アリスインデッドリースクール少年を観ました
素晴らしい舞台を見た。
「アリスインデッドリースクール 少年」。
今回はこの舞台がいかに良かったかの話をする。
ネタバレは極力ないようにするが、閲覧は自己責任でお願いします。
きっかけ
私はツイッターでアカウントを変えながら、もう何年もフォローさせて頂いている方がいる。エッセイ漫画『となりの801ちゃん』の主人公であるところの801ちゃんさんだ。
「アリスインデッドリースクール」は、その801ちゃんさんが強くおすすめしていた舞台作品である。「デッドリー」シリーズは長く女性キャストで公演されてきたそうなのだが、私が今回観た「少年」はタイトルの通り、男性キャストのみで作り上げられた舞台だ。
ふいに空いた時間ができたので、私はこの作品を鑑賞することにした。801ちゃんさんがここまで仰るのなら、絶対に面白いだろうと思って。
まずは冒頭、13分。無料で見ることができる。
https://www.youtube.com/watch?v=pp3Pa-O3fCY&feature=youtu.be
かっこいい。
登場人物の一人である紅島弓矢先輩がジャンプして、ポジションゼロを割らんばかりの勢いで金属バットを叩きつけるシーンで一気に目を奪われる。自衛隊っぽい人たち(本編を見たら本当に自衛隊だった)が拳銃を構えるシーンも印象的だ。
テーマソング「世界の始まりはいつも君と」に合わせて小さめの舞台で踊る若い俳優さんたちが、みんなでひしめきあってキラキラしていた。
本編視聴
約2時間ほどの本編は、DMMでストリーミング配信されている。
https://www.dmm.com/digital/cinema/-/detail/=/cid=5675deadlyschool00001/
ネタバレを避けつつこの「アリスインデッドリースクール 少年」がどういうお話かを、軽く説明させて頂こう。
夏休みの登校日のある日、少年たちの通う愛心学園にゾンビがやってきた。劇中では動く死体とか、あいつらとか呼ばれているものたちが、突然。
このゾンビが発生した時、偶然屋上に居合わせた17人の少年と、2人の大人が、先の見えない世界で懸命に生きようとする物語だ。
いわゆるゾンビパニックものだが、ゾンビは直接登場しない。ゾンビに侵されていくかけがえのない日常を、屋上から見下ろす形で物語は進む。
次の文化祭で漫才を披露することを目標に、練習を続ける少年たち。
血の付いた金属バットを構えるヤンキー。
負傷したキャプテンを看病し続ける野球部員。
強い忠誠と信頼で結ばれた生徒会役員。
誰かの役に立つことを望む陸上部員。
それぞれの夢を語り、追い続ける漫画研究部員。
一人他校から取材に来た新聞部員。
屋上のさらに一段高いところから、斜に構えて皆を見下ろそうとする少年。
生きようともがく彼らを撮影し続ける映画研究部員。
そして、この世界の何かに気づいてしまった科学部の少年。
彼らを助けに来た、2人の大人。
さまざまな登場人物たちが入り乱れ、あるかどうかも分からない明日と、その先の未来を夢見て、笑って生きようとする。
「アリスインデッドリースクール 少年」は、夢を描く物語だ。
現実は無慈悲で、彼らの大事なものは、彼らが過ごした屋上の一日の中であっという間に奪われていく。
それでも彼らは明日に、未来に夢を描くことをやめない。
それぞれの登場人物で違っていく夢の描き方から、私たちはいつしか目が離せなくなり、そして彼らのいのちの輝きを見送る。
未来はゆらぐ。真夏の陽炎のように。
そして過ぎ去っていく。クラゲが持つ、たくさんの目で見た景色のように。
彼らのたどるクラゲの未来の一つを見届けた時、私たちの心には彼らの生きた証、描いた夢が深く刻みつけられる。消えない傷のかたちで。
もう一度本編のリンクを貼っておこう。
https://www.dmm.com/digital/cinema/-/detail/=/cid=5675deadlyschool00001/
物語の話ばかりしてしまったが、それを形作る俳優さんたちの演技も目を見張るものがある。俳優さんたちの視線や動作の一つひとつに、少年たちは確かないのちをもって屋上に生きたのだと、強く心を揺さぶられる。
配信の映像はほぼ引きの定点なので、こまやかな表情、動きなどをアップで見てみたい。
女性キャストの「デッドリー」は定期的に公演があり、DVDも通販されているそうなので、興味がある方はそちらもぜひ。私も機会があれば、女の子版の方も履修しようと思っている。
「少年」の再演が叶えば、今度は現地で観たい。
初見から一日経った今(実際は一日で二回観た)、私の心は今も屋上にあって、彼らのことを考え続けている。
デッドリーをおすすめしてくださった801ちゃんさん、ありがとうございました。私も気づけば立派なゾンビです。
初見の日にたくさんの人にゾンビとしての誕生日を祝っていただけたことが、とても印象に残っている。なんだか幸せだったので、来年のこの日も誕生日として祝うことにした。
もしデッドリーを観た方は、ご感想をツイッターなどで頂ければ、私たちデッドリーのゾンビはたいへんうれしい。きっとスタッフさんたちもうれしいと思う。
そしてゾンビの言祝ぎを受け、幸せなゾンビとして二度目の誕生を迎えてほしい。私がそうだったように。