映画グランツーリスモ 解説②:GTアカデミー編

さてGTアカデミー参加のため親元を離れ、ひとりイギリスの超有名サーキット・シルバーストンにやってきたヤン。実際にはお母さんが同伴したそうですが。



シルバー…ストン…?

グランツーリスモシリーズではGT6の1回しか採用がなかったので馴染みがないですが、F1では鈴鹿サーキットくらいおなじみなので、少なくとも第1コーナーがヘアピンでないことくらいは私でも覚えています。

間違いない。これはハンガロリンクですね。
なんだこれは…たまげたなあ…

詳しくない人に向けて野球で例えると、札幌ドームを甲子園だと言って映画にお出しするくらいの暴挙となります。

まあ、ハンガロリンクはグランツーリスモシリーズで1回も採用がなかったので、同じく馴染みがないシルバーストンをハンガロリンクで代用するのは、比較的無理がない…かな??

シルバーストンを借りれなかったなら、わざわざハンガリーで撮らなくてもそこは史実を曲げて、同じイギリスのオウルトンパークかブランズハッチでGTアカデミーをやったことにして、そこを借りればいいような気もしますが…もしかしたら、ハンガロリンクが暇で暇で超安かったのかもしれません。思わぬところでF1ハンガリーGPの存続可能性が危惧される事態となりました。

(と思ったら、親切な人が「エンドクレジットにハンガリーやスロバキアの文化省から支援金が出てると書いてあります」と教えてくれました。日本の内閣府からも支援金は出ていて、ハンガリー→日本→スロバキア→etc.の順で支援金は多いようです。こんな映画に我々の血税が…?)

さて、GTアカデミーの立ち上げセレモニー。

映画では自分をシルバーストンだと思い込んでいるハンガロリンクで行われていますが、史実ではルマン24時間レースのレース中に行われています。

周囲の人たちも「こいつら大丈夫か?」と懐疑的な感じ。
これをひっくり返すのは快感でしょう。やってやろうじゃないですか。

ですが…

【ヤン選手は3期生】


現実のGTアカデミーは2008年に第1回、2010年に第2回が開催され、ヤン選手の参加した2011年は第3回です。
また、第1回の優勝者がルマンのクラス2位になるなど、ヤン選手以前にも優秀なレーサーを輩出しています。

つまり、現実ではヤン選手が参加した時点で既に予想以上の成果を出しているプロジェクトなんですよね。

なお現実のGTアカデミーは2016年で終了していますので、現在は存在しません。立ち上げ人のダレン・コックス氏は前年のルマンでやっちゃって日産を「退職」していますが、それとGTアカデミーの終了は関係があるかもしれないし、ないかもしれません。

あと第1回は欧州大会のみ、第3回は欧州大会と北米大会の2分割開催だったので、映画のように世界代表集結というか、アジア代表が出てくるのは2015年の大会まで待たないといけません。まあこれ、日本の日産じゃなくて欧州日産の企画なので…

ちなみに、その2015年のアジア大会ウィナーはフィリピン出身のホセ選手でした。なぜ映画で韓国人になってるかというと、たぶん韓国人が日本人の4倍くらい映画館に通ってくれてるからです。史実がどうとかグランツーリスモは日本製だとか関係あるか!レースと同じく、最優先はスポンサー様だ!

さて、とりあえずはそのスポンサー様の目の前で、スポンサー様からご提供いただいたGT-Rに堂々と腰かけているヤン含めた3人は即失格でいいと思うのですが、おっさんは優しいのでそんなことを咎めません。ゲーマーがいかにレーサーになれないかを、経験者の立場からとうとうと語ってくれます。

「レース中のGは宇宙飛行士が感じるそれの2倍」

(ジャック)

流石にそれは嘘だよジャック。

【そこまでGはかからない】


G、とは重力加速度のことです。

レースでカーブを曲がる際、車には強烈な遠心力がかかりますが、それは中にいる人間にも同じです。身体はカーブの外に向けてすっ飛ばされそうになり、内臓は偏り、首は持っていかれ、そして変顔になります。コーナリング中にヤンがあんな普通な顔を保っていられるのは、まさしくこれが映画だから。

では、具体的にはどのくらいのGがかかるのでしょうか。

レース中に首にかかるGは誰でも簡単に体験することができます。
枕を使わず、横向きに寝転んでください。頭は床につかないように。

どうですか?これが横1Gです。
頭ってけっこう重いですよね。ヘルメットしてるともっと重いです。
コーナリングスピードの速いF1では、ここに最大で縦横6Gがかかります。頭の重さが6倍になった状況を想像してみてください。F1ドライバーの首がラオウかってくらい太いのも納得ですね。北斗の拳の人たちはおそらく耐G性能が高いと思います。

