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要約 『ヤングケアラー介護を担う子ども・若者の現実』 著者 澁谷 智子

●ベストフレーズ


家族のあり方も社会経済の状況も昔とは変化してきている今、家族のことは家族がするのが当然というのではなく、家族であることの責任と重みを家族以外の人ともっと気軽に分かち合えるようにしていけたらと願う。 202ページより


●はじめに

ヤングケアラー問題は少子高齢化の宿痾か?

本日の一冊は、社会学の澁谷智子氏による『ヤングケアラー 介護を担う子ども・若者の現実』です。

少子高齢化が進み世帯人数も減っている現代において、家族の介護や世話を18歳未満の子どもが担うことが増えています。家族の介護や世話をする18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と言います。

ヤングケアラーは家族の介護が優先となり、時に学校に行けない、学校でも勉強に集中できない、という問題を抱えています。

「家族のことは家族がする」は当たり前なのでしょうか?ヤングケアラー達が抱える悩みや問題点を知り、今後の家族のあり方について考えられる1冊です。

●本文要約

1.ヤングケアラーとは?

家族の介護や世話をする18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と言います。
少子高齢化が進み世帯人数も減っている現代において、家族の介護や世話を18歳未満の子どもが担うことが増えています。一方で、子ども達が家族のケアのため、学業や自分の日常生活に支障をきたしている場合、その状況は健全と言えるのでしょうか?どう向き合い支援していけばよいのでしょうか。

まずは、介護を担う18歳未満の子ども達(ヤングケアラー)が、ケアについて安心して話せる相手と場所をつくることが大切です。その上で、家族全体を見て子どもたちが家庭で担うケアを減らしていくこと、さらにヤングケアラーについて社会の意識を高めていくことが、ヤングケアラー支援において重要であると考えられます。

著者は、世界で最も早くヤングケアラーに目を向けたイギリスで滞在し、ヤングケアラーやその支援に関わる人々に話を聞いて調査を進めたうえで、ヤングケアラー支援に関して上記に挙げた3つの方向性が必要だと考えています。ヤングケアラー達は同世代で自分と同じ経験をしている人を見つけるのは難しく、話をしても分かってもらえないことも多いです。そのためまずは、ヤングケアラー達が安心して自分の想いを話せる場所をつくることが大切だといいます。

もちろんそれだけでは根本解決にはつながりません。その家族全体を見て子どもたちが担うケアを減らしていけるようにすることや、研修等でヤングケアラーに対する社会の意識を高めていくことが重要です。

2.そもそもヤングケアラーはなぜ誕生したのか?

ヤングケアラーは「家族の介護や世話を行う18歳未満の子ども」を指します。超高齢社会を迎え、家族のあり方も多様化している中でヤングケアラーは増殖傾向にあります。一方で、介護の負担が大きいと学校生活や進路にも影響が出てしまう、という問題を抱えています。

医療ソーシャルワーカーや小中学校教員へのアンケートにより、それぞれの立場でヤングケアラーがどのように認識されているのか調査を行いました。これにより、対象者の25%~半数程度がヤングケアラーの存在を認識していることが分かりました。逆に言えば、「隠れヤングケアラー」が半分~75%いることになり、その存在や問題はほとんど明るみなっていないと言えるでしょう。

小中学校教員への調査後、調査の対象であった南魚沼市と藤沢市では、学習支援事業や、行政や教育関係者を対象とした研修会、学校内や地域で気軽に話せる居場所づくりなど、ヤングケアラーに対して様々な支援体制がとられています。

ヤングケアラー達は、自分がしていることを「介護」ではなく当たり前の「生活」のことと考えている場合が多いと言います。また、学校で話しても同世代に分かってもらえないため、話をしようと思わない、話しをしても共感・共有されにくいと感じています。また、彼らのほとんどは特別扱いされたいわけではなく、理解されたいとを望んでいます。
したがって、ヤングケアラーへの具体的な支援としては、「ケアについて安心して話せる相手と場所をつくる」「家族全体を見て子どもたちが家庭で担うケアを減らしていく」「ヤングケアラーについての社会の意識を高めていく」ことが必要であると考えられています。

ヤングケアラーへの支援は、それぞれが要望したことをもとに考えないと、良かれと思ったことがその人にとっては支援に感じられないリスクもあります。そのためには、ひとりひとりの話を丁寧に聞き、ヤングケアラーの実態を精査し、多様性に目を向けた支援体制が重要です。

3.ヤングケアラーが抱える問題

「主介護者」を支える第二・第三のケアラーであることも多い子どもは、表には「介護者」として見えず、自らもそうした認識を持たないまま、睡眠不足や疲労を溜めていき、それが長期化すると、学校生活や進路にも影響を受けてしまうことがあるのである。 14ページより

ヤングケアラーは、「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」と定義されています。日本人の平均寿命は80歳を超えていますが、

続きは以下リンクからお読みいただけます。(残り5300文字)

4.日本におけるヤングケアラーの実態
5.子どもががんばれている時に支援につなげる
6.ヤングケアラーの本音
7.ヤングケアラーと不登校の関連性
8.まずは安心して話せる相手と場所をつくる
9.ヤングケアラーが抱えるケアを減らす
10.社会がヤングケアラーを知る
11.「いろいろあるけど、これはこれで今の自分をつくっている」

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