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SHIROが「徳島県の学校」をサポートする理由



新設される高専に寄付

3年前にSHIROの社長を退任して会長になってから、没頭してきたことのひとつが「まちづくり」です。

SHIROの故郷である砂川に「みんなの工場」をつくるなど、地域が持つポテンシャルを最大限に引き出すことに全力を注いでいます。

その活動のひとつが、徳島県の神山町で設立された「神山まるごと高等専門学校」のサポートです。

神山まるごと高専は、2023年に開校した新しい高等専門学校で、文部科学省認可の高専としての新設は19年振り。高専と聞くとロボコンを想像する人が多いかもしれませんが、少し毛色が違う起業家精神を育む学校として設立されました。

学校をつくったのは、起業家たち。名刺管理サービスで知られるSansan株式会社の創業者の寺田親弘さんを中心に、4名の起業家が力を合わせて誕生しました。SHIROはこの神山まるごと高専の開校資金の一部を寄付させていただきました。私はカリキュラムのひとつとして導入されている起業家による授業の講師も務めています。

砂川から約2000キロも離れた徳島県の高専に、どうしてSHIROが寄付をしたのでしょうか。そこには、「子どもたちに豊かな地球を残したい」という私たちの願いが関係しています。

「学費無料」を仕組みで実現

神山まるごと高専のプロジェクトは、早くから知人の話などを通して知っていました。根底にある「社会を良くしたい」という想いは、アプローチは違ってもSHIROに通ずるものがある。そんな気がして、いつか話を聞けたらいいなと気になっていました。

神山まるごと高専のすてきな取り組みは、学校のホームページの説明が充実しているので、少しでも興味を持たれた方は、ぜひチェックしてみてください。

学校の概要や開校スケジュールが具体的に固まってきた段階で、寺田さんから話を伺う機会がありました。

その熱意に、とにかく驚かされました。Sansanの経営をしながら、それ以外の時間の全て投入するほどの本気度。ものすごく優秀な経営者たちが、地方で新しく学校を作ったらどんなものが生まれるのだろうと期待が高まりました。

熱意に加えて、仕組みも新しかった。例えば、学費無料を継続するために、ファンドを立ち上げて100億円の資金を運用します。最初に大きなお金を集めて適切に運用すれば、そこから得られるリターンだけで、毎年、生徒たちの学費をまかなえるという発想です。ひと学年40人の全寮制で、寮での共同生活や人間関係の構築も、丸ごと学びの場として設計されています。

いかにも起業家的なアプローチでの運営構想に感動しました。この100億円は、SHIROが協力させていただいた開校資金とは別に、集められたそうです。

神山まるごと高専の具体的なコンセプトを聞いて大きな可能性を感じ、私からお願いしてすぐに寄付をさせていただきました。

起業家を育てる「3つの柱」

神山まるごと高専がユニークなのは、他の多くの高校のように決して「大学予備校」ではないこと。理想の社会を描く想像力と、それを実現するスキルを身に付けるための学校であり、従来の型にはまったカリキュラムとは一線を画しています。

例えば、1コマ90分の授業は選択制。2学期制を採用するなど、大学のようなシステムです。テクノロジー、デザイン、起業家精神という3つの柱に基づいて、プログラミングやAI、UI UXデザイン、アントレプレナーシップ概論などの講義を受講することができます。

いわゆる日本の教育は、答えがある問いに対して、素早く回答を導く能力を磨くことに長けています。しかし、現代は答えのない時代です。自ら問いを立て、答えをつくる能力がなければ、時代を切り開いていくことはできません。

神山まるごと高専のカリキュラムは、答えのない時代を生き抜くための学びに特化しています。ここで学んだ生徒たちは、きっと社会をリードしていく存在になるでしょうし、企業が喉から手が出るほど採用したい学生になるはずです。

「答えを探すのではなく、自ら問いを立て、答えをつくる」というのは、本来の経営の根幹です。

従来の教育ではそうした指導をする機会が少なく、教師単位で熱意を持っていても、学校全体で目線が合っていなければなかなか継続できません。また、「答えをつくる」ことの大切さは伝えられたとしても、それを実現するための具体的なスキルまで身につけられる教育の場所はほとんどなかったように思います。

この高専から、どんな人材が育つのか。開校は2023年の4月でまだ2学年しかありませんが、今から学生の未来が楽しみです。

「たった一人の熱意」から

もうひとつ、神山まるごと高専を紹介する上で、絶対に欠かせない方がいます。30年以上前から神山町で地域おこしを担ってきた、大南信也さんです。

大南さんは神山町で育ち、大学時代を東京で過ごされ、アメリカのスタンフォード大学の大学院に進みました。卒業後は、家業の建設業を引き継ぐために神山町に戻られます。

神山町は、人口約4600人、高齢化率が50%を超える小さな町です。その地元を盛り上げるためにNPO法人を設立し、移住の支援を始めました。たくさんある古い空き家をNPO法人をとして移住希望者に紹介して、安値で住居やオフィス、アトリエなどに活用してもらう。

神山で「仕事を探す」のではなく、アーティストやパン職人、料理人など、スキルをもった人に移住してきてもらい、「仕事をつくる」ことを目指しました。

大南さんの熱意は徐々に伝わり、輪が広がる形で、神山町にさまざまな人たちが関わるようになっていきました。Sansanの寺田さんとの関係も、最初はサテライトオフィスの設置から始まったようです。

私が初めて大南さんとお会いしたときも、その熱量に圧倒されました。私もけっこう「エネルギッシュですね」と言われるのですが(笑)、それを凌駕するパワーでした。

「30分のプレゼンと60分のプレゼン、どちらがよろしいですか?」大南さんのオフィスに到着すると、こんなことを聞かれました。

驚いたのは、どちらのパターンでも、プレゼンをSHIRO向けに細かくアレンジしてくださっていたことです。濃密なプレゼンを受け、「このまちのためにできることがしたい」とすぐに応援したい気持ちが湧いてきました。

大南さんに会うと、砂川にも豊かな未来があると思えます。人口が減ろうとも、誰かに反対されようとも、「このまちを本気で変えたい」と本気で願うたった一人の熱意があれば、変化は起きると信じられるからです。

神山町は、大南さんの熱意によって、日に日に元気になっています。私もまちが元気になっていくきっかけのひとつになりたいですし、ここで培った経験をもとに、砂川をもっと魅力的なまちにしていきたい。

高専や神山町で寺田さんや大南さんの熱意に触れると、私も「社会を良くする」ためにより頑張ってみようと思え、さらに一歩踏み出す勇気が湧いてきます。

(編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)

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