ただし…縦横6Gはモータースポーツのなかでも極端に制動力とコーナリングスピードが高いF1の、かつごくごく一部の超高速コーナーでの話です。脚本家の知識供給源が"Formula 1: Drive to Survive"のそれしかなさそうなので単に知らないだけだと思いたいのですが、ルマンを走る耐久レース用の車(LMP)だと、トップカテゴリーのLMP1でも最大で横3G前後。横4Gはおそらく到達した記録がないと思います。これはF1がLMP1の2倍速い、というわけではなく、遠心力は旋回速度の2乗に比例するためです。

横Gよりも数値が大きくなりがちなブレーキング時の減速Gでも、F1が最大で縦6.7Gという狂気の値なのに対して、LMP1は最大でも縦3.5Gです。


もちろん、これからヤンが乗る市販車改造版のGT-Rは、レース専用設計のLMP1よりブレーキング性能もコーナリング性能もさらに下がります。装着しているタイヤの性能にもよりますが、その値はおおよそ最大1.5G+αくらいです。

それを超えるG、具体的には横3G+αであれば軽くて旋回半径の小さいレーシングカートでわりと誰でも体験できまして、たいていの人が最初それでシートに当たる肋骨を痛めます。意外に思われるかもしれませんが、旋回性能≒横Gだけで言えば、質量のわりにタイヤ面積の広いカートのほうが600馬力あるGT-Rより大きいのです。

そして人間は(最初こそ変顔になりますが)皆さんが想像するよりGに対してずっと頑丈なので、横3Gですら健康な人ならすぐに慣れます。なお、ナガシマスパーランドのジェットコースターが瞬間的に4G出るそうですが、首を痛めないのはそれが横Gでないことと、あくまでも瞬間的な数値であるためです。前後4G/1秒と横2G/30秒では、身体への負荷はかなり違います。もちろん後者のほうがきつい。

ちなみにロケットの打ち上げでかかるGは、ロケットの機種にもよりますがスペースシャトルで最大3G、しかも飛行機と同じ座った状態でずっと進行逆方向にかかるので、かなりヌルいです。快適には程遠いですが、これも常人が耐えられないレベルではありません。乗ったことないけどJAXAがそう言ってる。


つまりおっさんは、そもそも大したことない例を使って、なにも知らない未経験者を脅しているわけですね。こっちが知らないと思ってぇ!こいつぅ!

なお、F15戦闘機は最大で9G機動を行うことができますが、このあたりが広告の煽り文にある「失神寸前のGフォースの衝撃」で、訓練した人間でも耐えられる限界です。乗ってみたいですね。まちがいなく耐えられませんが。映画『エースコンバット』はちょっと無理そう。

航空自衛隊の皆さまいつもご苦労さまです


宇宙飛行士の耐G訓練も、Gそのものへの耐性というより、主にGがかかった状態でどれだけ冷静に判断と操作ができるかの訓練です。また、非常用ロケットブースターを使った緊急脱出では(数秒とはいえ)最大20Gがかかるので、これは訓練でどうにかできるレベルではありません。ロケットの爆発に巻き込まれるよりは骨折の方がマシ、といったところでしょうか。

ということで、Gについておっさんが正しく伝えるとしたら、

「極端なトップカテゴリーのマシンに乗らない限り、レース中に感じるGは宇宙飛行士と同じで、戦闘機の1/3。最大値で比較するとジェットコースターと同じだが、Gはかかる方向と時間で身体への負荷が大きく異なるので、数値だけで判断しないように。大丈夫、みんなすぐ慣れるレベルだから」

となります。なんとも締まらないですね…


あと、ここらで触れておきましょう。大事なことなので。

【おっさんは非実在中年男性】


おっさん、現実にはいなかったそうです。非実在中年男性です。

なのでおっさんの言動、行動、経歴、ひととおりぜんぶ創作です。
映画「グリーンブック」のトニーリップ部分がまるまる創作、といった感じでしょうか。あの映画もだいぶ実話か脚色かで叩かれていましたが、少なくともトニーは実在したのですからだいぶ良心的です。そういえばあの映画も、最後は写真とテロップでしたね。

いちおうモデルになった人物はいますが、その人は1996年からずっとニッサンのレーシング部門で働いていて、GTアカデミーにいたということもない。その人はレースエンジニアでありマシン設計者なので、レーサーでもなければルマン24時間レースで走ってもいません。話に聞くかぎりではこんな性格だとも思えない。

おっさん、めっちゃ面白いんですよ。この映画の面白さの大部分がおっさんだと思う。僕もおっさん好き。こんなおっさんが現実にいたら、めっちゃ面白いと思う。でもいなかった。仕方ないね。おっさんは実話じゃないけど、だから面白い。

でも、おっさんが実話じゃないとしたら #実話だから熱いグランツーリスモ ってなに?

この映画からおっさんを抜いたらたぶんエンタメとして成立しないんですが、おっさんという、その超重要な部分が創作。自称実話がベースのはずなのに、おっさんの元になった実話は存在しない。なのにプロモーションは「感動の実話」。他の人の感想を見ていても、おっさんが実在したと思っている人がちらほら。

まさしくこれは “詐欺師は大きい嘘の中にひとつまみの真実を入れて騙してくる” だと思うんですが、どうなんですかね。それとも、広告の世界ではこのくらいのトリックは当たり前なんでしょうか?

