新しい食レポのリーダーズ
noteでは役に立つ文章を書くことがよいと聞いたことがある。
だから今日はそんなことをテーマにしたい。
役に立つといえば食レポのやり方を伝えることだろう。
誰にでも食レポをする機会が人生にはある。
どんな人でも人生に一度は、食事の感想を視聴者に分かりやすく伝える機会に出くわすことがある。
今や国民総彦摩呂化が進んでいる。
食レポができなければ、大人として認められない世の中になりつつある。
うまい食レポができてはじめて大人と認められる、いわば現代の元服式が食レポである。
昔の人が元服式で前髪を剃って月代にしたがごとく、現代では食レポができるようになるということが、大人への第一歩である。
一流の大人は、まるで視聴者がその料理を食べているようにレポートができる。
食レポができる大人がこの世で最も尊敬される世の中だ。
食レポで年収100億円も夢ではない社会なのである。
小学生の将来の夢の第一位はもはやYouTuberではなく、食レポ選手である。小学生たちは「まいうー」や「宝石箱やー」のようなキラーワードを擁する食レポ選手を超える、一流の食レポ選手になることを憧れているのである。
現代のほぼ全員の子どもたちは、プロ食レポ選手になり、海を渡りアメリカの食レポメジャーリーグで食レポ選手として成功したいと夢を描いているのである。
それを踏まえて今日は食レポのやり方について、記事にしたいと思う。
ただもう普通の食レポは先人がやり尽くしていて、同じようなことをやったとしても何のインパクトもなく誰の心にも残らない。
他の人とやり方をちょっと変えてやってみるのがいい。
まず、一つ考えられるのは、まず食レポの対象となる食べ物の見た目をできるだけ比喩的に表現していくということだ。
その見た目を細かく言語化して、視聴者にその魅力の深い部分をお伝えしたい。
例えば絹ごし豆腐が目の前に出されたとする。食べる前に余すところなく、その見た目の特徴を伝えたい。
拙いが例を示してみる。「今日はこの絹ごし豆腐を食レポします。まずみなさん、お分かりでしょうかこの滑らかな表面です。慣性の法則で言えば、この豆腐の表面の抵抗力はほぼゼロです。東名高速道路がもしこの豆腐でできていれば、東京インターでその上に物体を乗せて、僅かな力を加えれば、名古屋まで止まらずに進んでいくくらいの抵抗力のなさが予想されるような表面の滑らかさが見て取れます。また色にも注目して下さい。白です。白と言っても普通の白では到底ありません。この豆腐は、白の象徴である無垢の中からさらに、その一番純粋な部分を抽出した限りなく透明な白です。世の中にある、白と名乗っている色の全てが平伏すような白の頂にあるものです。もっと具体的にするならば人はおろか動物さえも足を踏み入れない、深い山の奥に降り積もった雪のような白さと言ってもいいかもしれません。他の豆腐で私はこんな純真無垢な白い物を見たことは、未だかつてありません。その滑らかさ、その白さを目の前にして、もはや厳かな気持ちにすらなっています」という感じである。
見た目への言及が済んだら、さっそく食べてみよう。
食べた後は心を込めて感想を伝えるようにしたい。理想はRADWIMPSである。
「この豆腐を食べた瞬間に私の脳と心は手を取りあったの。脳の反応が心を作るなんて、なんか偉い人は言うけど、この豆腐は確かに私の脳と心の一番優しい場所に直接届いたの。脳の反応が心を作るって、まやかしなんだってこの豆腐はあなたと私に教えてくれた。もちろんそんなことはこれが最初で最後で、あなたと私がこの先にどんな未来を見たとしても、この豆腐が確かにあなとと私の心の同じ住所に、感動という手紙を届けた事実は何万年、何十万年たってもまぼろしじゃなく変わらない。あなたがいなくなっても、あなたのぬくもりや言葉を忘れそうになっても、この豆腐の感動だけは二人が一緒に住んでいた心の隠れ家に残り続けることが私の喜び。あなたと私はこの感動を味わうために出会ったの。この豆腐のおかげでいつまでもあなたのこと忘れられないでいれる。心からのありがとうと、世界一悲しいさよならをあなたと豆腐に」
というような感じだろうか。RADWIMPSではなく西野カナっぽくなったのは許して欲しい。とにかく食べたすぐ後は、情緒に訴えかけるような表現をすることが大切だと考える。
そして最後にこの豆腐を食べることの価値を、視聴者と共有したい。
「この完全な感動を呼び起こす豆腐は、一丁10万円します。豆腐一丁が10万円というのは当然高いと思われるかもしれません。でも、それは豆腐をただ食べるだけということ考えるからだと思います。この豆腐は食べるだけのものでは断じてありません。これは極上の経験です。きっとみなさん、旅行や趣味や子どもの習い事に10万円くらいかけることはあるでしょう。それは経験によって心が豊かになると信じているから、惜しみなく10万円出せるのだと思います。もはやこの豆腐を食べることは、人生を良い方向に変え、脳と心を揺さぶる至高の体験です。そしてその感動は一緒残ります。あなたのかけがえのない人生の大事な一部になります。それは愛と表現しても過言ではないと、私は思っています。それが10万円で高いと考えるか、安いと捉えるのかはみなさんの判断に委ねます。みなさんはとても運が良いのですが、今ならこの豆腐は、作り手さんのご厚意により一丁5万円で分けてもらえるそうです。これもこの食レポを見たみなさんと豆腐の奇跡的な巡り合わせだと思います。私はみなさんとこの豆腐の価値と経験を共有したいのです。ご興味のある方は急いで下さい。この豆腐は大量生産されません。感動体験を共にしたいと考える方は今すぐに、お問い合わせをお願いします。今だけはオペレーターを増員中です」
最後はテレビショッピングみたいだが、少しでも食レポの参考になっただろうか?
私の食レポテクニックは余すことなく皆さんにお伝えした。これからの皆さんの食レポライフに幸が多くなることを祈って筆を置きたい。
念の為にではあるが、小学生に食レポが流行っているのは嘘だということも併せて記したい。
おわり
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?