地域に愛される駅南新川へ みんなで一緒にカモ・カモン!
浜松の街中。ひっそりと地下を流れる川がある。中央区住吉町一丁目から城北を起点とし、遠州鉄道の高架に沿い、新浜松駅、東海道線の高架をくぐり抜ける。八幡橋、元の市営駐車場を抜けると暗渠は解かれ、コンクリートで護岸された川が現れる。これが「新川」だ。この駅南新川をボランティアで清掃している人たちが、「カモ・カモンの会」のメンバー。地道な清掃活動の先には、壮大な夢があった。その活動とワークショップの様子をレポートする。
一人で始めた川掃除 地域に広がる輪
「護岸に描かれた絵は、当時はカラフルなものだったと思いますが、今では色褪せてしまっています。『誰も見てくれていない』という、新川からのメッセージだと思えてならないんです」
そう語るのは、代表の中山和子さん。
「新川に水鳥が来るんですよ。仕事の行き帰り、すごくかわいいなあと思って見てたんです。だけど、そのうち、川や護岸の汚さに気付いて、なんとかきれいにできないかという気持ちになりました」
当初、一人で川の清掃を始めたのだという。2021年4月に、周辺の住民からメンバーを集め「新川里親カモ・カモンの会」を発足させた。
「最初は浜松市の道路・河川里親制度を利用しました。道具の関係で草刈りが中心だったんですが、川の中のゴミを拾わないときれいにならないなと思って。そこから河川財団の助成金を利用して、川の中に入って掃除するための道具を揃えました」
現在では、近隣の住民や企業等から人が集まり、月1~2回のペースで活動している。通りかかった住民に「川がきれいになりましたね」と声をかけられることもあるという。地道な活動は地域にも浸透し、子どもたちやメンバーの知り合い、近隣の企業からの参加、小中学校との授業連携と徐々にその輪が広がっている。
里親から「かわまちづくり」を目指して
活動3年目を迎えた2023年、「カモ・カモンの会」は大きく舵を切った。
「拾っても拾っても、ゴミはどこからか流れてくるんですよね。誰かが捨てているものもあるんでしょう。ゴミを拾い続けるだけでは、何も変わらないと思ったんです」
どうすれば、新川を美しく保つことができるのか。中山さんが行き詰っていたところ、国土交通省が推進する「かわまちづくり」に出会った。水辺を活かして地域の賑わい創出を目指す取り組みだ。
「HPに掲載されている日本各地の先進事例を見て、こんな川を浜松にも作れたらと思いました」
地域に愛される川になれば、きっと今よりもきれいになる―。
会の名前を「新川かわまちづくり『カモ・カモンの会』」と改め、川の清掃だけでなく、駅南新川を活用した街づくりを考えていくこととなった。桜並木、川沿いのカフェ、水を身近に感じられる遊歩道、釣りができる公園…川の活用方法に夢が広がった。しかし、一体どんなことから始めたらいいのか。課題は山積だ。
ワークショップ開催 新川の可能性を探る
2023年12月17日、特定非営利活動法人グラウンドワーク三島の専務理事・渡辺豊博氏を招いてのワークショップが行われた。会場は新川沿いにある南部協働センター。
渡辺氏は、英国発祥のグラウンドワーク(※)の手法を日本でいち早く取り入れ、静岡県三島市街を流れる源兵衛川を中心とした街づくりを行った。現在も源兵衛川の環境保全に関わりながら、大学での指導や全国各地での講演等、国内外の環境活動を支えている。
(※)住民が行政や企業とパートナーシップをとり、専門組織がその仲介役を務める体制で行う実践的な環境活動。
渡辺氏はまず、駅南新川の現状にふれ、活用の可能性を示す。
「実はさっき、駅から新川に沿って会場まで歩いてきたんだけど、ものすごく可能性があると思いました。簡単に言えば、駅のすぐそばにあるってことですよ。歩いて10分もかからない。公園もあって、本流の馬込川との合流の部分というのも、ものすごくいい雰囲気ですよね。色々な制約は置いておいて、場所としておもしろい。川に人が集まり、そしてそこから商店街に分散して、また川に戻ってくる。街づくりの拠点になる可能性が充分にあります」
そのうえで、戦略性や組織作り等、現実的な話題も織り交ぜつつ、市民と行政が手を取り合い、現場へ出向き知恵を出し合いながら、ひとつひとつ実現させていくことの意義が語られた。
源兵衛川での経験や、その他の地域での先進事例も紹介された。岸も川底もコンクリートで固めてあったときには、ゴミ捨て場のようになっていたが、住民同士が話し合って緑を取り戻したことで、ほとんどゴミが捨てられなくなったという事例も。
「今コンクリートになっているから難しいって発想は捨ててください。頭を使いましょう」
講演後には、新川の現状や活用に関する意見交換が行われた。「駅の南側は暗いイメージも少しある。自然の色が付いて雰囲気が変われば、浜松の街全体にもいろんな可能性が生まれるのでは」「ひと区域だけビオトープにしてはどうか」「壁画に込められた思いも大切にしたい」参加者から思い思いの意見が飛び交った。
渡辺氏は、まずは夢を描くことが大事だと言う。
「描いた夢は事実に変えていかなければならない。そうすると、夢は急にしぼんでしまいます。けれど、現状をもっと良くしようと行動する限り、夢は続いていきますよね。まずは、新川としてどういう価値があるのかを見出していきましょう」と呼びかけた。
愛される新川に もう一度目を向けて
代表の中山さん、副代表の伊藤秀子さんに今後の展望を聞いてみた。
「歩いて楽しめる、人々のくつろぎの場所として、地域のみなさんや子どもたちに愛される新川を目指したい。それには、私たちだけの力では到底足りません。若い人たちや地元の企業も含め、ぜひ皆さんの知恵をお借りしたい。もう一度、新川に目を向けてみませんか」
今後のイベントとして、新川歴史探訪、佐鳴湖新川にて「市民部活 浜松魚部」さんとのコラボ企画『ガサガサ』、巨大塗り絵、「新川を竹灯籠で照らそう」他。2024年7月7日にもイベントを予定。最新情報はブログやFacebookからチェックできる。
水鳥たちのために始めたたった一人の川掃除は、川そのものや地域の魅力を再発見するクリエイティブな活動へと変わっていく。イベントから少しずつ、新川に触れてみてはいかがだろうか。
Profile
新川かわまちづくり「カモ・カモンの会」
左から、
代表・中山和子さん、副代表・伊藤秀子さん、役員・水野寿美子さん。
メンバーも募集中。
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