久しぶりの春
次男を抱き抱えて桜を見せると、ニコッと笑って「さくらのおはな」と言います。ほら見てごらん、と声掛けしていたせいか、一生懸命指差して見てごらん!とわたしに言ってくるようにまでなりました。今年は桜をとてものんびり眺められているな、と実感し、昨年は長男をつれていると誰もいない公園しか行けず、どんなに早い時間に到着しても、ほかの利用者が来ればサッとその場を去っていたので、桜なんかろくろく見られなかったのだ、と気づきました。
桜ばかりか、奇声をあげて歩く我が子を連れていると、奇異の目に耐えきれず、極力周囲を見ないよう努めていました。
今年は子供を生んで、はじめて桜の花をじっくり見られる春かもしれません。
先日、用事があって長男の入所施設に赴きました。用事は先送りになってしまいましたが、面会室で長男と会い、職員さんに最近の暮らしぶりをうかがいました。長男はやっぱり目も合わず、落ち着きもないですが、それでも職員さんの言葉をちょっとずつ理解している素振りを見せるそう。けれど、次男のほうが色んなことを理解し、言葉もたくさん口にするので、やっぱり複雑です。
帰り際に、玄関の机のそばで、長男を可愛がってくれている高校生の男の子ふたりが、わたしたちの面会が終わるのを待っていて、次男が長男にそっくりだ、と言いました。顔ばかりでなく声も似ていると言われ、意味のある単語がひとつも出ず、絶えず声を出すので掠れ声の長男と、次男の声が似ているなんて思ったことがなかったので、すこし面食らいました。けれど表情や口ぶりから、長男を本当に可愛がってくれていることがわかりました。そういう子達の存在は、どれだけありがたいかわかりません。
施設を出ると、どこかの部屋から呻き声が聞こえます。次男が「長男ちゃんの声!」と言いました。それはおそらく長男の声ではなかったのですが、次男なりに、長男の発声を理解しているんだなと思いました。
長男の進学は再来年で、一応の予定としてはその頃に帰宅させることを目標としています。けれど、このままうちへ帰ってきて、生活が成り立つのかとても不安です。