知床ガイドの落語・・・お客が怖い
どなたにもそれぞれ”怖いもの”がありまして、
隠居:お前さんたちは何か怖いなんてものはあるかい?
八五郎:あっしは熊が怖いねぇ。
隠:へぇ、お前さんくらいのガイドでも熊が怖いのかい?
八:いやそうじゃねえんすよ。知床五湖が閉鎖になるでしょ。あっしの仕事がなくなっちまうもんですからね。
隠:あぁ、なるほどそういうことかい。お前さんは?
陣弥:あたしも熊ですね。
隠:やっぱり遊歩道の閉鎖が怖いのかい?
甚:いえ、岩尾別橋の辺りが渋滞になるもんですから。
隠:そうだねぇ。写真撮る人が集まっちゃうからねぇ。困った問題だ。お前さんは?
松:おいらは大雨が怖い。
竹:あっしは強風だね。
梅:あたしはスズメバチが怖いです。
隠:いやいや人それぞれ出てくるねぇ。
外平:はっはっはっはっはー。お前たちそれでもガイドかい?そんなんが怖いんだったらガイドなんかやめちまえよ!
隠:じゃあ、お前は怖いもんはないのかい?
平:無い!・・・いや、ひとつだけある。
隠:それは何だい?
平:客だ。
隠:お客のどこが怖いんだよ。
平:知床五湖を歩きたいとか、夜に動物が見たいとか、わがままばっかり言いやがる。
隠:あたりまえだよ。それがお客ってもんなんだから。
平:とにかく俺は客が怖くてたまんねぇんだ。
八:よぉよぉみんな。あいつはいっつも生意気なことばっかり言ってやがるイヤミな野郎だ。いっそ自分とこのお客をあいつにみんな振って困らせてやらねぇか。
甚:いいですねぇ。手当たり次第送ってやりましょう!
平:ん?なんだ?急に予約が入ってきやがった。うわぁ、この客は湖が見たいって。じゃあ、知床五湖に連れて行くぞ!こっちの客はリスが見たいのか。じゃぁ、原生林だ。こっちは星空ウォッチングだ!
八:おいおい、あの野郎。嬉々としてお客をさばいてるぞ!チキショー、騙されたのか。悔しいねぇ。オイ、お前本当は何が怖いんだ。
平:はい、ここらで3日くらい有給休暇が怖い。