おっさんがいいキャラしてて面白いだけに、とても残念です。


現実世界の車のコントロールに苦労する受講生たち。

ただ、めちゃくちゃ苦労してる!というわけでもなく、グランツーリスモでやった!という感じでもなく。そして、インタビューではあの手この手でグランツーリスモをヨイショ。

「君が凄いのは分かったから、そう何度も言わなくていい」という、さっきニコラスくんがかけられてた言葉をそのまま返したくなりますね…

うがった見方をすると、ここにはプロモーション上のジレンマがあって、実車にめちゃくちゃ苦労してる!にすると「グランツーリスモってやっぱりゲームなんだな」となるし、グランツーリスモでやったから楽!となると「じゃあ練習量多いんだし、現実でも苦労せず勝てるじゃん」となってしまうんでしょうね。

わりとグランツーリスモに忖度のない、現実の第1回GTアカデミー2008の様子はこちらです。


ウェット路面のABSの作動(ガガガッってやつ)に驚くあたりが若葉マークみたいで微笑ましい。君は悪くない。リアルだリアルだ宣伝しながら、未だにペダルフィードバックも返してくれないグランツーリスモが悪い。

けど、全体的に思ったよりも酷いですね…当時のグランツーリスモではクラッチペダルとHパターンシフトのある高級ハンコンがほとんど普及していませんでしたし、もし大枚をはたいて買ったとしても半クラの再現はありませんでした。そのせいか実車ではその弊害がモロに出て、結局はリアルドライビングの経験が多い人間(元レーサーとタクシードライバー)が残るという、ちょっと夢のない結果に。

なので、

「グランツーリスモで運転が上手くなったんじゃなくて、もともと運転が上手いやつがグランツーリスモで遊んでただけなんじゃないの?」

というのはまあ、日産上層部からチクチク言われたのかもしれません。最終選考にリアルドライバーばかり残ればそう言われても仕方がないし、本当は1回きりの企画のはずだったGTアカデミーを2期、3期と続けることになった背景にはそうした事情もあるのかもしれません。将来的にルマンで3台走らせるつもりなら頭数が足りませんし。

なので、そんな中で出てきた、ほぼ純ゲーマー出身と言っていいヤン選手はすごいです…

…とできれば言いたかったのですが、実は彼も幼少期にカートレースをやっていてその時点で既に速かった、みたいな話もあるので、じゃあそれが本当なら結局グランツーリスモは速さに関係ないのでは?ということになり、なんだかそこもモヤッとするところです。

映画に戻りましょう。

「三角コーンを次々なぎ倒したな?ボーナスポイントだ!」

(ジャック)

グランツーリスモには「パイロンチャレンジ」という、制限時間内にいくつの三角コーンを弾き飛ばしたかを競うミニゲームがあります。
おっさん!あんたもグランツーリスモ遊んだことあるだろ!

ジョリーン・空条みたいな髪をした女の子を演じているのは、スーパーカー弄り系YouTuberのミス・エメリア・ハートフォード。現実のレースにも参加している女傑なので、もし出演俳優でレースさせたらこの人が最速でしょう。現実のGTアカデミー2011に女性はいなかったのですが、GTアカデミー2016では初にして最後の女性ファイナリスト、エリーゼ・メノルカ選手が出てきたので嘘ではありません。


なお、オーランド・ブルームは脚本的に乗る必要がないのに自分が乗るシーンを要求し、結果としてGT-Rを1台クラッシュさせたそうです。なにしてんのオーランドブルーム。まずはグランツーリスモで練習してきて。

アカデミーで使われているマシンはR35型GT-R。
現実ではいわゆるフェアレディZ(Z34型)だったようで、映画は現実よりも予算が豪華です。うがった見方をするとZ34はもう販売が終了しているので、映画に出してもなんのプロモーションにもならない・・・くくく・・・商売上手だよナ・・・

実際、オーランド・ブルームも「これはマーケティングのバカ騒ぎMarketing extravaganzaだ!」ってメタ発言してるし。

おっさん、ヘリに乗ることを断固拒否。

"CAPCOM"と書いてあったからではありません。劇中で直接的には語られていませんが、おっさんはかつて遭遇した事故のトラウマで、速度が出て浮くもの全般が苦手です。悲しい過去があるんです。伏線なのでごましお程度に覚えておいてください。

と思ったら次のシーンで乗ってた。即落ち2コマかな?

