【才の祭】きみが笑ってくれるなら☆俳句まで!
その日、明らかに彼女の後ろ姿は落ち込んでた。
いつも静かな君が、人知れずしょんぼりしている様子を見ると胸が痛い。
自分の気配すら消して、体ごと消えようとしてるみたいで、目が離せなくなる。
「なんかあった?」
部活の帰り道、たまたま見かけた自信なさげな後ろ姿。
小さな勇気を出して、追い抜くタイミングで声を掛けてみた。
「え?」
長い髪で隠れてた耳を一瞬で赤くした、きみの戸惑った顔。
メガネの下の目が大きく開いて僕を見つめて、なんだか僕の頬も熱くなってきた気がする。
やばい。漏れてる気がする。何がって何かが、だ。
「元気なくね?」
更に言葉を重ねると、彼女は俯いてゆっくり話してくれた。
美術のデッサンを描くのが終わらなくて残って作業してたら、
一緒に残ってた男子生徒から、描くのが遅いとかお前はトロいとか言われて落ち込んでたらしい。しかも居残りでも終わらずに持ち帰りになったらしい。
「そんなに丁寧に描いたって、お前の絵なんて入賞した事ね―だろって言われちゃって。確かにそうなの。わざと遅く描いてる訳でも、好きで遅い訳でもないんだけど、言い返せなくて。言い返せない自分が本当に情けなくて。」
無理して笑おうとするけど、笑顔になれない中途半端な表情をみて、ふと言葉が滑り出た。
「そんな言葉、ほっときゃいいじゃん。
丁寧なのも遅いのも悪いことじゃねえよ!
周りに流されずに自分のペースで頑張ってるお前はすげぇよ。
つうか、そんなん忘れろ!」
俺の乱暴な言葉に目を丸くした彼女。落ち込んでる彼女にどうしても笑顔になって欲しくて、何か持ってないかポケットやカバンの中身を探ってみるけど何も出てこない。何でもいいから、何か!!あ!
「ほら。これ」
高校の通学バッグについてたブルーの万華鏡のキーホルダー。サッカーの夏合宿の時に買ったやつだ。弟へのお土産だったのに要らんと断られたから、プレゼントとしてはしょぼいけど、さっと外して彼女のバッグにつけた。
「合宿の帰り道のサービスエリアで買ったんだ。落ち込んでる暇あったら絵仕上げて、それでも覗いてろ。じゃぁな!」
赤くなる顔を見られたくなくて俯いて走った。
呆然とした彼女が何か言う前に、走って走って走って、、、逃げた。
「うちの優斗がそんなことを。へぇ~お兄ちゃんやるじゃない!」
頼む。誰かうちのオカンをどうにかしてくれ。白目むきたくなる。
俺の右隣の彼女ははにかみながら、あの頃のことを嬉しそうに話す。
何が悲しくてこっぱずかしいアオハルをオカンに暴露されてんだ、俺。
「優斗さんのおかげで、今の私があるんです。」
はいはい、そーですか。それはよかったね!
照れくさくて顔も見れやしない。
そう、あのことがきっかけで、彼女は万華鏡作家になった。彼女が作る万華鏡は不思議な色や形の組合せで癒されると海外からもオーダーが来るほどだ。マイペースでこつこつ作業する彼女に向いてる仕事だと思う。
あの後から地味に付き合い続けて7年。プロポーズにOKして貰って、彼女のご両親に挨拶に行って、今度は実家に連れてきたら恥ずかしすぎる大暴露大会。寿司などのご馳走を前に皆がにやついてるのが分かる。
オカンだけじゃなくて、弟までにやついててむかつく!
「7年もよくつきあってこれたよな、こんな兄貴と。
まだ若いのに結婚決めちゃっていいの?」
弟の嫌味に俺が口を出そうとする前に、
珍しく彼女がすっと答えた。
「のんびりな私と7年も付き合ってくれた優斗さんのが凄いです。
小さい頃から、親に”のんびり姫”って呆れられてたから
結婚するのはもっともーっと先だと思ってたんですけど、
気の早い赤ちゃんが来てくれたので。」
!!!
「あの~ぉ、初耳なんですけど。」
やばい、声が震える。
「うん、たまにはびっくりさせようと思って。
予定日はクリスマスイブです。」
嬉しそうに微笑む右隣の彼女の笑顔に呆然とする俺。
狂喜乱舞状態のオカンに、俺と同じく呆然とするオヤジと弟。
彼女の手が俺の手を掴んでお腹へと導く。
「私達がのんびりだから待ってられなかったみたいです。
赤ちゃんに結婚をせかされるとは思いませんでした。」
ダメダメ男子チーム筆頭の俺に、
ふんわり君が笑ってくれるなら、
もうなんでも大歓迎だよ。
「最高のクリスマスプレゼントをありがとう。」
親の前でも構うもんか。
彼女をそっと抱きしめて、優しい声で届けた。
🎄 画像はしろくまきりんさんからお借りしました。
可愛い画像をありがとうございました!!
🎄 PJさん、100まで届くといいですね( *´艸`)
🎄 のりこさんが俳句を詠んで下さいました!
大好きなのりこさんが、
まさかの ” 俳句へ展開 ” して下さいました (*´▽`*)
嬉しすぎて夢かと思いました😢
ありがとうございました💖
⭐ rira賞を頂いて嬉しかったです💖
まさかの受賞に大騒ぎしてしまいました( *´艸`)