研究者日記 Day22
現在関わっているプロジェクトの一つ
市民のみんさんから一緒に水中遺跡について考えて実際に調査を主体となって行ってくれる人を募集しています。
ここでは、海洋文化遺産と呼んでいますが、それは、海と人の関係を重視しているからです。別に水中にだけ特化しているわけではありません。海に関する知識を高めるプロジェクトであり、海と人の関係の歴史を学びます。その中で、特に水中に存在する遺跡があまり知られていないので、そこに焦点を当てます。ですが、本質は、海に関して、人と海の関係の歴史を探ることにあります!
市民参加型の水中遺跡調査を行います。大人の自由研究と考えてもらえるといいです。我々研究者は、市民の活動をサポートします。我々は、オマケのようなものであって、あくまで主体は市民ー募集により集まった方々です。誰でも参加可能。期間は4年間。実は文部科学省の事業の一環です。広く市民にも海洋についての知識を知ってもらい、海洋の総合知を高めること。
現在は、瀬戸内海を中心に進めているプロジェクトですが、後に全国展開します。
市民メンバー申し込みの締め切りは4月30日
私たちが目指すもの…
このプロジェクトの感想を正直に言うと…
最も難しい
わかりにくい
成果が見えにくい=そもそもプロジェクトの成果とはなんだ?
成果として認められにくいー本人の研究成果にならない?
前例がない
研究ではない(文科省曰く)
という、厄介なプロジェクト
しかし!
日本の水中文化遺産保護の未来を考えると最も重要なプロジェクト
これは、断言できます。
なぜか…
世界を見ると、水中遺跡のそのほぼすべては、考古学には全く無関係の人々による発見が契機となっています。また、水中遺跡の9割以上は、海岸のすぐそば、我々が普段から目にする場所に存在しています。
水中遺跡の取り組みが進んでいる国の特徴に、市民の間にも水中遺跡に関する情報がよく知られている国があります。統計はありませんが、研究者だけが調べている国、国の主導者だけが進めている国は、やはりなかなか国として水中遺跡の保護が巧く行っていません。
水中遺跡は、どこにでもある。
下の図ですが、オランダ・イギリス周辺の「水中遺跡の存在が知られているポイント地図」に西日本の地図をサイズを合わせて貼り合わせたものです。
数万点の水中遺跡がありますね。これらの多くは、漁師による情報、そして、海洋開発(洋上風力発電)に際して行われるアセスメントにより発見・登録されたものです。
この二つは、水中遺跡を発見する上で最も重要です。それ以外での発見は、ほとんどありません。考古学者が何も情報がないところを探査するほど無駄なことはありません。市民からの情報を得て、探査を実施する。それが鉄則。
ところが、日本ではその二つの精度が存在しない・曖昧です。
漁師など引き揚げ・水中遺跡を発見した時の報告の義務が曖昧
海洋開発に際してのアセスメントの義務が存在しない
市民に広く水中遺跡の知識がない
これら3つの条件が存在しないため、日本の周知の水中遺跡の数は、他国に比べ1/10~1/100しかありません。でも、本当はもっと多くの水中遺跡があるはずなんです。
これを、変えていくためのプロジェクトだと考えています。
焦点の当てられる機会の少ない水中遺跡を発見
海についての知識を高める
将来的に、水中文化遺産の保護の体制を強化なモノにしていく