ついでに助手席だけどレーシングカーにも乗ってるし、後ほど自分でポルシェも運転します。なんだその中途半端なトラウマは。

思ったようにブレーキングできず、クラッシュするヤン。
笑顔で喜び、煽りワードを口にする同期生。

いや競争相手とはいえ同期のヤンが、鬼教官とはいえおっさんが乗る車がクラッシュしたんだが?形だけでも心配しないか?
大会よりも股間のジョイスティック優先なさっきのヤンといい、こんなんで「ゲーマーじゃない。アスリートなんだ」って言われましても…

映画の後半でも察せますが、おっさんもスポーツマンシップとかマナーは教えてないみたいです。

座ったまま脱出せず、クラッシュの言い訳をするヤン。

クラッシュしたら全ては後回しです。速やかに車外に出てコース外に退避し、手を振って医療隊とコース脇の係員に無事を伝えましょう。

車に座ったまま出てこないとわりと大事になります。事故発生の時点でFRO(ファースト・レスキュー・オペレーション)車両や救急車(メディカルカー)がピットからレースカーもかくやの勢いで飛び出しているはずですが、さらにスピードを上げて急行。メディカルセンターのレースドクターは医務室に飛び込んで緊急体制。場合によっては近隣の病院へ連絡して応援要請か、ドクターヘリがあるなら発進準備。近くの係員は「一番近いのは…ああ、俺かあ…ガソリン漏れてる可能性のある現場に今から走っていって、ヤンの野郎を車から引きずり出さないといけないな…」という、やりたくもない命懸けの覚悟を無用にキメることになります。怒られます。めちゃくちゃ怒られます。エヴァから出てこないシンジくんよりも怒られます。

おっさん、基本的な安全講習もやってない疑惑が発生。

ところでクラッシュは恐ろしいことですが、そのせいでモータースポーツを常に命懸けの、明日の命も知れないような恐ろしいスポーツだと思っている人がいます。

ですがアイルトン・セナ選手の死以来、現代のモータースポーツは急速に安全になりまして、今や最高峰のF1やルマンでも、いや最高峰だからこそ、死亡はおろか怪我ですら珍しくなりました。これは安全なマシンの規格標準化、安全装備の普及、救護や消火体制の整備など各方面の努力が結実した結果であり、その努力は現在も弛まなく続けられています。

例えばある程度以上のクラスのレースカーでは、ガソリンタンクは市販車と異なる強化ゴム製の搭載が義務化され、クラッシュして変形しても滅多に漏れなくなりました。クラッシュ!どかーん!大炎上!は映画でも後で出てきますが、現実では非常に珍しいです。中日ドラゴンズのほうが日頃からよほど炎上しています。

私も家族が「登山かモータースポーツかどっちかやりたい」と言ったら、間違いなく後者を勧めるでしょう。ただし4輪に限る。というか登山と2輪が死にすぎ(ry

またこれも余談ですが、運転スキルや車両の安全性能、医療体制も考えると、公道、特に夜の高速道路のほうがよほど死と隣り合っている、という事実は運転するすべての人が覚えておいて然るべきだと思います。300km/hも必要ありません。人は60km/hで死にます。

その日の夜。

おっさんのモノマネをして盛り上がる受講生たち。
やるやる〜!!
それで先生に「全部聞こえてるぞ!もう寝ろ!」とか言われてベッドに飛び込むやつ〜!!

ところで、もしあなたが本当にレーシングドライバーになりたくて、それにもかかわらずクラッシュしてしまったなら…その日の夜は必ずピットへ行き、最後のスタッフが帰るまで必ず残りましょう。なぜなら、ゲームと違って現実のマシンは勝手に直らないので、自分のせいで突然の残業を強いられることになったスタッフが間違いなく存在するからです。彼らに謝罪し、ひとりひとりにお茶を出し、マシンの破損状況を尋ね、求められれば手伝い、(耳が痛いことだと思いますが)残業の愚痴を聞きましょう。

それだけで、あなたはレーシングドライバーとして成功できる確率が上がります。なぜならスタッフがマシンをきちんと整備してくれるようになるからです。

「クラッシュして、ごめんなさい」

「いいんだ。きちんとバトルした結果だろ?残業手当も出るしな。でも、今度からクラッシュは水曜にしてくれよな!木曜はうちのガキを迎えに行かないといけないし、金曜はパブに顔を出さないと仲間が心配するからなあ!ワッハッハ!」

「おまえ大物だな?俺なんて、初めてクラッシュしたときは恥ずかしくてピットに近寄れもしなかったよ!なぁに大丈夫だ、明日までにきちんと直しておいてやる。そこまで神経図太いんだから、今日は大人しく寝ておけよ?」

「未来の大物のマシンを修理できるなんて、俺たちも鼻が高いな!」

ワハハハハ…


こういった関係が理想です。ちなみにこれぜんぶ『カペタ』で見た。

逆に、クラッシュしたくせにそんなこともできないドライバーには、そもそも残業してまでマシンを直してくれません。それだけ練習できる時間が減り、勝つチャンスも減ります。

