#13今年入って初めて梨を食べたはなし
和梨が果物の中でいちばん好き。
福山にいたころ、毎年秋になると家族で世羅へ梨狩りにいっていた。
空一面を天井のように覆いつくす梨の枝のしたにはピクニックシートが敷かれ、背丈が足りない私は父親にだっこされて梨の実に手を伸ばす。
ざらざらして光沢のないこがね色をした梨の実。幼い手には余るその大きな実をねじって持ち上げると、ポキッと収穫できる。
受付で人数分渡される白いプラスチックナイフは、家で包丁を持たせてもらえない私でも扱えた。皮むきの包丁さばきは梨の木の下で学んだといえよう。
シャクリシャクリと6等分に割って、ひとかけらずつ皮をむく。むけばむくほど、果汁が肘まで流れて困った。
初秋の涼やかな空気に甘みをつけたような香りと、ほのかな酸味・ほのかな甘さ。しゃくしゃくとした歯ごたえ。
おなか一杯になるまで食べるころには、あまりのみずみずしさにお腹がタプタプで苦しい。苦しいが、しあわせな満足感。
今日も家族で囲んだ夕飯の席、デザートに梨。品種は豊水。
小ぶりだけれど、とっても美味しい。みずみずしくて、ほどよい酸っぱさと甘さに口がきゅっとなって身震いするほど幸せ。
雨上がり、うんざりするような暑さも退いて、秋の予感。