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わんころちん #サクラ

わんころちん、母は犬のことをそう言う
にゃんころちん、猫のことをたまにそう言う
わんころちん、5つ目は柴犬のサクラ。

サクラは、保健所の保護犬案内で見かけてた
トシキを探してたとき、トシキじゃない…いないと
最初はそれだけでページを閉じたけど

それから3ヶ月程経ち、なんだか気になって
ページを開くと…あ、柴犬が居る…サクラだ
サクラは小さく隅っこにおすわりしてる画像で
薄汚れた柴犬に見えた

このコを迎えられないかな、そう思い問い合わせた
飼い主が現れなければ、あと一週間で処分…
もし、もし飼い主が現れなければ引き取りたい
保護期間終了後飼い主が現れなければ
このコを飼いたいのですが…

それでしたら、保護期間終了後連絡します

連絡は翌朝来た、え?もう?…まぁ良いか
そのまた翌日くらいだっただろうか
日曜日に、サクラを迎えに行った
保護犬の収容施設は、清掃局の奥にあった
ブロック塀の壁のひんやりした犬舎
檻が二部屋、サクラにはかなり大きく見えた

サクラはこちらに気付いて、寄ってくる
ボロボロに汚れた体を揺らし、尻尾を振る

ここから出して!!

そう聞こえた気がした
職員の方が、一生懸命に話してくる
こんなですけど、性格は良いコです
ドッグフードちゃんと食べますし、懐っこいです!
性格は本当に良いコなんです!

大丈夫、もう連れて帰る気満々だから
そういう気持ちで笑顔を作った
サクラはすんなり抱っこできた
12キロ超えのトシキに慣れていたので
ふわっと軽く感じた、サクラは5キロあるかないか
子犬みたいに震えていたけど、撫でられ目を閉じた

家についてすぐ、シャンプーをした
良くないのかもしれないけど、しなければ
家の中には入れられない、ごめんね
なるべく手際よくと心掛けシャンプーした
サクラは、大人しかった…というか
腰が抜けたように、座り込んでいた

びっくりさせてごめんね、でもさっぱりするから

シャンプーして気付いたのは、脇腹に脱毛症?
楕円形にハゲ、尻尾の先も壊死したような傷跡
欠けた耳、サクラは本当にボロボロだった

サクラには、服を用意した脱毛を隠そうと
着せて散歩した、なかなか似合ってかわいい
サクラは、トシキと違い豆柴サイズなのかも…
そう信じたのは一瞬
あっという間に、サクラはまんまるになった

サクラにもしつけはしなかった
待てもおいでもできたから、本当に良いコだ
でも、気が強いというか…女(犬の)嫌いなのだ
縄張り意識の高い柴犬だったのだろう
オシッコを逆立ちしてしていたので…

男のコ(犬の)には、クンクン言ったり
女のコ(犬の)には、吠える…という。
サクラが来たばかりの頃、プシケがいた
プシケはもうおばあちゃんで、先住犬なのに
サクラはプシケに好戦的な態度だった。

ある日、プシケが静かにサクラに近付くと
サクラはプシケに敵意剥き出しになった
すぐに怒鳴ったので、すぐに収まったけど
プシケが怪我をしてしまったので
しばらくサクラを無視してみることにした

それがきいたのかは解らないけど…少しだけ
サクラは、大人しくなった
それからは、プシケとケンカすることもなく
ただ、プシケが虹の橋へ行ってからだったか…

父に咬み付いた、父が悪いのだけど
サクラのお皿に手を入れたから
私が入れても怒らなかったから
それを見ていた父が同じことをした
父は、ダメのよう…いや、母も唸られた

サクラも、プシケと同じだ…1人しか信頼してない
信頼できるのは飼い主だけのプシケと同じだ
しかも、好戦的…サクラは、柴犬らしい柴犬かも
なかなかのツンデレっぷりも持っていて

