンが裸なのかどうかに関しては私も気になってる。あれはスーツなの?もしそうならどこからどこまで?
ガボラ戦で体に赤ラインが入ったことを見るに、丸裸ではないけれどスーツでもないと言ったところなんだろうか。in神永のウルトラマン、ちょっと気にしてたのかな。人間は服を着ているし、裸じゃないよのアピールなのか。
ウルトラマンが中に入っているからとはいえ、禍特対メンバーはそれを知らないのに神永の奇行に違和感はあっても指摘しないあたり、やはり神永は奇人だったのかもしれない疑惑が深まっていく。
途中で抜け出しても追求されないし、誰も彼を探しに行こうともしないし。専門性高いメンバーがとりあえず集められたと言う形でお互いの行動にはノータッチという可能性もあるけど。
ネロンガ戦で特別苦戦している様にも見えなかったウルトラマンが、今回のガボラ戦で苦戦している様に見えたのは周囲を気にしながらの戦闘だったからと解釈してもいいのだろうか。
ウルトラマン自身が気にしていたのか、実は意識として残っているのかもしれない神永がそうさせたのか。山をいくつも越えて焼却してしまう光線を使わなかったのも何か思うことがあったのか。
ドリルを必死に避けるウルトラマンの顔がすべすべしてた(これはBタイプというのだとまたもや夫に教えてもらった)ことが少し気になった。体のライン変えたのと合わせてパックでもしてきたのかもしれない。
目の形とか諸々私はこの顔好きだな。
でも戦闘の後、みんなと合流する時にぎこちない笑みで手を振ってる神永は不気味だったけれど。
不気味といえば、神永(の中に入っているウルトラマン)の知識収集の方法に気持ち悪さが際立つ。本を読むというより、ページを記憶するといった形の読書の仕方に人間では無い感じが滲み出てる。
くどいようだけど、何故禍特対のメンバーは神永の奇行にツッコミを入れないのだろう。
私自身がツッコむタイプなので観ていてソワソワしてしまった。公安は大変ね〜くらいの認識なのだろうか。
ザラブ星人の登場については随分わかりやすい敵が出てきたなと思ってしまった。とりあえず声がいい。
明らかにヤバい一方的な条約を結んでしまったところに、視聴者で傍観者な私はイラッとしてしまったが、よくよく考えると自分達の想像を遥かに超える能力(結局のところこの後に出てくるメフィラスや光の星には到底敵わないのだけれど)を備えた相手に対等な条約を結べるわけがない。黒船来航みたいなもんだ。
ヤバいとはわかっていても、とりあえず政治的に渡り合うつもりはありますよと見せるためのパフォーマンスだったのかもしれない。いや、考えなしの可能性だって無きにしも非ず。
神永、というかウルトラマンに接触して来たザラブはいかにもな行動をするけれど、どうせウルトラマンにやられちゃうんだろうなと心のどこかで思ってしまってあまり緊迫感はなかった。
正直、ザラブ星人戦で一番凄いなと思ったのは神永の元同僚である。信じられるのはアナログだけって、そういえばキングスマンでも言ってたな……(敵が)
身一つでデジタル潜入できるザラブ星人対策としては理にかなってる。
ザラブ星人の造形が表側の皮一枚みたいな感じだったのは、模倣とかそういう意味では「お面」みたいでとてもよかった。
夫曰く、当時は再現できなくて背中側もあったらしいけど、こうして現代技術でデザインの再現がちゃんとできるのは素晴らしいことだ。
ちなみに偽ウルトラマンの造形は意図的にそうしているのだろうけれど、あまりにも不細工で受け付けられなかった。目の大きさだけであんなに印象が違うなんて思いもしなかった。
ちょっとした危機に陥りつつも、主に浅見のおかげでちゃんと変身して戦えたのは、ウルトラマンがちゃんと禍特対のメンバーを信頼し始めたからだと思ってもいいのだろうか。
正直、最初から強引にでもウルトラマンがザラブ星人を捻り潰すことは可能だったと思うし。
もしかしたら国のトップにいる人間(政治家)の動きを観察していただけかもしれないけれど。
ザラブが黒船来航のペリーなら、メフィラスは火縄銃を携えてやってきた宣教師のようだと思ってしまった。
外星人0号を名乗る彼は物腰柔らかに見せて強かだ。
準備が整うまで潜伏する余裕を持ち合わせているし、自分の交渉を上手く運ぶために他の誰か(今回の場合はザラブ)が失敗するのを待っていたような気がする。
それでも足らないからと浅見を巨大化させて周りに技術を見せびらかし、(多分この世界ではトップの能力を持つ)滝を無力化させている。
ここまで徹底的にやっておいて、それでも彼らに一定の敬意を払っているあたり「友好的」であることは間違いない。まあ、未来の「大事な商品」であるからだろうけれど。
自分から戦いを挑むわけでもなく淡々と業務をこなし、いよいよ本格的に邪魔をされるとなった段階でようやく重たい腰を上げるところが、どこか人間臭いキャラクターだった。
潜伏しすぎて俗世に染まってしまったのかもしれないなと思うとなかなか可愛げがあるような気もする(いや、無いな)。
対ウルトラマンだけなら地球を手に入れるために頑張りを見せかけたのに、招かれざる客といったイレギュラーが発生した瞬間にあっさりと地球に見切りをつけたところはビジネスマンといった感じだった。
どこまでいっても地球と人間を商品として見ていたのだなあというのがわかって好感である。
ところで浅見くんよ、動画が消されても人々の記憶に残ってる時点で復帰は無理だと思うぞ。あと尻を叩きすぎだ。
