要約 『男子の性教育: 柔らかな関係づくりのために』 著者・村瀬幸浩
男性たちが歴史的につくられた男性像に縛られず新たに再生する道とは、思い込みを捨て一人の人間として、自分に、自分の性に、まず素直に、優しく立ち向かい、受け入れていく力をもつこと。194ページより
●はじめに
本書は、男性が自分の性についてどのように考え、どのような性教育を行っていけばいいのかを解説した本です。
女子は、十分とはいえなくても、家庭や学校で「学ぶ機会」があります。一方で、男子は性について正しい知識を学ぶ機会がほとんどありません。そのため、ネットや巷で垂れ流される情報に振り回されています。また、「命」への責任感や、性の知識で女子と差が生じ、男女のすれ違いの原因にもなっています。この情報と教育機会の偏りは男子に不安と生きづらさをもたらす一因になっています。
本書は、男子が、自分の体に関する正しい知識を持つことで自己肯定感を育み、あらゆる性と「柔らかな関係」を作れるようにしてくれる1冊です。
●本文要約
1.性教育の機会が男子の「生きづらさ」を減らす
私たち人間は性行為を経て繁殖します。性行為は人類の繁栄に必須の営みです。同時に、性行為は性交渉から出産まで、喜びや苦痛など、人間に特別な感情や、非日常的な感覚をもたらします。また、望まぬ出産や予期せぬ感染症などのリスクもあります。
望む結果を得て、豊かな性生活を送るためには性に関する「学習」は不可欠です。しかし、男性は女性と違い、性教育の機会が極端に乏しく、偏った情報と意識に振り回されてしまいます。この偏った性意識や知識の欠如は、男性が「柔らかな関係づくり」ができずに悩む原因となったり、男女の没交渉が増える原因になっており、男子の「生きづらさ」問題につながっています。男子が性に関する学習を経て、性的自己肯定感をもつことで、「柔らかな関係づくり」ができれば、男子の「生きづらさ」はぐっと減り、大人に成長してからも男性として豊かに生きることに繋がります。
2.自分の性を肯定する(性的自己肯定感)を持つために必要な3つのこと
まず、男子が自身の性に対して性的自己肯定感を持つ必要があります。そのためには3つの改善が必要です。
1つ目は、射精に対するネガティブなイメージを改め、肯定的に理解することです。そうすることで、性欲を悪いもの、性行動を我慢すべきものという認識から、人格の一部として受容するきっかけになります。
2つ目は、セックスに対して、「支配する、攻略する」「一方的な行為」のイメージを持つのではなく、「融和する」「相互的な接触行為」というイメージを持つことです。性行為もボディーコンタクトの一種です。握手という簡単な接触でも分かるように、人間はお互いの体の一部が接触するだけでも、心に「安心」や「恐怖」などの感情が生まれます。手を握る、マッサージする、ハグする、そういった友好的で日常的な行為の延長にある営みと思えるように変えることです。
3つ目は、リスペクトを育てる、具体的には女性の体、命、性器について学ぶことです。日本語の「尊重」「リスペクト」は、偉業や優れた業績を称えたり、目上の人への敬意を表すときに使われます。ですが、本来の意味は「他者の感情、願望を肯定する、そして権利を大切にし、重んじる」という意味です。平たく言えば「できること、できないことがある、それを認め合う」という意味です。セックスがうまくいった、いかないという「満足度」は、実際にはテクニックや経験による差ではなく、相手との信頼感でほとんどが決まることが調査研究で分かっています。体や心は一人一人違います。お互いに「できること」「できないこと」をオープンにして受け入れあう、「尊重」「リスペクト」が結果的に満足度を上げ、「快楽の性」を肯定することにつながります。
3.男性が健全な性的自己肯定感を作れない理由
続きは以下リンクからお読みいただけます。