父が晩酌のときは、お酌してくれるかと…
そんな錯覚をしそうなくらいそばにいる
父が、隠れてくれるおツマミが目当てだろう
何度ヤメてくれと言っても、聞かなかった

本当に、サクラはどんどんまるくなって…
気付くと、体重が9キロ超えていた
ここへ来たときは、5キロ程だったのに…

服も着れなくなり、手作りした
まんまるサクラ、なかなか気位の高い柴犬?
お友達はあんまりできませんでした
ホントにツンなんで、人…おやつをくれる人
かわいいと褒めてくれる人にだけ、良いコになる
でも、私の言うことは聞いてくれた

サクラは、5歳前後だったか…1度入院した
避妊手術をすぐにしなかったのが悪かったかもしれない
子宮蓄膿症になってしまった
入院中、面会に行くと…弱々しく、寄り掛かってくる

連れて帰って!!

その後、2日入院し退院だっただろうか…
確か、何日か入院してたと思う
退院後、かなりしおらしかったり
サクラにとって入院生活は、捨てられたのかと
悲しい気持ちの日々だったのだろう
帰ると、嬉しさで粗相をした気が…

1つ、サクラのことで気になっていたことを
獣医師に話していた、それはウンチの形
平たいというか…丸くなく少しつぶされたよう
すると、サクラは1度骨折しているという
多分、保護される前に交通事故か何かで…
折れたところが不自然にくっついて固まったのだ

ウンチの形はそのせいではないか?と…
排泄できているので、問題はないと言われ
ひとまず安心した
ただ、将来何か問題が起こる可能性はあるとも
心に留めて、サクラを見ていた。

サクラもうちに来て15年経とうとしていた
ある日、突然…頭を傾け、フラフラし始めた
すぐに病院へ、頭が傾げたまま戻らないサクラ
年齢的な脳の障害…そんなことを言われた
治療方法もあるが、高齢のサクラには負担が重い
サクラが症状に慣れて、歩けるならこのままで
経過観察しながらのほうがいいのでは?と。

若いときのサクラが入院したときのことを考えてた
かなりショックを受けて落ち込んでいたサクラ
精神的なダメージは高齢のサクラに与えたくない
なるべく一緒にいるほうが良いと思った

サクラはすぐにフラフラしなくなった
傾げた頭はそのままだったけど…
それからしばらくは良かったけど
冬を越した頃だったか、サクラは歩けなくなった
動かない後ろ足を引きずり、部屋を徘徊し
あちこちぶつかっては鳴き声を上げる

この頃はもう認知症でもあったのだと思う
昼夜問わず鳴いたり、粗相もするので
オムツをしたり、周りを当たっても痛くないよう
クッションなどで囲ったり…
ご飯も柔らかいものしか食べなくなった

たまに…
口を大きく開けて痙攣するようになっていた
動物病院では、いつ何があってもおかしくない…
そう言われた

徐々に食べる量が減り、一人で食事できなくなった
ずっと寝たきり…たまに大きな声で泣き叫ぶ
その度、大丈夫大丈夫と抱いて撫でる
父は…ヤカマシイと疎ましく扱ったので
母も私も、父を怒鳴る…サクラのせいじゃない

サクラは不安なんだ、抱いて撫でると落ち着く
見えなくなり、聞こえにくくなり鼻も効かない
体も思う通りに動かせない…
サクラには、何故か解らなかっただろう
怖くて怖くて、鳴いて叫んだ

どうして、見えないの?
どうして、聞こえないの?
どうして、臭わないの?
どうして、歩けないの?
怖い、怖い…嫌だ嫌だ…どこにいるの?

そう思っていたのかな…
時間が許す限りそばに…それしかできない
また、母に頼ったのだ
私の居ない時間は母がサクラを見てくれた
そばに誰かいるときは、穏やかだった

天気のいい日、抱いて外に出ると
気持ち良さそうにしていた
もう少し、時間を作ってサクラといれば…
もう少し、もう少し…

サクラは私の居ない時間に逝ってしまった
もう少し、ああしていたら…
そんなことばかり考えてしまう

ごめん、サクラ…がんばったね…ありがとう






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