グランツーリスモはゲームですから最低1人でも完結しますが、現実のモータースポーツは違います。辛い姿勢で車の整備をしてくれるメカニック、スポンサーと折衝してくれるチーム経営者、コース脇で命懸けで安全を確保してくれる係員、チケットやポップコーンを売ってくれるスタッフ、ファンをサーキットまで運んでくれる鉄道職員。そして、そうした人たちを支えてくれる家族。

誰ひとり欠けても、ヤンが安全に、自信を持ってマシンを走らせることはできません。自分をマシンに乗せてくれている彼らに感謝し、リスペクトすることが、レーシングドライバーに…というより、すべてのスポーツにおける基本中の基本です。

ですが残念ながら、この映画ではそこの描写が致命的に欠けています。

それどころかヤンはリアルレーサーになったら最後、ゲーマーはもう卒業。選考会で助けてくれたゲーマー友達に言葉すらかけないんですよ。ゲーマーにとって友達は大切な友達であって、先に行ってログインしてくれる都合のいいNPCじゃない。レーサーどころかゲーマーに対する描写まで解像度が低い、まるでWii U、いやWii U以下の解像度です。現実のはずなのに、現実味が薄い。薄い薄い薄い。後になって「ひきこもりゲームオタクの妄想でした^^」みたくユアストーリーするのでは?と疑うくらい。

現実とグランツーリスモの違いを出すとしたら、まさしくこういうところでだろ!
監督はブレーキフルードに水混ぜられてs…(自主規制)

というかおっさんも、自分の仕事に対するドライバーのリスペクトがなかったから、敵のチームを飛び出してここにいるんですよね?
環境へのリスペクトがないという点では、さっきのニコラスくんとさほど変わりませんよ、彼ら。

翌朝。

リプレイビデオを前にネチネチと「ご指導」するおっさん。
でもおっさん、誰がどうブレーキ踏んでもそこからは抜けませんて。

ちなみに映像で見る限り、おっさんがやらせようとしているのは規則で禁止されているレベルの危険な追い抜き(オーバーテイク)手順です。現実でもゲームでもあんなオーバーテイクを決断してはいけません。スタントの技量が低いのか、予算とスケジュール的にクラッシュ厳禁で接近できないのかは分かりませんが…

壁に貼られている標語は

Straight Roads Are For Fast Cars, Turns Are For Fast Drivers.
(直線は速い車のためのもの。カーブは速いドライバーのためのもの)

(Colin McRae)

初代グランツーリスモと同じくらいリアルだったラリーゲーム「コリン・マクレー ザ・ラリー」でご存じのゲーマーもいると思います。あの名ラリードライバーにして世界最速のスバリスト、コリン・マクレー選手の名言です。

車のパワーに頼って直線で抜くようなドライバーになるな!技量を身につけてコーナーで差をつけろ!という、おっさんからの叱咤激励を感じますね。

…まあこの映画、直線で抜くシーンしかないんですけどね。(CG以外は)

おっさん「ちゃんとブレーキ踏んだか?」
ヤン「踏みました。でもフェードしてて」

フェード、とはブレーキが酷使で過熱し、突然制動力を失う現象のことです。フェードには制動力の低下や異臭などの予兆があることもありますが、レースでは全くの突然に発生することもあります。

おっさん「なぜ分かる?」
ヤン「何年も走り込んできたから」
おっさん「ゲームで、だろ。これは現実だ!」

所詮はゲームと馬鹿にするおっさん。
それに食ってかかる若者、というシーンですね。

調べてみると実際にブレーキはフェードしていたので、若者の勝利。
言いかえればグランツーリスモの勝利です!

ですが…

【グランツーリスモにフェードの再現はない】


ありません。
グランツーリスモではブレーキの過熱を気にする必要はありません。

なのでヤンがグランツーリスモを何年走り込んでも、フェード現象を体験することはできなかったはずです。

そのため、ヤンが

「車のメカニズムにも詳しい」
「口だけじゃない」

と言うたびに…なんというか…制作側の意図と全く逆の印象になります。
完全に、ゲームの知識だけで有識者にイキっていく恥ずかしいキッズです。

というかこの映画はグランツーリスモの宣伝だと思うのですが(名推理)、これを見てグランツーリスモ始める人は、実際にプレイして落胆したりしないのでしょうか?

あまりにも「現実のグランツーリスモ」との乖離があるんですが、これ壮大な誇大広告では?大丈夫?アメリカとかで訴訟にならない?むしろ訴訟して?