招かれざる客はウルトラマンと同じ姿形をした外星人ゾーフィ。彼の口からリピアという名前出てきて、ウルトラマンにも名前があったのねと思ってしまった。そりゃあるか、ウルトラマンにも故郷があれば同族もいるだろうよ。
人間との融合は禁じられてるというゾーフィに、神永を理解したかったというリピアは異端児なのかもしれない。
融合と言いながら神永の遺体らしきものが横たわっていることに疑問あるけれど(後に霧散していたので幻の可能性はある)。
リピアにとって禍威獣が出たから派遣されたにすぎない星に、彼が留まる理由を作ったのが神永の「圧倒的な力の前で怯むことなく自分より小さな命を守る」行動だったのだと思うと感慨深い。
ウルトラマンを「地球の平和を守ってくれる存在」たらしめたのはリピアが持ち合わせていた正義ではなくちっぽけな人間・神永だったのだ。
それはそうとして、掟だからとゼットンを起動させたゾーフィくんよ……いや、もしかしたら神永と融合する前のリピアもそういう人物だったのかもしれないけれど(容赦なくスペシウム光線ぶっ放すあたり)。
リピアは勝てる見込みがほぼないゼットンに向かっていく。メフィラスによって自信喪失して自暴自棄になっていた滝に「お前にならできるだろ」と希望というよりもむしろ暴力的な期待を押し付けてまで。
結果的に地球は守られたけれど、リピアは飲み込まれてしまった。
飲み込まれた先でゾーフィと語ることになるけれど、そこで語る内容がじわじわと胸に刺さる。
「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」
リピアという名前を知っていながら、人間につけられた固有名詞をわざわざ使ってリピアに問いかけたところに、ゾーフィの感心まじりの苦笑が見えた気がした。
ゾーフィの語りからするに、光の星に住まう住人たちは「宇宙の平和」を守ることが第一優先で、それに伴う星一つの消滅などは止むを得ない(あるいは気にかけるまでもない)犠牲なのだろう。
だというのに、地球に、そして人間に固執してとにかく守りたがるリピアにゾーフィはそう問いかけるしかなかったのだ。
もしかしたら、ウルトラマンがいたという事実と、その心を知っている神永がいるから大丈夫だと言い切るリピアに羨ましさもあったのかもしれない。
結局リピアはゾーフィの提案に首を横に振り、自分の命を神永に預け、さらには自分の体を地球に残す決断をした。
βカプセルは人間の手元には無いので、この先神永がウルトラマンに変身する可能性は低いかもしれないが、滝がいるので皆無というわけでは無いのだろう。
今はちっぽけな存在でも、やがて災禍に対応する力を手に入れるだろうと信じたリピアに、神永は報いてくれるのだろうか。
米津玄師のM八七
最後に浅見から複雑な表情で「おかえりなさい」と言われたのはリピアが混ざっていない神永なのだろうなと視聴者側に考えさせる演技だと思った。
ウルトラマンに対して「行ってらっしゃい」と言った浅見からすれば、「神永だけが帰ってきた」ということに少し戸惑いと悲しみがあるだろうから(長澤まさみの表情の演技は毎年上手くなっている気がする)。
なんとなく、そのあと「ただいま」で終わる気がしていたのにレスポンスの代わりに突如として流れ出した主題歌に、なぜか涙腺が決壊した。
いや、本当に謎だった。
悲しくもない、なんならスッキリしているはずなのに「遥か空の星がひどく輝いて見えたから」のワンフレーズでダメだった。
なんなら映画を観に行くまで夫に散々この曲を聞かされていたので歌詞なんてほとんど覚えていたし、特に心揺さぶられることもなかったのに、映画の後に聞いたらこんなに攻撃力があるなんて。
この曲、一体誰目線なのだろう。
ウルトラマン(リピア)?神永?ただこの物語を俯瞰する神の視点?夫曰く「昔からウルトラマンを見てきたあの頃の僕たち」?
どれも正解なんだろうな。
私の一個人の感想としては、リピアが入っている神永なのかなーといったところ。
神永は元警視庁警備局公安課所属。同僚はいても現場では孤独だった可能性は高いし、身辺整理がしっかりしていたとしたら私生活も孤独だったかもしれない。リピアも派遣された先では孤独に戦っている。一つの体に二つの意識があるのは、初めて互いに「孤独ではない」状態だったのではないかなと勝手に妄想を膨らませてしまう……
なんなんだこのM八七っつー曲は……感情が揺さぶられるのに理解が追いつかない……
ところで、M87というのはわざとらしい。
そもそもウルトラマンの故郷は企画書でM87だったのに脚本の誤植でM78になったとかなんとか。
そんな経緯があったにしても、ずっとM78という設定できていたのに、曲のタイトルに初期設定のM87という名前が持ってこられたこと。
本編中幾度となく「マルチバース」という言葉が出てきたこと。
「光の星」としか言及されなかったことからみるに、このシン・ウルトラマンの世界においてウルトラマンの故郷はM87なのかもしれない。
M87から来た、ウルトラマン。
M78のウルトラマンを知らない私にとって、ウルトラマンはM87のリピアになったのである。
蛇足
リピアはヒメイワダレソウの別名なのだが、この花の花言葉が「誠実」「絆」「私のことを思ってください」なのである。
その上でM八七の
いまに枯れる花が最後に僕へと語りかけた
「姿見えなくとも遥か先で見守ってる」と
という歌詞の一節がじわじわくる。
どこまで心を揺さぶってくるつもりなんだこの曲は。
……続編待ってます。
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