アイドル 【散文詩】
◯月某日、久しぶりに出演する番組のリハーサル、可愛く笑って間違えずに踊れるか不安、本番になって、司会者の奴が紹介したアイドル名が間違っていることも指摘できずに愛想笑い、みんなー愛してるよと息を吸うように嘘を吐く、曲を歌い終わったらまた愛想笑いをするだけだ、愛してるの意味も恋をする意味も、アイドルになって忘れてしまったよ。
夜になって机で開く日記、ペンを走らせてあの俳優が連絡先を聞いてきて気持ち悪かったと書き記す、きっとわたしの抱えてる問題はアルキメデスでもニュートンでもガウスでも解けない問題、てこの原理?それ知ってる、微分積分学、自然哲学の数学的諸原理、複素数平面、それ聞いたことある、それ知らない知らない、頭のいい人たちにはやっぱりわたしの気持ちの数パーセントもわからない。
みんなは恋をしている? 好きな人は? 気になる人は? わたしがもしもひとつきみに呪いをかけるなら、きみが恋をするまで死ねない呪い、どうせいつか、みんな死ぬんだから。
きみのために風は吹いている そう思えるのはきみのかけがえのない生活が、日々が、 言葉となって浮かんでくるからだと思う きみが今生きていること、それを不器用でも表現していることが わたしの言葉になる 大丈夫、きみはきみのままで素敵だよ 読んでいただきありがとうございます。 夜野