【SDTraining】は、私がTwitterの物書き仲間と一緒にやっている描写修行作品です。2週に一度、提示されたお題画像をもとに情景描写文を作成し、締め切りに準じて提出、公開…
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2021年2月の記事一覧
2102D志乃【ミッション】
隠れる場所がないな、と言うと彼女はくすくす笑った。
公園デートをしに来たのであって、かくれんぼをしに来たわけではないのは承知している。
大きなタイルの階段に、詰草の花が白く霞んだ緑の絨毯。人の背丈の三倍ほどに水を噴き上げる立派な噴水が、公園の中心で子を引きつれるようにして日差しに輝いている。赤いレンガ敷きの広場とベンチ。サルビアだろうか、鮮烈な赤の花が噴水の奥で列をなし、何かを描いていた。
2102A志乃【ふくら雀にさよならを】
向こうの岸に真っ白な客船、もっと奥には積み木で階段を組んだようなビル群。寒い季節のそっけなくて淡い空の下、遮るものもない海風が遠慮なく吹き付けてくる。塩気を感じないのは、鼻が冷えているからか。
人一人上に立っても一ミリも揺れたりしないだろう、頑丈そうな柵の向こう。深々と紺がさざめいていた。あぶくを含むこともない、囁くような波の上をスケートのように滑ってやってくるのだから、海風だって早くもなるだ
2021Wi志乃【泡沫アストロノーツ】
宇宙を漂っていた。
蒼い闇の中、ちらちらと揺れる白い塵や薄いカーテンのようなわずかな光がたわんで流れる。見える範囲には何もなくて、当然生き物の気配もない。
ずいぶん遠くまで流された。
気密服から空気が漏れて、ゴポン、とあぶくが昇っていく。……そうだ、宇宙に音はなかった。ここは真空ではなく、何かに満たされている。
動くのかどうか、ためらいながら腕に力を入れれば、押し戻すように抵抗する大きな