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ブックレビュー きみは赤ちゃん

様々な人の妊娠出産育児体験エッセイを読みたくて、これまでに4冊読みました。
そのうちの一冊です。今回は2400字弱。少し文量多めです。

※出生前診断について個人的所感を述べています。読みたくない方はここでご遠慮ください。


255文字所感

妊娠出産・育児エッセイはこの他にも水野美紀さん、山崎ナオコーラさん、ヨシタケシンスケさんのものを読みましたが、1番内面の葛藤が詳細に書かれています。
私もこんな風に悩み、夫婦でぶつかりながら子育てをしていくのだろうな…と思いながら。そしてきっと「母親的役割」に知らず知らずのうちに縛られてしまうだろうなと思いながら。(←山崎ナオコーラさんも著作のなかで触れている)
育児が始まったら、また読み返したいです。
今とは違う気づきがあると思います。


この本を読んだ理由

いくつか妊娠出産育児エッセイを読んでおこうと思い、選んだ中の一冊。
川上未映子さんの本は初めて読みました。


ポイント①出生前診断受けるか受けないか問題

出生前診断について、貴方はどのように考えますか?またはどのように考えましたか?

「命の選別」との見方も一部ではあり、産婦人科医の中にも検査を受けること自体に難色を示すお医者さんがいるようです。

夫婦の考え方や倫理観がモロに出るので難しい問題です。私たちも検査を受けるかどうか夫婦で悩み、関連本も読みました。

はじめは検査をするつもりで、検査を受けられる医療機関や検査費用など、具体的なことを調べました。

検査したかった理由は2つあります。

1.先天的な異常や病気があった場合の心構えのため
2.私たちに背負う自信のない障害をもつ子の場合、母体への影響がなるべく少なく済む初期のうちに妊娠継続をやめるため

でも結局、検査は受けませんでした。その理由は、

1.検査でわかるのは先天的な異常や病気の「一部」にすぎないため
2.検査結果は「確率」で結果が分かる。かえって不安になる可能性があるため

改めて文字に起こすと検査したい理由もやめた理由もなんとも身勝手な理由です。でも産み育てるのは私たち夫婦なので、結論に至る過程も考えも後ろめたさは無いです。

作者夫婦はと言うと、はじめは以下のように考えていたものの、

「きみよ、安心して生まれてこい。わたしが全力で受けとめる」ってことが、赤ちゃんをこの世界に無相談に参加させるこちら側の、最初にして最大の誠意というか覚悟というか、唯一の態度であるような、そんなような気がしてならなかった。
(本書より引用)

高齢出産だったこともあり、結果的に検査を受けます。

 少なくともわたしは出生前検査をした時点で、「きみよ、安心して生まれてこい。わたしがありのままで受けとめる」と言う態度はとらなかったんだな、ということは事実だった。後悔とか、後ろめたさとか、そういうのじゃないけれど、でもたしかに、それは点のような空白として、わたしのなかに残っている。
(本書より引用)

この感覚、とてもよくわかります。私たちは結果的に検査を受けなかったけれど、それも「ありのままを受けとめる」という姿勢で出した結論ではなかったから。そのことに罪悪感は無いものの、なんとなく、突起のように心のなかに残っています。

そういう微妙な部分が言語化されていたので、つい私のアンテナに引っかかりました。


ポイント② 「母親的役割」を知らず知らずのうちになぞっているわたしたち

「母親的役割」を知らず知らずのうちになぞっていて、そういった「思い込み全般」につきうごかされていることに気がついて呆然としたことがあるのだもの。
例えば、夜泣きや、おむつ替え。ふたりの赤ちゃんのはずなのに、気がつけば、「おむつを替えてもらってる」っていう意識がふつうにあるのだよね。だからあべちゃん(作者の夫)がオニ(夫婦の子)のうんちとかを処理してるのが目に入ると、自然に「あ、ごめん」とか「ありがとう」みたいな言葉がでちゃうし、夜泣きのときとかも、なんかわたしがいたらないからこうなってる、みたいな感じが勝手にして、「隣の部屋に行かなきゃ」とか「早く収めなきゃ」とか「騒いでごめんね」みたいな、と言うわけか、そういうすみません的な、申し訳ないです的な気持ちになってしまうのだ。
(中略)
じゃあなぜ母親だけがこのような「すみません感」をもってしまうのかというと、やっぱり赤ちゃんと母親っていうのはよくも悪くも身体でつながっていたと言う事実があるからと思うんだよね。身体的に、赤ちゃんが自分の一部だったときがあるからなんじゃないかと思う。
(中略)
でも、われわれには理性があり、言葉があるではないですか。
無意識にしたがっていたものを言葉で理解できたならしめたものよ。
知らないあいだにわたしのなかにあった、その「赤ちゃんはわたしの身体の延長なの」的感覚を、意識して排除することにした。わたしだって、あべちゃんと同じように、する。「ごめんね」も「すみません」も、金輪際、口にしないし、絶対に思わない。だってオニはふたりの赤ちゃんなのだから。そう決めて、実行するようにしたら、いろんなことがずいぶんらくになったように思う。 
 (本書より引用)

ここでも、「母親は『ひとりで子育てしている』という意識を持つべきではない」ということが書かれています。
作者の川上未映子さんは山崎ナオコーラさんとは毛色の違う作家。それでも同じ見解ということは、真理なのだと確信しています。
それと同時に「(日本の?)女性が陥りやすい思考癖」でもあるんだなと感じています。

↓参考に。山崎ナオコーラさん「母ではなくて、親になる」ブックレビュー


まとめ

妊娠、出産、育児それぞれのステージでの作者の葛藤や心の機微が書かれています。
終始女性目線ですので女性は共感するところも多いですし、男性もパートナーの心情を理解するための一助になると思います。


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