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「多様性の科学」の要約と感想

本書について

単にダイバーシティーとしての多様性ではなく、業績やイノベーションの要因として思考の多様性を取り上げ、必要性・それが失われる要因・多様性を取り込むための方法を説明した本。組織論に興味がある人にも、そうでない人にも(無意識下の行動を見直すなど役に立つので)おすすめ。

以降、ためになったポイントをピックアップし感想を書く。
※要約なので一方的な説明が多いが、本文はとても中立的に書かれている

思考の多様性がなぜ必要か

課題解決やゴール達成に必要な観点・経験・考え方(=問題空間)があるとき、そもそも1人でカバーするには限界がある。さまざまな考え方を持つ人がいれば、広くて複雑な問題空間をよりカバーする集合知が得られる、多様なアイデアを得て融合できる。結果として誤った結論・偏った結論を防げる。

1人ではなくてチームだとしても、自分と似たような考え方の人や似たような経歴の人と集まったときは、同じようなアイデアしか生まれない。無知な集団(=クローン集団)ができる。優秀な人のクローンを6人揃えても、複雑な問題を解決する場合は意味がない。CIAすらもそれで9.11を防げなかった。

思考の多様性を担保する方法

1. バイアスを排除し客観性を高める

そもそも人は似たような人と集まりたがる、採用したがる。自分はそうでないつもりでも、候補者が拮抗しているときに無意識のバイアス(=裁量の余白)により選好してしまう。それが積み重なると例えば女性の意欲が失われる構造的バイアスにもなる。客観性を高める方法が必要。以下の書籍でその方法が紹介
(感想)採用系のサービスは名前、性別、写真などを隠すオプションを提供してほしい

ちなみに、似た人と集まるとエコーチェンバー現象により同じ意見の者同士でコミュニケーションを繰り返され、反対意見の信用を落とす作用が働き、特定の信念が強化されてしまう。
(感想)チーム全員で「これでいけんじゃね?」みたいに異様に盛り上がっていったときは危険?

2. ヒエラルキーと多様性の両立、心理的安全性

人間は序列が定められた集団の中で生きるよう設計されている。自然とヒエラルキーができあがり、抑圧し、反論が出なくなり、チーム全体が支配的なリーダーに意見を合わせる。考え方の多様性が失われる。
ある飛行機事故の「副操縦士らは機長に意見するより、死ぬことを選んだ」という解説が怖すぎる。。

一方、ヒエラルキーが全くないと責任の所在が曖昧になる。Googleも一時期失敗した。決定事項を単に遂行するときも多様な意見は雑音だし支配型がうまくいく。

ヒエラルキーと多様性を両立するには「尊敬型ヒエラルキー」の構築が一つの手段。支配ではなく自らの行動で尊敬を集めた結果としてリーダーになっていくようなヒエラルキー。共感力が高く、寛容で人の意見に耳を傾け、他者のロールモデルになることで組織全体にその性質がコピーされていく。
心理的安全性とも関連。

(感想)サーバントリーダーシップに近い?

注意として、危機的状況になると強力なリーダーシップを求める傾向が強くなるが、そのような状況は複雑で不確かなので、支配型ヒエラルキーでは意見が出ないなどして大惨事を招くという危険なパラドックスもある。

3. 規格化を避ける

マニュアル通りにすれば楽かもしれないが、そもそも一人一人に合ったやり方ではない。ダイエット方法は特にそうで真逆の結果になることもある。
マニュアルや標準化された方法でカバーできない問題を柔軟に解決するマインドがあるとパフォーマンスも向上する。ただし無意識に平均値や規格を採用することもあり注意。
また、自律的に動ければモチベーションも湧く。

(感想)オフィス環境を自分で決めることもパフォーマンスに繋がるとのことで、ボトムアップでオフィス設計したWoven Planetがすてき

(感想)規格化されたベストプラクティスには良い面もあるのでトレードオフで難しい。。

イノベーションとの関連

イノベーションは2つあり、段階的にアイデアを深めていく「漸進的イノベーション」と、異分野のアイデアを融合する「融合のイノベーション」で、多様性と関連。反響の大きい論文は標準的ではない分野を組み合わせている。また異分野とコラボするまでいかなくとも、「外国に住んでいるところを想像」するだけでも連想力が高まる。

まとめ

多様な意見を出し合い融合していくことでより良い答えを出すためにできることが山ほどあると思ったのでしていこうと思う。。

また、多様性が単に倫理的な問題だけでなくパフォーマンスやイノベーションの問題でもあると認識することは、日本の女性管理職比率など悲惨な状況を含め、さまざまな課題を解決するためのスタート地点の1つだと思った。

関連キーワード

・集合知
 合議制、アンサンブル学習
・組織
 サーバントリーダーシップ、ティール組織、フラット
・個人
 水平思考、クリティカルシンキング

関連書籍(未読)

ORIGINALS
デフォルトではなく自分でインストールする必要があるFirefoxやChromeを使う人のほうが入社後のパフォーマンス高いってのが紹介。めっちゃ面白そう

GIVE&TAKE
他者とのコラボレーションを成功させるには与える姿勢が必要、そういう人は受け取るだけの人より成功を収めやすい


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