知床ガイドの落語・・・長短
気の長い長介と、むやみに気が短い短七の二人は幼なじみ。気性は真逆なのになぜか気が合います。
ある日、短さんが長さんを誘って知床五湖を歩こう、ということになります。入り口についた二人。でも長さんはのろのろ準備をしており、なかなか歩き出すことができません。それを見ていた短さんは、じっれたくてしょうがない様子。
それでも何とか歩き始めると、あちこちで写真を撮っているため全然前へ進めません。さらにはスマートフォンの操作に手間取って何度も何度も撮影をしているので、短さんはますますイライラしてきます。
今度は長さん、水を飲もうとしましたが、ペットボトルの蓋がなかなか開きません。短さんは見ているだけで、まどろっこしくてイライラしています。蓋が開かないのにちっとも慌てず悠長にやっている姿に我慢が出来ない短さんは見本を示そうと、「水なんてものは、こうやって片手でパッとふたを開けて、ぐびっと飲んでそれでおしまいなんだよ」とその動作の早いこと。
目を丸くして見ている長さんに気付いて、何度もくり返す短さん。その姿を見て長さんは少し遠くに離れた後、恐る恐る、「これで~短さんは~、気が短いから~、人に物を教わったりするのは~嫌えだろうねぇ~」
短七:ああ、でぇ嫌えだ
長介:俺が、教(おせ)えても、怒るかい?
短七:おめえには怒らねえよ。おめえとは子供のころからの友達だ。悪いとこがあったら教えてくれ。怒らねえから
長介:・・・・ほんとに、怒らないかい? そんなら、言うけどね~、さっき、短さんが水を飲んでいるときに~短さんの後ろの笹が動いたから何がいるんだろうと思って~よく見たらヒグマみたいなんだよ~。だいぶ近くにいるから~、ことによったら、そりゃあ、逃げたほうが・・・
短七:何やってんだ、そんなのはことによらなくたっていいんだよ。何だって早く教えねえんだ。すぐ近くに来てるじゃねえか!バカヤロウ!
長介:ほおら見ねえ、そんなに怒るじゃあねえか、やっぱり教えねえほうがよかった