【そしてデータロガーがある】


また、レーシングカーにはデータロガーが搭載されており、ブレーキを含めたすべての操作系をいつ・どこで・どのくらい操作したかがリアルタイムで記録されています。というかそれを解析するのがおっさんの仕事です。

フェードの場合、ブレーキを同じだけ踏んでいるのに制動で発生する減速Gの値が直前や前の周より少なかったりすると「ああ、ここでフェードしたんだな」ということが分かります。

ドライバーが口でいくら弁解しても、ロガーは嘘をつかない。ロガーに記録されたすべての値について、エンジニアに対し納得のいく嘘をつくことは困難です。踏んだ踏まないのごまかしは一切効きません。

ですからドライバーがイキった場合、現実には…

おっさん「ちゃんとブレーキ踏んだか?」
ヤン「でも、ブレーキがフェードしてて」
おっさん「そう言うと思ってロガーのデータを持ってきた。おーい!みんなも見てくれ!いい勉強だ」

──このようにして「公開処刑」が始まります。

分岐1:フェードはしていなかった。ブレーキもとりあえず踏んだ

おっさん「ここだ。前の周より遅くブレーキングを開始しているのに、ブレーキを踏んだ量は前の周と同じ。もちろん制動Gも前の周と同じ。制動Gが同じということは、フェードはしていない」

ヤン「……」

おっさん「いろは坂のサルか?!?!ちったァ頭つかえよ!!スピード出てるのに同じ量しか踏まなかったら、止まれねぇに決まってんだろ!!!」

おっさん「出て行け!帰って家で頭文字D Another Stageでもやってろ!!」



分岐2:フェードはしていなかった。ブレーキもきちんと踏めていない

おっさん「ここだ。ブレーキを踏んだ量が前の周より少ない。このブレーキの踏み込み量は、だいたいこの1つ前のターン4と同じだ。制動Gもターン4と同じ。だからフェードはしていない」

ヤン「……」

おっさん「このチキン野郎!!チキンに加えて嘘までつくのか?お前はファミ通の攻略本より信用ならん!!」

おっさん「出て行け!帰って家でチョコボグランプリでもやってろ!!」

おっさん「レーシングじゃないほうだぞ!!!」


分岐3:本当にフェードしていた。ブレーキもきちんと踏んだ

おっさん「ここだ、ターン5。抜くために、前の周より遅くブレーキングを開始して…おっと、ブレーキを踏んだ量は前の周よりだいぶ多いのに、制動Gはだいぶ少ないな?ということは本当にフェードしたようだ」

ヤン「だから言ったでしょ?」

おっさん「うむ、疑ってすまなかった」

おっさん「では、その直前のターン4を見てみよう。ターン4では最初、前の周と同じ量の軽いブレーキを踏んでいる。だが、減速Gの立ち上がりは な ぜ か 遅かった」

おっさん「だからお前は反射的に…ここだ。ここで踏み増しして、どうにか辻褄を合わせた」

ヤン「……」

おっさん「ターン4での減速Gの少なさは俺も隣で感じていた。だが俺はてっきり、最初にブレーキを踏んだ量が足りず、途中で踏み増したものばかり。まさかフェードの予兆が出ていたとはな」

ヤン「……」

おっさん「ヤン!1!!!この馬鹿野郎!!1!!俺を殺す気か!?!?」

おっさん「どうせ『いま前を抜かないといけないし、次のターン5までにブレーキが冷えたらいいな』とでも思ったんだろ!!!」

おっさん「冷えなかったらどうするんだよ!?隣に俺が乗ってるんだぞ!?これはゲームじゃないんだ!!」

ヤン「違います。単にフェードの予兆だと分かりませんでした」

おっさん「もっと悪いわ!!お部屋でグランツーリスモばっかりやってないで、外に出てお前の彼女のムーヴキャンバスで峠の1本でも攻めてこい!!長い峠だとマジで途中でブレーキ終わるぞ!!」

ヤン「もうそういう時代じゃないんスよ」

おっさん「やかましい!!帰って地元のゲーセンでアウトランでもやってろ!!」


番外編:フェードはしていなかった。ブレーキもきちんと踏めていた

おっさん「ここだ。前の周より遅くブレーキングを開始しているから、ブレーキ…を…!?」

ヤン「……」

おっさん「ブレーキを…前の周より強く踏んでいるな?制動Gも、ブレーキを離す最後まできちんと発生している。フェードはしていない」

おっさん「なのに止まれなかった。それは…」

ヤン「先生、それ以上は…」

おっさん「それは…俺の指示したブレーキングポイントが遅すぎたからだ。完全に、俺のミスだ」

受講生「マジかよ…?」ザワザワ

おっさん「まさかヤン、おまえ、俺をかばって…?

ヤン「先生…」

すまん!と叫んでヤンに抱きつくおっさん!巻き起こる拍手!
ヤンが「バレちゃいましたね」と呟く!その言葉に号泣するおっさん!
ちょっと恥ずかしそうな笑顔のヤン!笑顔の受講生!涙でくしゃくしゃのおっさーーーーーん!ヤーーーーーーーーーン!!!

こうしてGTアカデミーと受講生の絆はいっそう深まったのだった!!!

映画グランツーリスモ、完!!!

