ロシア語でよむ昔話 ウクライナ民話『てぶくろ』(3)
(ロシア語でよむ昔話 ウクライナ民話『てぶくろ』(2)からの続き)
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ロシア語でよむ昔話 ウクライナ民話『てぶくろ』(1)~(8)
1.『てぶくろ』の教材について
教材は、
(1)ロシア語の原文をデータで取り込み、
(2)紙の原本と照らし合わせながら、誤植の有無を確認・修正し、
(3)ネイティヴによる朗読などを参考に、手作業でアクセントを振り、
(4)難解な語彙、廃語・雅語、名詞の指小形、形動詞、副動詞、動詞や名詞の不規則変化などについて、注釈を施した。
『てぶくろ』の教材は初級者向けに作成したので、初歩的な不規則変化なども注釈に示してある。
注釈の語彙について。
基本的には研究社露和辞典、岩波露和辞典から語義を引用し、必要に応じてオジェゴフ ロシア語詳解辞典、ウシャコフ ロシア語詳解大辞典、その他を参照した。
発音について。
特殊な発音、有声子音の無声化、無声子音の有声化などの場合、なるべく初歩的なものでも脚注に示した。発音表記の出典は、博友社ロシア語辞典。博友社に記載が無い場合は、ウェブ情報も参照した。
2.和訳について
掲載する教材は、ロシア語ロシア文学を専門とする講師が原文講読授業での使用を目的に作成したもので、対訳本ではないので和訳は添付されていない。
和訳が必要な場合は、市販の書籍、図書館の蔵書、ウェブ上の情報などを適宜ご参照いただきたい。
なお、西郷竹彦訳『てぶくろ』(秋田雨雀、西郷竹彦編『ロシアむかしばなし 1年生』所収、宝文館、1956年)については、国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービス(登録手続きが必要)で閲覧可能である。
(リンク)
秋田雨雀、西郷竹彦編『ロシアむかしばなし 1年生』
(国立国会図書館デジタルコレクション)
3.原文テクストについて
本文のテクストは1951年版を使用した。
«РУКАВИЧКА» Украинская народная сказка, Государственное Издательство Детской Литературы Министерства Просвещения РСФСР, Москва/Ленинград, 1951.
また、ラチョフの新たな挿絵とともに出版された1978年版も適宜参照した。
«РУКАВИЧКА» Украинская народная сказка, Издательство «Малыш», Москва, 1978.
1951年版にはウクライナ民話からの再話者やロシア語翻訳者の記載がなく、挿絵画家のラチョフの名前のみ記載されていた。
1978年版には詩人・翻訳家のエレーナ・ブラギニナによる翻訳(Перевод Елены Благининой)だと明記されている。
1951年版と1978年版を比較すると、テクストの異同はほとんどなく、1951年版もブラギニナによる翻訳だと推定できる。
4.ラチョフについて
挿絵を提供したラチョフ(Евгений Михайлович Рачёв, 1906-1997)は、帝政時代の1906年、シベリアのトムスクに生まれた。
ロシア南部クバンの芸術教育大学を優秀な成績で卒業後、キーウの芸術大学デザイン学部で学ぶが、大学の教育方針と相いれず、在学中から絵本の挿絵に取り組むようになった。
動物画を得意とし、キーウや当時のウクライナの首都ハルキウの出版社に挿絵を提供した。その後モスクワに移り、児童文学作家ビアンキの作品などにも挿絵を提供。第二次大戦から復員後は、国立児童図書出版所で動物昔話などの挿絵を描いた。
ラチョフについて、詳しくは以下を参照されたい。
(1)E.ラチョフ、岩本憲子訳「私が画家になったわけ」『カスチョール』第11号、1996年。
(2)「E.M.ラチョーフを悼む」『カスチョール』第14号、1997年。
5.『てぶくろ』教材①
これから6回に分けて、教材(画像 / PDF)を載せていく。
まずは、おじいさんが森で片方のてぶくろ(ミトン)を落とし、そこにねずみが棲みつく場面から。
5-1.『てぶくろ』教材① 画像
5-2.『てぶくろ』教材① PDF
5-3.挿絵
5-4.朗読Youtube
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※ Youtubeの画面右下にある字幕アイコンをクリックすると、ロシア語が表示される。
(ロシア語でよむ昔話 ウクライナ民話『てぶくろ』(4)につづく)
※ ヘッダー写真の出典は、ブラトフ、ヴァシリエフ挿絵『てぶくろ』1977年。