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【白金酒造の和っていい話】蒸留ってなんでしょう?

蔵人です。今日は蒸留のお話です。

日本には「國酒」として清酒と焼酎(泡盛も含まれます)があります。
清酒のことを一般的に「日本酒」と呼ぶ方が多かろうと思いますが、
蔵人らは清酒、焼酎と区別しています。


さて、これらどう違うの?というところなんですが、
超ざっくりと表現すると、

もろみを搾ったものが「清酒」で、

沸かして蒸気を集めたものが「焼酎」です。


「もろみ」とはお酒になる前の発酵中の液体のことで、米麹や主原料(芋や米、麦)などが溶け込んでいる状態のものです。
甘酒みたいなもので芋焼酎のもろみはさらにドロドロしています。

とにかくドロドロ。りんごみたいな香りがします。

蔵見学に来られた方に蒸留の説明をするときは「やかん」と「お風呂の天井」でたとえます。


まず、もろみは水やアルコールなどが混ざったカオスな状態ですが、もろみを蒸留釜(=「やかん」に例えます)に入れて熱すると沸点の違いからはじめにアルコールが沸騰して蒸気になります。
水はアルコールよりも沸点が高いので遅れて蒸気になります。
この温度差でもってアルコールを優先的に取り出すことできます。

この説明、某天才物理学者っぽいイケボな感じでしたいのですが、当本人と連想されると反感を覚えるお客様もいらっしゃいますので、心の中で行います。「…実に面白い。」


つぎにアルコールを含んだ蒸気は逃げないように管の中を通しますが、
管の外側には水が張ってあり蒸気が管の中で冷やされ液体に戻ります。ここで「いい湯だな」の「湯気が天井から~♪」のくだりを説明します。心の中でハァ~ビバノンノンと相槌を打ちましょう。

ポタリとせなーかにぃ~♪

液体になったアルコールは管内をつたって出てきます。
出てくる様子が、はじめぽたぽたとまるで朝露のようで、
次第に泉のように湧き出ることから「〇〇の露」や「〇〇泉」などの商品名になっています。

焼酎でこんな名前、あるある!

…と、だいたいこの3部構成で皆様に説明します。

蒸留器もサイズがいくつかあり、蔵では一度に1,000~5,000Lのモロミを蒸留にかけることができます。もろみの加熱方法は直火でなく、もろみにボイラーの蒸気を吹き込んで加熱します。3,000L程のモロミを蒸留釜に入れ、直接蒸気を吹き込むと30分くらいで中が沸騰して焼酎が出てきます(初垂れ)。

…さらっと書きましたが、

数千リットルに及ぶ大量のモロミを30分足らずで沸騰させるための蒸気はすさまじいです。

「ゴゴゴゴゴ…」という重低音とともに釜の付近からはミシミシと不安になる音がしてなかなかの恐怖感です。

蒸留は恐怖と隣り合わせ…(!?)

もろみの量と調節した蒸気量が普段通りであると、ほぼ誤差なく時間通りに焼酎が垂れてきます。

蒸留操作を間違うと数週間にわたって育ててきたもろみを台無しにすることもありえるので、蒸気吹き込みから焼酎が垂れるまではいまだに緊張します。

焼酎が垂れる直前はリンゴやメロンのような甘い香りが
あたりに立ち込め、その後待ちわびた初垂れを見て、

「初垂れヨシ!」

とほっとするのです。

集めた焼酎は「原酒」と呼び、芋焼酎で35~38度くらいのアルコールを含んでいます。

どのような条件で蒸留するか、どこで蒸留を止めるか、蒸留のやり方で原酒の表情はずいぶん変わってきます。

緊張もしますがものすごく奥が深く、面白い工程です。

…実に面白い。


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