……

ここで終わればどんなに良かったか。

話はコースに戻り。

なんか知らんけど無傷のヤンのGT-R(ゼッケン2番)から降りてくる、別のおっさん。

だから現実はゲームじゃないんだぞ。そんなすぐ直るか。
たぶんスタッフ総出の徹夜で修復したと思われますが、ヤンはその夜に同期生とモノマネでふざけていたので、ただただヘイトが溜まります。

なお、おっさんは過去のトラウマでレースカーを運転できない設定なので、マシンから出てきたのはレースカーを運転できるおっさん2号です。レースエンジニアとしてはともかく、トレーナーとしてはおっさん1号の上位互換では。

「ヤンが正しかった。ブレーキのフェードだ」

(おっさん2号)

?!?!?

何?何を?何を確認してきたの?!?!?
ブレーキが冷えればフェードはその場で直るよ?!?!?

まさか原文は「フェード」じゃないのか?
と思い至り、ここで字幕に切り替え。

あー字幕も「フェード」だけど、役者さんは”Glazing”って言ってるな。
そういうことか。

グレージングとは軽いブレーキをかけ続けたりブレーキが冷えすぎたりして起こる現象で、ブレーキパッドを構成する樹脂が溶けてブレーキの表面で固まってしまうことで、ガラスのような「ツルツル」状態になり制動力が失われます。

直すにはブレーキパッドを交換、樹脂の貼りついたディスクは取り外して再研磨です。フェードと違って冷えても治らない、面倒な作業ですね。しかし他の受講生はグレージングしてないということは、ヤンがブレーキの温度管理をミスした疑惑が…

ん?
じゃあこのおっさん2号は、グレージングしてるかもしれないブレーキでそのままコースに出て行ったってこと?

そんな「命綱が切れていないか確かめるためにバンジージャンプ」みたいなことを??
ロガーを見ろとか以前に、修理でホイール外したときにグレージング分からん???

グレージングしてるブレーキで1周走って帰ってきたおっさん2号、強者つわものすぎる。
「ヤンが正しかった。驚いたよ」とか言ってるけど、俺はお前の度胸に驚いたよ。命は大事にしてクレメンス…

なお字幕も吹替も「フェード」なので、おっさん2号が試乗するこのシーンは原文を聞かないと理解不能なのですが、よく考えると忠実に「グレージング」にしたところでこのおっさん2号がただ狂気なだけというどっちみち理解不能なシーンでした。翻訳の人も悩んだことでしょう。「摩耗」とか「固着」でも良かった気はしますが。

次に行きましょう。

おっさん「なぜグレージングしたことが分かったんだ」
ヤン「ゲームでさんざんセッティングしてきたからです」

そもそもなぜおっさんは横に乗ってて分からなかったんだ、というのを差し置いても、これはだいぶ噛み合わない会話です。車のセッティングとグレージングは関係がないし、むしろ関係があるのはお前の運転だし、そもそもグランツーリスモにはフェードもグレージングもありません。なぜヤンがグレージングを認識できたかは本当に謎です。逆にデータロガーはグランツーリスモにも存在するので、ヤンがそれに言及しないのも謎です。

まあ、監督と脚本がグランツーリスモやったことない説ですべてが説明できてしまうのですが…

「グランツーリスモはただのシミュレーターじゃない。本当によくできてる」

(ヤン)

ヤン、君がドヤ顔するたびにグランツーリスモに対する期待値が上がっていくよ…!!
きっと凄いゲーム、いや、シミュレーターなんだろうな…!!

さて全員にとって大事な選考レースの前夜。
イヤホンから盛大に音漏れさせながら眠るヤン。

これが現実かフルメタルジャケットなら石鹸制裁待ったなしなのですが、幸いグランツーリスモなのでみんなが優しい。

でもなんで(グランツーリスモで1回もBGMとして採用されたことがない)ケニーGなの?

と思ったら、現実のヤン選手がそうだったから、らしい。

いやもしかしてバランス取ろうとしてる????
そんな微妙なところで実話を入れてきても、この船はもうだいぶ創作側に傾いてきてるよ!?!?!

というか…そこはさあ…同じサックスが最高にカッコいいグランツーリスモの名曲、安藤正容氏の”Freedom To Win”とかにしませんか?

グランツーリスモプレイヤーなら親の声より聞いた曲ですが、この映画、頑なにゲーム音楽を使わないんですよね。効果音とかと違って権利問題があるんでしょうけど、いまグランツーリスモ遊んでくれてる人や、かつて遊んでた人へのファンサ、一切なし!という感じ。ご新規さんを騙して増やすための映画です。一応プレステのSEは入るんですが、既存プレイヤーからしたら「そこでその音は流れねえよ!」ですし。

まあこの映画、企画段階ではグランツーリスモ関係なかったそうなので、しかたがないと言えばしかたないのですが…

おい同じソニーが作ったマリオの映画見ろよ。俺あんなファンサしかない映画でも、羽マリオが出てこなかったからちょっと不満なんだぜ。

ところでこれを読んでる君!グランツーリスモはやったことあるかい?ない?よかった…本当に…悪いことは言わないから、Switchで友達と楽しくマリオカートしなさい。いいね?こちらに来てはいけない。大人になってからこんな陰湿で長い記事を書く暗いオタクになるぞ。レーサーになりたい?じゃあこんな記事読んでないでPCとハンコンとコクピット買ってiRacingやれ。今すぐ。今すぐだ!

そして選考レース本番。

GT-Rの年式とグレードがバラバラで選考のわりに全然イコールコンディションじゃないのですが、そんなところに気がつくオタクを大切にしても何の得にもなりません。どれがヤンのGT-Rなのか分かりやすくていいね!

「全部同じじゃないですか!?」
「ちがいますよーっ!」
「これだから違いの分からない男はダメだ!もっとよく見ろ!」

「ヤンのGT-Rは標準モデル。デイライトをオフにできているので17年か18年型だ。19年型や20年型と一瞬迷ったが、フロントバンパー左右の可飾で判断できる。他と外観を似せるためか、ホイールとリアウイングはNISMO仕様」

「マティたち3人はGT-R “NISMO” 20年型。NISMOの18年型とはフェンダーアウトレットの有無でかんたんに区別できる。標準モデルとはブレーキもパワーもまるで別物だから、めちゃめちゃ有利だぞ」

「可哀想なのがヤンに抜かれるシーンすらカットされた韓国人だ。こいつだけGT-R NISMO 13年型。決して遅い車ではないが、20年型との差は大きい。新人俳優らしいが、彼が何をしたっていうんだ」

「あと、このところどころ挟まるサスペンションの映像は…なんだろうな?GT-Rの脚周りではもちろんない。例のあの野郎が映画で箔をつけて売り抜けようとしたGT-R NISMO 8A01のそれでもないし…」


ヤンはまたまた予選最後尾からスタート。
グランツーリスモ7でもオンライン対戦以外は予選がなく強制的に最下位スタートなので、再現といえば再現です。

「ゲームで遊ぶだけ。これはただのゲームだ」

(ヤン)

シミュレーターじゃなかったんかい!!

しかし(叫んでるだけで特に何か特別なことをしたわけではないけど)ゲームみたいにどんどん抜いていくヤン。
そして最終ラップで2位に。

1位とは超接戦。
ほぼ同時にゴールラインへ飛び込む2台!
勝負はビデオ判定にもつれ込んだ!!




【ビデオ判定はしない】


せん、よなぁ…?

せん、よねぇ…?

もしかして、すると思われとる?

えー、レースカーにはトランスポンダーという発信機が貼りつけてありまして、そこから発信する電波を計測して毎周1000分の1秒という精度で計測をしています。それはどんなアマチュアレースでもそうです。サーキットでやるママチャリレースですら使います。周回数を数えるのダルいからね。

なので、ゴールラインを通過した瞬間に順位が出ます。
だからどっちが1位だとか、こういう茶番…いやもう、本当に茶番ですよね…は、現実では絶対にないです。

最初「競馬かよ!」って思ったんですが、調べたら競馬も最近はマイクロチップとかで判定するらしいですね。

なお、着順決定ではなくペナルティの判定のためにビデオ判定を用いることはあります。コースからはみ出したとか、どっちがぶつけた、とかの判定ですね。

ビデオ判定の結果に異を唱えるダニー。

「100万分の1秒がどうしたってんだ!」
「(マーケティング的に有利なのは、ヤンではなく2位の)マティだ!」

(ダニー)

100万分の1秒…
俺の知らない計測システムがある世界だったか…

100万分の1秒の差なら、俺もマティを推すかもしれない。マティがどうかは分からないが、少なくともヤンには今のところ、その言動と行動にスポーツマンシップがカケラも見られない。ヤンを採用しても将来的に間違いなくやらかす。例えば警察との公道カーチェイスとか。それはもうやってる?マジで?それ表沙汰になったら選手生命終了モノじゃない?

はい、ヤン優勝。
よかったね。おめでとう。

ところでヤンさん、なんかおっさんと意味深な視線を交わしていましたが、何かあったんですか?
もしかしてこの世界は、ラップタイムじゃなくて忖度でレースの順位が決まるんですか?
どうなんですか?答えてください!ヤンさん!

ちなみに現実のGTアカデミーでは、最後の選考レース1回で結論なんてことはもちろんなく、プロレーサーがそれまでの成績含めて総合的に判断を下していました。そのため忖度の入る余地があると言えばあるのですが、史実のヤン選手は最終レースで予選トップからミスでいったん2位に落ち、なのにそこから抜き返して2位に8秒という大差をつけて優勝。その他の成績も優秀で、アカデミーでは文句なく首席卒業だったそうです。圧倒的優等生です。

すごいじゃん、現実のヤン選手。でもヤン選手、映画で問題児かつレースも大差→僅差に改悪されとるぞ。そこは怒らなくていいのか、ヤン選手。

ここまでで、嘘が盛りだくさんのGTアカデミー編が終了。

次回からヤンは現実のプロレースに参加し、それに伴ってグランツーリスモみもどんどん薄れていきます。

乞うご期待。

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